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2004年02月29日(日) Simple Story <芽美編>

―もしかして、あれ秀人じゃ…―
女は気まずいなと思った。
まさかこんな所で出くわすなんて…。気付かれないように神に祈った。

その願いはあっさりと裏切られ、秀人に捕まってしまった。
何かを話しているが、芽美は違うことを考えて、秀人の話を聞かないようにした。
芽美、芽美とウルサイが、今この時間だけ芽美じゃないと自分に言い聞かせ、
「人違いです」
と言ってその場を去った。

付き合っていた過去さえ消滅させてしまいたい、そう心から願った。
が、簡単に忘れられないということを芽美は知っていた。

短いが、この人生の中で彼ほど心を許した人はいない、まして結婚なんて考えてもいなかった私が秀人より先に結婚しようと言ったのは、間違いなく秀人を愛していたからだ。
もしかしたら…今でも…変わらないのかもしれない。

信号を渡りきって一息、溜息を付いて携帯電話を取りだし、宝井秀人のアドレスが映し出されるともう1つ溜息を付いて…電話をかけた。

「次の信号を点滅する前に渡りきれる?」
芽美の顔左半分を西日が差した。


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