人にすすめられた本にはハズレがない。「いいよいいよ」とあちこちですすめられた『クライマーズ・ハイ』(横山秀夫)をついに読む。喫茶店でぼたぼた落涙してしまった『半落ち』に涙度は及ばないものの、やはり何度も涙を誘われた。職場でも家庭でも人間関係がしっくりいかない不器用な新聞記者が悩み、惑い、毎日降りかかる出来事に答えを出していく。そのもどかしさや苛立ちを定着させる言葉が実に的確。地の文は歯切れよく無駄がなく、それでいて状況が目に浮かぶ。新聞記者として勤めていた実体験、20年前の御巣鷹山の日航機事故という史実を踏まえた小説なので、ノンフィクションを読んでいるような気持ちにもとらわれた。「死」に慣らされる怖さ。過去の事件を勲章にし、その残光にすがる悲しさ。読者よりも社内を向いてしまう組織……。連日の報道の陰に葛藤する記者や新聞社員の姿があると想像すると、当たり前のように届けられ、紙面を埋めている新聞に、情報以上の重みを感じてしまう。「新聞紙ではなく新聞を作りたい」という言葉が心に残った。
2004年08月25日(水) アテネオリンピックと今井雅子
2003年08月25日(月) 冷凍マイナス18号
2002年08月25日(日) 1日1万