un capodoglio d'avorio
2003年12月30日(火) |
2003年極私的芝居ランキング |
2002年度のランキングと比べると、とても質の高いランキングになった。それも実は頷けるところで、2003年度のどかの総観劇数(同一会期同一劇場の同一作品の再観劇除く)がなんと40にもなる。これは北区つかこうへい劇団の「千円劇場」シリーズや、青年団が比較的リーズナブルなチケット価格を提示してくれたことによるみたい。いずれにしても、改めて振り返ってみて、幸せなことだよーとしみじみ思うことしきり。
☆の基準だけど、昨日上梓した「いろいろランキング」とは全く異なることを留意されたい。つまりこのランキングは第10位から挙げていくけどその第10位でさえ「いろいろランク」の基準にすれば☆x5なのである。もう、☆なんて野暮ったいの辞めようかと思ったけど、やっぱり芝居ランク内での比較ということでむりくり☆をつけちゃう。せっかく「極私的」と謳っているんだしね。では、まず惜しくもランク外になった次点の作品の名前だけ。
次点:RUP「寝盗られ宗介」、つか「売春捜査官」、扉座「きらら浮世伝」「アゲイン」、大人計画「ニンゲン御破算」、青年団「暗愚小傳」「ヤルタ会談」以上
では、第10位から参ります・・・、あ、このページの記述中、つかこうへいとは「作・演出:つかこうへい」の舞台を指します。演出が他の人であれば舞台制作者を冠に着けることとします、あしからず。
第10位 青年団「もう風も吹かない」@桜美林PFCプルヌスホール:☆★(参考→2003年11月13日) 桜美林大学演劇コースの学生がキャストスタッフを兼ね、それを青年団がバックアップした公演。この国の学生演劇史上、最もクオリティの高い舞台だろう。鋭い社会的批評の視点を保ちつつエンターテイメントとしての舞台を成立させる平田オリザ一流のバランス。ホールも良かった、場所はへんぴだけど。
第9位 RUP「幕末純情伝」@青山劇場:☆☆(参考→2003年11月22日) 敢えて9位に留める。キャストの豪華さでは文句なし今年のMVP。筧利夫復活の報は名実ともに真実であったと演劇界に知らしめた舞台。千秋楽のオールスタンディングオベーションは感動的だった。つか自身の演出で観てみたいと、つとに思う。戯曲のポテンシャルを若干余したことについて、この順位(去年なら余裕でベスト3当確)。
第8位 つかこうへい「熱海殺人事件 平壌から来た女刑事 ver.小川岳男」@北とぴあ:☆☆★(参考→2003年09月21日) 北区の秘密兵器、ついに伝兵衛に挑戦。どかがこれまでに観たなかで、もっともパワフルかつ誠実な凄みに満ちた木村伝兵衛だった。水野朋子役がもう少し何とかなっていれば、きっと伝説になっただろう舞台。小川サンを主役に据えた新しい戯曲をつかさんは書くべきじゃないだろうか。もう、そのレベルな人だ。
第7位 青年団「忠臣蔵OL編」@駒場アゴラ劇場:☆☆☆(参考→2003年03月27日) 上演時間50分のミニ舞台、でも極めて上質。忠臣蔵のパロディ、登場人物がOLだったらどうでしょう、という舞台。これを実験的戯曲というのはあたらない。だってオリザは全部、計算づくだもの、最初からこの試みが成功することを確信している。江戸時代と現代のOLを結びつけ、そのギャップから浮かび上がるのがいつの世も変わることのない悲哀。笑いまくって切なし。
第6位 NODA MAP「オイル」@シアターコクーン:☆☆☆☆(参考→2003年04月24日) これが6位だもんなー、我ながら信じられないハイレベルだ今年。野田作品の99年の傑作「パンドラの鐘(レビュー未収録)」の続編。でもどかは「パンドラ」よりもこっちがずっと好み、というかこれは大傑作だと思う、戯曲として。若干、藤原竜也が弱かったけど、松たか子には圧倒された。野田のスピードを食ってしまう凶暴な役者の「血」を感じた、ブルブル。
第5位 つかこうへい「ストリッパー物語」@紀伊国屋ホール:☆☆☆☆(参考→2003年03月11日) 2001年に蘇った幻の戯曲の、再演。石原良純と渋谷亜紀は奮闘。でも一番奮闘してたのは演出家。演出家つかこうへいの凄みが凝縮された2時間。悲惨な現実から目を反らさずになお「何が何でもハッピーエンドにするんだ」という意志。祈りですらない、意志。数十名に及ぶ若手役者達が、その意志に乗り一丸となって駆け抜ける剛速球の舞台。仕上げの荒さを激烈なスピードでカバー。つかのキャリアのなかでも傑作の舞台に数えるべきだと思うどか。
第4位 つかこうへい「熱海殺人事件 平壌から来た女刑事 team.BIG FACE」@北とぴあ:☆☆☆☆★(参考→2003年04月05日) 舞台女優・金泰希(きむてひ)のスターとしての華に酔いしれるためだけの舞台。「ストリッパー物語」が<川中島の合戦>だとすれば、こちらは<新撰組池田屋襲撃>という感じ。少数精鋭だが「階段落ち」のスピードは光速を超える。半蔵役の武智サンとのからみは眩暈がするほどフェロモン流出。意志がまっすぐ込められる瞳の輝き。相手の痛みをぐっと受ける強い想像力。スターさんの華とは「何か」を知りたければ、彼女を観に行かなくちゃなのだ。
そしていよいよベスト3・・・の前に、どか的特別賞の発表!
特別賞 TBS「テアトル・ミュージカル 星の王子さま」@東京国際フォーラム(参考→2003年08月13日) ・・・あおいたん、らーぶーっっ (≧∇≦)/
失礼しました、それではベスト3です。
第3位 青年団「海よりも長い夜」@富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ:☆☆☆☆☆(参考→2003年06月28日・他) 今年1月にも三茶・シアタートラムで観劇、その後富士見市で2度目の観劇。どかが観た青年団のなかでは2000年の「ソウル市民1919(レビュー未収録)」と並んでベスト。「静か」なことと「破壊力」は全く関係無いということ。クライマックスの沈黙の「破壊力」たるやすさまじいものがある。脚本も多作なオリザさんだけれど、これは屈指の名作。演出も冴え渡り、キャストは現・青年団の1軍が総出演。足がすくむような深淵に、かすかに明滅する明かり、その美しさ。
第2位 維新派「nocturne -月下の歩行者-」@新国立劇場:☆☆☆☆☆(参考→2003年09月16日) 「社会・関係」に絡め取られるのではなく「世界・存在」とダイレクトにリンクすることができる舞台。そういう意味では「関係」にたゆたう青年団や、「関係」を突き抜けるつかとは全く異質の舞台。センスや感性は、そのままそこに保存されているわけではなく、個人個人がちゃんと磨かなくちゃ役に立たない粗大ゴミになってしまう。維新派の舞台の「入り口」を察知できるほどには、自分のアンテナが生きてたことに、どかは思わず感謝したくなる。それが神であろうと、悪魔であろうと。そんな、舞台だった。
第1位 つかこうへい「飛龍伝」@大阪厚生年金会館:☆10(参考→2003年12月12日) ここにいたって、もはや語るべきことなど何もない。告白してしまうと、もう観劇を卒業しようかとさえ、いまは思っている。それほどの衝撃。どかのなかでいろいろな流れが収束していくことを感じている。・・・分からない。まだ、ちゃんとした「銀ちゃんが逝く」も観ていないし、「広島に原爆を落とす日」も観ていない。その2つの芝居を観ない間は、つかこうへいを語りきることなんて不可能なのかもしれない。分からない。12月12日の2時間半の出来事だけではなく、いままでのどかの人生全てを引っ張っていくほどの「破壊力」。どかは唖然として後悔し、そして同時に四肢がちぎれるほどの幸せを感じた。
・・・こんな感じです。興味のある舞台があれば、リンクをたどってレビューを読んでみてください。どかも改めてざーっと目を通して観たのだけれど、そこそこ頑張って、楽をしないで逃げないで書けているのが多かったのでホッとしているところです。来年、このランキングがあるかどうかも、まだ分かりませんが、観劇は、本当に良いものです。
・・・あ、まとめちゃった、てへ。
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