un capodoglio d'avorio
2004年01月17日(土) |
Syrup16g @ BIG CAT |
昼過ぎからの玉川の科目試験を大阪城北詰の会場で受けて、 で、明日もまだ試験があるというのに強行軍でライヴを予定にねじこむ (これで明日の「博物館学3」の単位落としたら打首獄門だなワタシ)。 どかはシロップのライヴは2003年03月28日以来10ヶ月ぶり。 何せ去年一年間で3枚のフルアルバムをリリースした、 空寒くなるほどの加速度を持つバンド、 SHIBUYA-AXからどれくらい変わったか楽しみ。
セットリストは以下の通り、 本編がちょっと短いかなと思ってたら、 アンコールを3回も・・・。
01.Reborn 02.夢 03.パープルムカデ 04.Everything is wonderful 05.タクシードライバー・ブラインドネス 06.生きたいよ 07.Sonic Disorder 08.神のカルマ 09.回送 10.ex.人間 11.coup d'Etat〜空をなくす 12.My Song
en1-1.もったいない en1-2.イマジン en1-3.シーツ
en2-1.生活 en2-2.明日を落としても en2-3.汚れたいだけ
en3-1.(中畑ドラムソロ〜)落堕 en3-2.真空 en3-3.She was beautiful
シロップは改めてライヴバンドだなーと思う、 スタジオよりもステージでこそその真価を発揮できるという意味で。 vo.の五十嵐サンの平熱よりも高い体温が伝わってこそ、 あのヒリヒリするほど冷たい詞の浸透度が増していく。 その五十嵐サン、AXの時よりもまたスケールアップしてた。 以前なら一曲歌ってそれで、ホールをアイスブルーに染め上げる。 という感じだったのが、今夜はワンフレーズでそれを成し遂げる。 みたいな、感じがしたのね。
ただ・・・、それだけスケールアップしていたら、 良い意味で余裕が出てきてもいいのになと思っていたら、 その「利息」を全て使い切ってなおも焦燥を「捨てられない」から、 アップアップ度(良い意味でも悪い意味でも)が、AXの時よりも増している。 だから、さらにグーッと胸の奥に差し込まれる感じ。 きっと、それがどうしようもなく、シロップがシロップな所以なのだろう。 「楽」は避けなくてはならないというオブセッション。 「生」は疑わなくてはならないというオブセッション。 そのオブセッションは、こんな時代だからこそ、 すさまじいまでのリアリティを生む。 凡百の「なんちゃって」パンクバンドやギターポップをまとめてポイできる、 それくらいの摩擦熱だ、~(>_<。)\ イタタ。
そう、摩擦熱、予定調和からは決して起きないこの摩擦を、 シロップは全て、バンド内で「まかなっている」。 バンドとオーディエンスの間でそれを求めるということが、 五十嵐サンにはできないらしい。 その臆病さ、その、いじらしさ。 だから、オーディエンスは、シロップのライヴに立ち会うと、 目の前の小さなシャーレの中で起きている化学反応を、 しっかり心に収めていけるというメリットの代償として、 疎外感を感じずにはいられない、五十嵐サンが感じる疎外感を、 自らのものと、引き受けることに結果としてなるという構造。
では、そのシャーレの中の化学反応とはどういうものなのか。 「感情ではなく論理としての絶望」を余すところ無く拾っていくその詞と、 バンドの演奏との間に発生する摩擦熱がトリガーである。 五十嵐サンのボーカル、キタダサンのベース、そして中畑サンのドラムの演奏、 「詞」の下方への底知れない吸引力にあらがう、 「パフォーマンス」の地面に立ちつくす力、地面を掴む足裏の感触。 これが、シロップにとっての唯一の命綱である。
ところが今夜、五十嵐サンはかなり追いつめられていた。 アンコール一曲目の「♪もったいない」では、感極まって歌えなくなり、 演奏を止めてやり直すという「醜態(あえて言うけど)」。 ボーカルのその窮地を救ったのは残りの2人だった。 中畑サンのドラム、えげつないほどのインパクト。 上手い、というのではなく、強烈。 なんてエモーショナルなドラムを叩くのだろう。 ハイロウズのオーチャンのような重たくタイトなドラムではなく、 もっと、こう、扇情的な感じ。 そしてキタダサンは、中畑サンとは対照的に、 冷酷無比な、けれども抜群のカッティング。 どかが知る限り、キタダサンは日本で最も上手いベーシストだ。 このリズム隊の背水の陣的な名演が、溺れかけたボーカルを救い、 シロップの輪郭をかろうじて保つことに成功する。
そうして今日のシーンの中で、あの唯一無二な「冷たい世界」がBIG CATを覆う。 寝不足かつ、精神的に疲労気味のどかは、ホールの最後方の壁によっかかり、 見ていたのだけれど、もう、2回目のアンコールくらいから、すごいダウナーに。 シロップがシロップとしてすさまじく良いだけに、 どかはどかとして、自分を保つのがしんどくなる。 摩擦熱に冒され、クラクラしてくる、辛い。 ハイロウズのライヴなら、自分の心がスーッと空に向かって飛び出すのに、 身体もがんばって追いついてかなくちゃだから、体調を整えなくちゃいけない。 でもシロップも、体調、大事だなーと身に沁みて思う。 心がドーンとダウナーになっていくのを、身体でしっかり支えなくちゃいけない。 バンドのメンバーが演奏でかろうじて補完するその作業を、 オーディエンスは自前の身体で、足をふんじばってフロアに立ちつくさなくちゃ。
「ウソの希望」ではなく「ホントの絶望」を抱きしめるということは、 かほどに、熾烈な作業であったのだ、ちょっと油断してたな、反省。
8曲目の「♪神のカルマ」から12曲目「♪My Song」あたりは、 どか、かなりキた、涙をこらえて、ステージを凝視し続ける我慢の時間。 とくに「♪ex.人間」は良かったなあ、良かった。 あと、シロップとしてはかなり珍しい、五十嵐サンがギターをおいて、 ハンドマイクで絶唱した「♪落堕」は、一気にどかを追い込む。 もうタップ寸前、オちそうなどか。
失敗したなー、ちゃんとコンディション、整えていくべきだったなー。 でも、行って良かった、大阪に帰ってきても、 ちゃんと、リアリティを確認するチャンスは与えられるのだ、うん。
↑ミナミ・アメリカ村のBIGSTEP、BIG CATはここの4F
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