2003年12月23日(火) |
K.and his bike |
錆び付いた自転車のチェーンがギシギシ音を立てては向かい風の強さに今にも自転車を止めたくなってしまう。 ―負けたくねえ!― Kは独り言を言う。どうでもイイ事を。負けるのは大嫌いなKにとっては自転車でさえ、勝負のひとつにする。誰とでもない、ただ、自分との勝負。自分に負けるのが一番Kにとっては許せない。 急な上り坂が待っていた。 ―絶対負けねぇ!― Kはただの負けず嫌い。 右足を漕げば、ギィーギィーと、左足を漕げばギィーギィーと。 向かい風も容赦無く吹き付けて思い切り漕ぐ両足の太ももは言うことを聞かなくなってきている。 ―もうすぐ頂上だからがんばれよ!― 自分に鞭をうった。
雲一つ無かった。太陽がこっちを見ていた。誰よりも空に近い気がした。届きそうな気がした。 どこにでも行けそうな気がした。 坂道を下ったら、右に曲がってみよう。
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