un capodoglio d'avorio
2004年02月29日(日) |
one tone@cafe detaj |
ちなつ嬢とゆーやクンのユニット、one toneが関西ツアーに来た。京都、神戸とまわって今夜、大阪・北浜のカフェデタイユにてライヴ。vo.のちなつ嬢は、中学・高校・大学を通して全部、どかと同じガッコ出身という極めてまれな後輩筋にあたるヒト(ちなみに職場まで同じというオチもつく)。だから今夜も、彼女の同級の友人サンがたくさん来てたみたいで、つまりはどかにとっても後輩にあたる人たちなんだけど、学年が4つ離れてるから知った顔は見えない。今回、どかはかークンをさそって2人で行った。
のっけから話は変わるが、どかが美術史をやろうと決めたのは高校3年のとき。センターで喜劇的惨敗を喫し、花の浪人時代の到来に向けて着々と図書室で昼寝してたとき。目が覚めて椅子に座ったまま後ろにもたれて背伸びをしたとき、手にかかった本をそのまま抜いて机に置いてみたら、それはゴッホの画集だった。何の気無しに、ページをめくったら一枚の作品がいきなりどかの目の前でうねりだした。後から作品名を調べてみたら<アルルの跳ね橋>という幾つかヴァリエーションのある作品のひとつだった。映画やアニメと比べて、動かないイメージなんて見てもつまんない。と思っていた18歳にその体験は衝撃的だった。
ヒトはついうっかりと、無限とか永遠とか完全を求めてしまう。例えば、寂しいからつき合うのと、好きだからつき合うのとは違うわけだけれど、一見その2つの顛末は似ているからタチが悪い。強い気持ちで無限とか永遠を追い求めていたつもりが、いつの間にか自分の弱さにまかれていることも多い。自分が走っているつもりだったのに、いつのまにか自分の足は止まっていて、風景だけがどんどん後ろに流れていくこと。無限とか永遠は、それこそ幻のなかではずっと、そのままでいてくれるのだけれど。
例えば「モナリザには永遠の美がある」と言うときの、事実と希望の混同。もしくは「無限性」のたたき売り。自省をこめつつも翻って見てみると、どかはゴッホに、無限を見て引き込まれたのではなく、一瞬を見て引き込まれたのだ。動かないオーロラはつまらない。ブレークアップがすさまじいのは、ただ、その、猛スピードの急旋回によるのだ。そしてあとには、寂しさが残る。
どかは前回のライヴの感想文(one tone@南青山MANDALA)で「時間性」ということを書いて、でも読み返してみて、あまりに言葉足らずだなーと痛感したから、振り返ってみた。つまり、ポチポチ歩いてきた「私」がふと、途方に暮れて立ち止まったときに、スッとずれる周囲の世界との位相。「私」が立ち止まろうと走り出そうと、それとはまったく関係のない速度で、地球が回っているということ。「コリオリの力」が怖くて、次の一歩が出ないと言うこと。one toneの音楽は、こんな風景のスケッチなんだと思う。
寂しいから、誰かとつき合いたいということ、 そんなの何だか違う気がする、でも…
この「でも」の余韻に淡彩をほどこしたのが、one toneの曲なんだと、どかはあえて断言してしまう。だからただの「寂しい寂しい」としか言わないオコチャマには響かない音だし、だからただの「オレ様オレ様」としか言わないオッツアンには響かない音だ。どんどん生まれては消えていく余韻にしか映らない風景だから、受け皿は必然的に、小さい。パッと聞く耳に優しい柔らかい響きには、one toneの本質は無い。
だから、どかは、one toneが好きなんだと思う。薄っぺらい安心を拒絶するという前提の上に立つ、はかなげなモビールに似た佇まいが好きなんだと、思うのな。
1曲目、ちょっと、いろんな要素がぶれている気がした。緊張したのかな(でも、1曲目はいつも、one toneはそんな感じかも)。でも2曲目の終わりくらいから、だんだん、ハコに馴染んでくる。超満員のフロア、人混みの隙間の二酸化炭素を、いちいち淡彩の冷たい酸素に置き換えていく感じ。そして、名曲「♪君のところへ」。ひこうき雲に仮託していくというのは、使い古された常套手段かも知れないけれど、両極の間で揺れ動く不安定さへフォーカスするという意識が詞・音ともに通底しているから浅薄さは全く感じられない。サビで引っ張ろうとしてないことが、いいのかも知れない。盛り上がりを作れば分かりやすいポップスになるのだけれど、あえてそこにはいかない。
正直に言うと、まだ曲によってそのフォーカスの正確さにばらつきがあって、時々、その持ち前の淡彩の風景のトーンが重くなったりハレーションがおきたりしてしまうことがある。けれども「あえてそこにはいかない」という誠実さにかけて、どかは one toneに1票を入れたい。なんてことは、恥ずかしくてとても言えなかったな。ライヴのあと、ゆーやクンと少しだけおしゃべり。いやー、久しぶりに会えて嬉しかったです。何か印象に残るんだよね、多分、音抜きでも、このヒトは。ウンウン。上京するときは連絡するので、また飯でも食いましょう。
で、演奏後も大忙しのちなつサンだったけれど、別れ際「また三鷹に引っ越したんです」って、それは羨ましいくていいなーだけど、ふ、復帰の件はっ… (^_^;)
|