un capodoglio d'avorio
2002年11月23日(土) |
扉座「いちご畑よ永遠に」 |
紀伊国屋サザンシアターにてネコバスくんとソワレ観劇、雨、冷たし。 演劇系メーリングリストではそんなに高評価ではなかったし、期待もそこそこに。 私がわるうございました横内さま(扉座主宰・演出脚本)。 先週の舞台をはるかに越える衝撃に打ちのめされる。
ジョンレノンの生い立ちから殺されるまでを順を追って再現するという、 ひねりもスパイスもないベタな構成、ただベタなだけに劇団のちからわざが炸裂した。 横内謙介さんはつかや野田と違って役者を育てるのはとても上手みたい。 若手も上手だしベテランはさすが、世代の切れ目も見えないので安心させる、それってすごいな。
前半部分は、恵まれない境遇とひねくれたどうしようもない「くず」としてのジョンが、 延々ベタに再現されて、さすがのどかも「ヤバいんちゃうん?」と不安になる。 役者は抜群に巧いけれども、いわゆる学芸会チックな展開なのだなあ、恥ずかしく。 でもこの「恥ずかし」というネガティブな感情すら計算して喚起しているのだ、横内さんは。 この「危険な橋」を観客に渡らせた後で、一見優しいほわーっとしたイメージの劇団は、 あまりに鮮烈で協力なカウンターを用意していた・・・
それは「音楽」、楽器の生演奏。
二度目の出会いで邂逅したポールとジョン、 たどたどしくジョンが運命の相方にギターを披露する、曲はエルビス・・・
"CAN'T HELP FALLING IN LOVE"
一瞬、呆然、突然どかの涙腺が壊れる、なにこれ? そもそもレノンがテーマの一つで楽器を舞台上に持ち込むのもギリ反則のベタベタやん? でもあっけなくどかは持ってかれた全部、あの瞬間から以降は。 「音楽って」改めて思う「ホンマすごい、しゃれにならん」。 ハイロウズのライブ以外でそれを心底思い知ることになるとは思わんかった。 そしてこの舞台はクライマックスに向けて加速していく・・・
脚本はやはり非凡に違いない、「ジョン様万歳」ストーリーにしなかったのがいいな。 「天才ジョンレノン」の弱い部分やマイナス面をはっきりと映しとり、 かつその溢れる「才能」の残酷さを描ききっているのがすごい。 つまり、ジョンの「ラブアンドピース」は世界の人々を幸せにしたかも知れないが、 身近の人を不幸のどん底に落とし込んだという事実、それがこの戯曲の肝だ。 その「身近な人」とは最初の妻、シンシアパウエル、山田まりやが演じる(大健闘!)。
天使の少年はそのシンシアを近くに見ていて、やりきれずジョンに直訴するも相手にされず。 その少年が後見役の先輩天使に突っかかる。
少年「天使なんて、所詮、何にもできないじゃないか、助けたい人も助けられない!」 先輩「確かに天使は無力だ、私たちの手はわずかに人より温かいだけだ・・・ でも・・・でも諦めるなよ!」
この「天使」という言葉を「音楽」と置き換えてみると、ああ、そんな感じやな。 「音楽」は誰も救いはしない、でもそれは少しだけ温かく、 聞く人自身の「化学変化」のきっかけになる、かも、かも。 ラスト、天使の少年にシンシアが「それでもジョンと出会った事、後悔しないわ」。 そしてその彼女を迎えるようにバンドセットにビートルズ、そして脇から全ての役者が、 楽器を携えて出てくる、合奏、合唱、反則やっちゅうねんこれわー・・・
"HAPPY CHRISTMAS (WAR IS OVER)"
ジョンがギターを弾き、シンシアがその前で歌う、すごい、いい顔をしていたのー。
↑"HAPPY CHRISTMAS" in 新宿タイムズスクエア&紀伊国屋サザンシアター
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