新橋演舞場にて、『もとの黙阿弥』を観る。時は明治。父親に結婚を決められた令嬢と姉に結婚を決められた男爵家の跡取りが、縁談相手と鹿鳴館でダンスをする羽目に。指南を求めて駆け込んだ先は、よりによって同じ場所、興業停止を食らっているつぶれかけの芝居小屋・大和座。「自分の目で結婚相手を見極めたい」令嬢と跡取りが、それぞれ従者と入れ替わったことから糸がねじれて大混乱。果たしてこの縁談、うまくまとまるのか……というあらすじからして笑いとドキドキを期待できるお話。
6時開演、間に30分、15分の休憩を挟み、終了は10時前。幕が上がっているのがたっぷり3時間、だけど退屈するヒマなし。ホンはよく練られているし、役者さんは達者だし、音楽はジャカジャカ(楽隊役が生演奏)、踊りはあるし、花道から自転車や馬車が登場するし、屋台車は行き交うし、舞台セットは回るし、これでもかと楽しませてくれる。劇中で上演される劇(オペレッタ風、芝居小屋風、新劇風)もオマケではなくしっかり作り込まれていて完成度が高く、一粒で何度でもおいしい。舞台装置の豪華さにも目を見張るが、着物あり洋装ありの衣装を観ているのがとにかく楽しい。風呂敷や新聞紙で作った舞踏会用ドレスは秀逸。一緒に見に行ったアサミちゃんと2幕が終わった時点で「ハッピーエンドに持っていくんだろうね」と予想したのだが、甘すぎないラストに、かえって余韻が残った。
| 河辺隆次……筒井 道隆 長崎屋お琴……田畑 智子 久松菊雄……柳家 花緑 船山お繁……横山 めぐみ 河辺賀津子……池畑 慎之介 長崎屋新五郎……辻 萬長 坂東飛太郎……村田 雄浩 坂東飛鶴……高畑 淳子 作……井上 ひさし 演出……木村 光一 製作……松竹 |
2004年08月23日(月) 江戸川乱歩と大衆の20世紀展