un capodoglio d'avorio
passatol'indicefuturo


2003年09月22日(月) つか「熱海殺人事件 平壌から来た女刑事」(Ver.小川岳男)2

(続き)

岳男サンに引きずられて、友部サンと嶋サンのベテランコンビも、とてもいい。
もともとエース未満だけど北区内ではトップクラスの実力の持ち主、
つか節が骨の髄まで染み込んでいて、やはり、上手い。
ずーっとこの劇団で一緒にやってきた岳男サンと友部サンと嶋サンが、
並んで舞台の上にいると、他の役者同士では感じ得ない、
イイ意味での安心感や安定が伝わる、微笑ましくて泣けてきそう
(もちろんテンションは高くて傷つけ傷つけられる芝居をやってるんだけど)。
また前回の「売春」でとっても好演した若手・北田クンは、
今回もとても良かった、すごくすごく、良かった。
もちろん伝兵衛と比べるとエンジンの排気量の差は歴然としているけれど、
熊田という役どころではその差がかえって、ちょうどハマってくる。
北田クンはしかもちゃんとレッドゾーンで走り続ける誠実さがあるし、
それでちゃんとスピードもグッとのってくる才能も持っている
(扉座の某北斎クンとは違っていたのね)。
岳男伝兵衛という恒星・太陽があって、他の役者がその周りを回る惑星。
予定調和を崩して悲しみを暴き痛みを浴びつつも、
最後のすさまじいカタルシスへと結実していけたのは、
その大きなそれぞれの星が自らの重さを重力へと変えて、
ギリギリのしのぎあいをした結果に生まれた惑星軌道の美しさである。
その美しい楕円は最初から与えられたものではなく、
一瞬一瞬の重力のぶつかり合いの末に、
真ん中の恒星が勝利して初めて生まれるものだ。
クライマックス、コレまで観たどのバージョンよりも強く、
そして大きなカタルシスを感じたのは、ひとえに伝兵衛の歴史的な勝利の故だ。

だからこそ。

だからこそ、惜しい、惜しすぎる。

どかはこの日ほど、金泰希という女優の不在を強く感じたことは無かった。

きょうの捜査室に、唯一足りなかったモノは「愛」である。
男女がお互いを慈しみあい大切に思う「優しさ」である。
鶴水サンの水野は、伝兵衛の強い志と熱い心を受け取るだけの器量が無かった。
「インプット」もか細すぎてダメだし「アウトプット」も厳しかった。
前回のストリッパー物語では、お話にならないレベルだったのが、
今回はちゃんと、声は聞こえるようになった。
でも、周りのテンションに追いつめられたかのように響くその叫びは、
子犬が怯えて鳴くときに似て、哀れみを誘っても感動は起こらない。
大山や半蔵の人間的な弱さや悪に対する怒りにうちふるえるのは分かるが、
その怒りはあの叫びでは表層的にしか伝わらない。
身体と喉に力が入りすぎて、身体の芯もぶれてしまう。
そして何より致命的なのは、水野の伝兵衛への優しい気持ちが、
ほとんど、いやまったく伝わらなかったのだ。
いや、どかはあれだけ喉をしめて声をがなり立てていて、
良く最後まで声がでるなーって感心はしたけどね、
喉、強いんですねーって、でも感動にはほど遠い。
かわいそうではあるな、いきなり、岳男サン、友部サン、嶋サンといった、
北区でも1軍メジャーのオールスター的役者とチーム組まされたんだもんね。
つかさんは、ここで鶴水サンが化けることを期待したかも知れないが、
ちょっと、期待はずれに終わっていると、どかは思う。

なぜ、なぜに、金泰希を使わない?
あの伝兵衛や大山、半蔵と唯一対峙できる「強い」女優は、
テヒさんしかいないよ、いまの北区には。
テヒさんがいれば、岳男伝兵衛の切ない悲しみがもっと宇宙的に広がりを見せるし、
クライマックスの定番・パピヨンのシーン花束の美しさは、
破滅的なものになっただろうに、鶴水サンじゃあ弱いよう。

どかがこう愚痴りたくなるほどに、この舞台は素晴らしすぎた。
あの岳男伝兵衛は、歴史に残る。
大きな身体、鍛え抜かれた筋肉を隠す白いタキシードの上着、
全身を大きくしならせて新聞の棒で大山をしばきあげるシーン。
劇場中に響き渡るほど大きなしばく音の衝撃波は伝兵衛の悲しい痛みであり、
これから死刑台へと向かう大山への福音ともなる、このシーン。
岳男伝兵衛はこれまでのどの役者よりも深い怒りと悲しみでもって、
大山をしばき上げた。
お世辞にも「美形」という美麗字句で修飾されないだろう、
小川岳男という役者が、比類無き「美しさ」をまとった瞬間だった。
しっかり、しっかり見届けたいのに、どかの眼はどうしても涙でくもって。

はー・・・、スゴかった。

半ば放心状態で席を立てず、ぼんやり首をひねって後ろの席を眺めたら、
北区の現役劇団員に混じって、鈴木祐二サン、吉田智則サンなど、
歴戦の勇者サンが目にとまってビックリ、祐二サン、かっけー。
しかしもっとびっくりしたのは帰宅後「ある方」から伺ったところによると、
なんとなんと、客席にテヒさん、いたんだってえええええええ!!!!!
ああああああ!!!
なんで見つけられなかったんだああああ!

はー・・・、ショック。
でもテヒさんも、ワタシが水野やりたいっ。
と思っただろうな。
よし、待ち続けようワタシは、と思ったことだったよ。


(・・・でもテヒさん見つけられていたとして、
 どうするつもりだったのだ、どかよ?)


どか |mailhomepage

My追加