■遅めの昼食をとった喫茶店で、怪しい客になってしまった。昨日の終電で読みはじめた『半落ち』(横山秀夫)が止まらず、パスタのフォーク片手に一気に読み終えたのだけど、いちばん涙を誘うラストだったものだから、パスタを食べながら泣く格好になってしまった。食事を終えると、すぐにプレゼンへ。得意先へ向かう電車の中で、会社の人たちに「とにかく、すごくいいですから! よくできているんですよ。素晴らしいですよ」と思いつく限りのほめ言葉を並べ立てて、すすめた。横山秀夫氏は「平成の松本清張」の呼び声が高いそうだが、人物も背景もしっかりと書き込まれていて読み応えがあり、元新聞記者というだけあって文章も非常に読みやすい。比喩も巧みで、メモを取りたくなるほど。待ち焦がれている連絡がなかなか来ないじれったさを「地球の自転とはこれほど遅いものだったか」と表現するところなど、実にうまい。登場人物たちのそれぞれの年齢と抱えているもののリアリティも見事で説得力があり、主人公の「50歳」という年齢が背負っているものに理解と共感を寄せることができた。どうやったらこんなに上手に人物を描き、物語を転がせるのだろう。「半落ちもいいけど、クライマーズ・ハイはもっとすごい」と両方読んだ人の弁。
2002年01月14日(月) 災い転じて