2004年01月15日(木)  谷川俊太郎さんと賢作さんの「朝のリレー」

毎年、会社の新年式典には心に残るエピソードがある。去年はメイク・ア・ウィッシュ日本事務局・大野さんの力強いスピーチに心を打たれたが、今年は素晴らしいサプライズがあった。詩人の谷川俊太郎さんと息子で音楽家の賢作さんがゲストで登場し、俊太郎さんの詩「朝のリレー」を賢作さんの伴奏で朗読するという贅沢な共演に立ち会えたのだ。

この「朝のリレー」は去年から展開しているネスレの広告で使われていて、いくつもの広告賞を受賞し、新聞のコラムなどで取り上げられ、世の中的にも好感を集めていると聞く。その評判はわたしの会社のちょっとうれしいニュースでもある。今までコーヒーの広告に使われていなかったのが不思議なほど、朝の豊かなイメージを膨らませてくれるこの詩に目をつけのは、去春研修で配属されたばかりの新卒デザイナーとコピーライターのコンビ。コーヒーのキャンペーンと聞いて、教科書に載っていた「朝のリレー」を思い出し、「ぴったりだと思うんですけど、どういう風に使っていいのかわかりません」と詩だけをアイデア出し会議のテーブルに置いた。先輩クリエイターたちがあらためて読んでみると、言葉のチカラがとても強いので、極力シンプルな空のビジュアルに詩をのせようという話になった。……という経緯は、わたしが直接関わった仕事ではないので、また聞きだったり、メディアからの情報だったりするのだけど、ついこの間まで学生だった二人のフレッシュなアイデアが採用されて、「詩を全部聞かせるために60秒CMをやりましょう」「シネアド用に英語バージョンを作りましょう」「寝顔フォトコンテストもやりましょう」と話がどんどん広がっていったサクセスストーリーは、うれしく、誇らしい。

CMのナレーションは歌手のayakoさんの瑞々しい声が印象的だけど、作者の俊太郎さんの生の朗読は何ともいえない凛とした空気があって、その声を直に受け止められる幸せを味わった。広告ではじめて「朝のリレー」に出会った人も多いようで、「おかげさまで町で声をかけられることが増えました」と俊太郎さん。飄々とした話しぶりはユーモアたっぷりで、何気ないやりとりにも言葉のセンスが光っていた。「苦しいことも、書くことで気持ちが解放されるんです」。文字を放つことで心も放たれるという感覚に共感。

2003年01月15日(水)  ひつじの国 ひつじの年
2002年01月15日(火)  ノベライズ

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