un capodoglio d'avorio
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2002年06月09日(日) G2プロデュース 「ダブリンの鐘つきカビ人間」

FIFAワールドカップ、日本ロシア戦というとっても天王山なその夜、
なぜかどかは渋谷にいて、センター街を突き進んでいた。
目指すはパルコ劇場。

伝説の名作(どかの中で)である「人間風車(11/18/2000参照)」のカンパニーが手がけた作品。

ストーリー。
ある国籍不明な中世都市、街中が奇病に冒されていた。
目が見えなくなったジジイや心と裏腹な言葉しか話せない娘、カビ人間になってしまった者。
そんな中悪役な神父と市長が結託して偽装放火をしかけカビ人間の仕業という噂を流す。
心と言葉が逆になってしまった娘はカビ人間を何とか助けようとするが。
という感じかな、プロットは。

その言葉裏腹少女が「きれいなお姉さん」水野真紀、カビ人間に「ナイロンのエース」大倉孝二、
悪役市長に「元木村伝兵衛部長刑事」池田成志、ジジイ役に「天井桟敷出身」若松武史・・・
と、役者を数え上げるとさすがにG2プロデュース、豪華につきる(天保12年に匹敵するかと)。

楽しかったー。
ギャグの密度で言えば明らかに「人間風車」を上回る。
着ぐるみの奇抜さと、後藤「大王」ひろひとの軽さが特に秀逸。
でも、二年前の作品と比べるとエンタメに針が振れすぎてるかなという感じ。
もすこし言葉を継いでみると、全作は豪華な役者をそろえつつもあくまで主体は脚本にあった。
今回の脚本は豪華な役者を押さえきれず、というか役者の個人技を奔放に爆発させる演出だった。
まあ、役者芝居はもともと大好きだし、なんと言っても池田成志がいるし、不満はないんだけど、
でも「人間風車」のイメージを持っていったから少し違和感。

さて、成志である。
筧利夫の例は言うに及ばず、最近は小劇場系の舞台役者がテレビでの露出が増えてきた。
上川隆也、生瀬勝久、阿部サダヲ、そしてあのテレビを忌み嫌っていた古田新太でさえ、
最近はよくブラウン管に観るようになったが成志はあまりでない。
一番資質が近いのはやはり筧利夫だろう、
同じ第三舞台出身だし、スピードとテンションはかなり近しい。
二人とも鴻上演出を受けつつもつか演出の洗礼を受け、
史上最高の当たり役をそれぞれ持ったことも一致している
(筧の山崎一平in飛龍伝・成志の木村伝兵衛in熱殺)。
昨年暮れに第三舞台十年間封印公演「ファントムペイン」を観に行った。
そのとき生の成志は初体験、その後「天保12年」で二度目の成志、そして今回三度目だが、
三度目が一番そのなかでは良かった。
正真正銘の悪役を、生き生きと楽しそうにぼけをかましつつ演じていた。
そう、筧と成志の資質の違いがここでは生きていた。
つまり筧が「愛嬌」と言う名の引き出しを持っているのに対し、彼は「妖艶」のそれを持っている。
明らかに主人公の大倉や長塚京三の息子、圭史を食ってたもんな、うーん、ラブ。
かっこいい。
かっこいいけど。
勿体なーいー。
だってえー。

後藤ひろひとの脚本はたぶん、いま、一番人気のある小劇場系のホンだろう。
それはウェルメイドを基調としつつも三谷幸喜よりも若干ベタに起伏をつけた分かりやすさ。
ひっくり返せば「予定調和」。
劇団☆新感線やキャラメルがウケるのと同じ理由で大王の脚本はウケるんだと思う。
でも、成志は筧利夫と張るくらい圧倒的なポテンシャルを持っていて、
そのポテンシャルは予定調和を崩してなおハッピーエンドを志向するという逆説的テンションなはずだ。

あー「つか芝居」で成志を観たいなー、と思いつつ泣き虫などかはエンディングで泣いてたんだけど。
てへ。


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