8か月前の1月5日、近所のレディースクリニックで「おめでとうございます」と告げられたときには妊娠7週目だった。年末から年始にかけてとにかく眠くて、寝正月を通り越して「眠り病では?」と疑うほどよく寝た。4日の夜になって「もしや……」と妊娠検査薬を試してみたところ、ビンゴ。翌日の診察で確定となった。
会社を辞めて脚本業に専念するようになり、仕事も順調に舞い込んでいる矢先のこと。最初に頭を過ぎったのは、「まさか、これからってときに……」だった。でも、次の瞬間、「いい年して、まさかはないだろ」。いつかは欲しいけど、今じゃなくていいやと思っているうちに、36才。授かった今が産みどきに違いない。めったに体験できないマタニティライフ、どうせならとことん楽しもう、と発想を転換。
妊娠〜出産〜育児はわたしには未知の世界で、体験してみなきゃわからないことだらけ。たとえば、妊娠検査薬。以前ドラマで検査薬の小窓を見つめて色が変わる瞬間をはらはらして見守るシーンがあったけど、7週目ともなれば、待つ間もなく一瞬でくっきり線が出る。「早っ」と驚きつつ、「リアリティだぁ」と妙に感心。この調子で面白がっていれば、マタニティブルー知らずで出産まで楽しく過ごせるはず。そうだ、エピソードを書きとめておこう、と用意したファイルのタイトルが「マタニティオレンジ」。そのときは、「マタニティブルー」は出産前のユーウツ(結婚前のマリッジブルーの応用)だとばかり思っていて、産後にホルモンバランスが崩れて襲われて気が滅入ることだとは知らなかった。
「とつきとおか(十月十日)」とよく言うけれど、実際におなかの中にいるのは約9か月(ヒュー・グラント主演の"Nine Months"って映画もあった)。わたしの場合、妊娠を知ってから出産までは7か月半。はじめてのマタニティライフはめくるめく刺激と感激の連続で、色に例えると、やっぱりオレンジだった。
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