un capodoglio d'avorio
2003年12月04日(木) |
つかこうへいダブルス2003「飛龍伝」<青山劇場1> |
(参照→2001年08月21日「新・飛龍伝 〜Let the River Run」)
ついに「新」の一文字がとれた、素の「飛龍伝」が帰ってきた。素とはシンプル。シンプルとはベスト。それがつか芝居の鉄の掟。つか芝居において、入り組んだ複雑なプロットや、カクテル光線の照明などは全て、拙い役者をフォローするために存在している。役者に力があれば、身ひとつあればそれで充分。そう。筧利夫の身体がひとつあれば、それ以上に贅沢な「仕掛け」は存在しない。つかが9年間、彼のために凍結保存してきた戯曲とキャラクターが、とうとう解凍された。それが「飛龍伝」であり、第四機動隊隊長、山崎一平である。
僕は、良い役者というのは、 演出家に恋をさせたがるものだと思っているんです 芝居の中で、この女に恋をさせたいとか、この男に愛を語らせたい、 と演出家に思わせるのがいい役者だというふうに
(特別対談 つかこうへい X 筧利夫「戯曲 新・幕末純情伝」より)
2001年の「新・飛龍伝」で加えられたギミック、キャバクラ嬢マリや学生側にいた機動隊のスパイなどのプロットは全て外され、場面もずいぶん整理されているから、ストレートに「ロミオとジュリエット」していて筋はかなり分かりやすい。きっと初めてこの戯曲に接する人でもほぼ、全てのプロットが、リアルタイムに理解しうると思われる。(こんなのは当たり前と言えば当たり前のことなのだけれど)。
筧ロミオの相手役、全共闘委員長・神林美智子役は広末涼子。総勢40名に及ぶ大キャスト陣において、ただひとりの女性。それだけ多数の男を、自らにかしずかせなくちゃなのだから、相当の求心力が求められる役どころ。広末にその華があるのだろうか。筧の復帰に心躍るつかフリーク等も、その一点が気がかりだった。どかはでも、メディアから干されていた彼女が戻ってきたTBS系のドラマ「元カレ」をチラと見て「あ、いけるかも」と思った。それまでの型にハマった小手先の演技ではなく、その限られた少ない自分の引き出しをタンスごと引き倒して、床にぶちまける系(すごい表現だ)の演技をしてたからビックリした。もちろんその路線のスペシャリスト・大竹しのぶや、エース・菅野美穂にはとうてい及ばないけれど、でも、見ていてグッと引きずられる瞬間が、確かにあったから。
他のキャストは、全共闘作戦参謀本部長・桂木順一郎役は、もちろん御大・春田純一先生。齢はもうすぐ50を超えるというのに、いまだ学生役(^_^;)。この「飛龍伝」に先駆けた「幕末純情伝」の勝海舟役においても、重鎮としてしっかり筧の龍馬のカウンターパートとして機能していたベテラン様。また、横浜国大委員長は武田義晴サンで「幕末」では岩倉具視役のハジケぶりからどかはかなり期待。また、早稲田大学委員長には、何と2001年第四機動隊隊長の重責を担った北区エース・小川岳男。しかも2001年のキャラクター名・泊平助をそのまま背負うという心憎いつかの親心。「幕末」には小川サン、出なかったので期待度は最も高い。また、どかの大好きなあっくんこと、赤塚篤紀クンは大阪大学の委員長(?)。ちょっと、残念。武田サンがいるから仕方ないかもしれないけど、でも、横浜国大委員長、やって欲しかったなあ。第一機動隊隊長は、どかとしては絶対、山本亨さんじゃなくちゃヤなのだけれど、でも、山本サンは「幕末」のみの出演(ρ_;)、残念。
吉田智則サンや鈴木ユウジサン、山本サンが抜けるため「幕末」よりキャストの華やかさでは劣るかも知れない。が、「飛龍伝」という戯曲の特性上、つまり全共闘の無名の学生や無名の機動隊員がパーッと散っていく瞬間にもドラマツルギーを求められるのだとすれば、この華で劣る若手役者サンたちの熱演を、プラスにもっていくことという奇跡が起きるかも知れない。そしてその奇跡を可能にする絶対の条件こそ、<演出=つかこうへい>。そうなのさ。「幕末」と異なって「飛龍」では、つか役者を配して、つかの名作戯曲を、つか自ら演出をつけるのだ。やっと黄金の3律が満たされるのだ。そんなわけでキャスト史上主義のどかといえど、「幕末」よりこちらの期待度が数倍も高くなってしまう。
さて、実際のストーリーである。1970年秋、日本中が革命に熱く燃えるこの季節に、学生達の信望を集める作戦参謀の桂木順一郎は、全共闘40万をたばねる新しい委員長に自らが愛するひとりの女を指名した。その名は、神林美智子。また、彼女を愛した男がもうひとり、桂木の親友であり警視庁第四機動隊隊長、山崎一平。70年安保を目前に控えた緊迫感のなか、桂木は闘争勝利のために一計を案じて、美智子に指令を出す。それは親友の恋心を利用した卑劣な作戦であった。迫りくる11.26国会前最終決戦、耳をつんざく怒号とサイレンのなか、「革命」と「愛」が収斂していく。・・・みたいなまとめ方でいいのかなあ。この三角関係が、とにかく基本の劇構造として確立されれば、舞台は成功したも同然。しかし2001年の「新・飛龍伝」では、神林美智子役の内田有紀の資質から、彼女のリーダーとしての孤立のみ浮き彫りになり、山崎や桂木との繋がりが稀薄になってしまいそこから物語が破綻をきたした。
・・・
筧の疾風怒濤への期待と、広末の踏ん張りへの祈願。どかはこの2つのポイントのみを胸に、開演のイントロ、♪「若者たち」を聴く。2003年12月4日、ソワレ@青山劇場。いよいよ開幕・・・!
・・・伝説の名物シーンが次々蘇る。早稲田闘争博物館のシーン。山崎一平登場のシーン。高崎俳句大学・及川さんのシーン。雲海上でのスケーティング(美しい!)。桂木が総括を受けるシーン。そして♪カノン。もうこの曲がかかるだけで涙腺が決壊、その後に続く桂木が神林に潜伏指令を出すシーン・・・。愛の生活@山崎の下宿。その後、満を持して流れる「飛龍伝」のテーマソング♪パラダイスと、ダンス(かっこいい!)。桂木と山崎の決裂。そして山崎と神林の熾烈な衝突、激突・・・邂逅。その後のハイライト、11.26最終決戦!
号泣のカーテンコール。立ち上がる気力すら無い、どか。ぐでー。
(続く)
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