2003年12月15日(月) |
CLOSING TIME |
「カラン」 氷と氷がぶつかる音が部屋の中にひとつ響いた。深夜のテレビの中では古いフランス映画をやっているが、全くストーリーは分からない。かといって分かっていたとしてもその映画はきっとつまらない部類に入るものだろう。深夜のテレビとはそういうものだ。 「ヵチン、ジッ、ジュー、フゥー、ヵチン」 吸わないと煙草がつけられないことを知ったのはいつだっただろうか?それほど遠い記憶でも無い気がする。始めの一口はやけにむせて、気持ち悪くなったっけな。 ゆっくり、ウイスキーを口にした。 胃の中に落ちて、燃え上がる様にして熱くなる時の快感にやみつきになってしまった。一口目に来る苦さ、二口目に来る喉の熱さ、三口目に来る胃の熱さが、たまらない。 ―そんなときにもいつも、音楽はあった― スローダウンな曲に身を任せて毎晩のようにして酔っていた。嗄れ声の彼の真似をして ”So,good-bye. So long,my road calls me dear and your tears cannnot bind me anymore” 唄ってみるものの、似合わなすぎて一人で笑った。こんなとき、こんな夜には昔の写真なんか引っ張り出してずっと眺めてみたりする。今よりずっと幼い少年がそこにいることが可笑しくて、ウイスキーを飲みながらそれを見ている自分にさらに笑いがこみ上げる。「時」という分かりそうで分からないモノを掌にのせてその都度踊っている自分がおかしい。 少しは成長しているみたいだが、基本は変わらない。いや、変わりたくない。だから、 ”I'll kiss you and then I'll be gone” 二回唄ってみた。 もちろん、嗄れ声で。酔いに任せて
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