栄との、最終勤務の日。
お酒を飲むの大好きな栄に、みんなでお酒をプレゼントした。
夜、一人で事務仕事をしていたら。
荷物の整理が終わった栄があいさつに来て。
「これからは、先輩と後輩じゃないからね」
と言い、手を差し出してきた。
私が躊躇していたら。
「この間みたいなことは、しませんよ(笑)」
なんて、見透かされてる。
たまには、一緒に歩いて帰るか。
なんて話になった、蒸し暑い夜。
車を置いていくと、翌日困るんだよね、なんて言いながら。
部長に任された嫌な仕事のとき。
栄と一緒にがんばれって言われて。
二人で組まされたんだった。
私は消極的で。
逃げ出したいくらいに、重たい仕事で。
それでも、栄は私の分まで一生懸命になってくれて。
良かったのか、悪かったのか。
部長に褒められる結果を出せて。
マフラーのこともそう。
誕生日の花束のこともそう。
たった半年余りなのに。
色々なことがあったねぇって、言いながら、徒歩25分の距離を歩いた。
途中。
「手を繋いでもいい?」
って聞かれて。
「うーん、まずいでしょ」
って言う私にお構いなしに、手を握ってきて、すぐ離して。
「ごめん、汗ばんでる。変に緊張しちゃって・・・って三十路カップルなのに(笑)」
「中学生の恋愛みたいね」
「それでいいんだよ。そういう人だから、大事にしたいなぁって思えるんだから」
「そういう人?」
「手を出し辛い人ってこと」
栄と一緒にいると、楽だ。
バツ一同士って言うこともあるし。
年齢が近いこともある。
「負い目がなくて、楽な人と付き合うのが、一番なんだよ。負い目なんかあったら、何にもうまくいかない。りりかが気にしないって思わない限り」
お友達のなーちゃんが言ってた言葉。
私は、今回の喧嘩がなくても、負い目がある限り。
ハルとはうまく行かなかったのだろうか。
あの、暖かい手を、離してしまったことを。
後悔するときが、やってくるんだろうか。
今はまだ、分からないまま。
もしかしたら、一生分からないままなのかも、しれない。
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