朝起きた時、あいつはテレビを見ていて。
「おはよう、大丈夫?もう痛くない?」
と、私の顔を覗き込んで来た。
すっかり、痛みがなくなった。と言えば嘘になるけど。
もう、唸るほど痛くはない。
「うん、大丈夫」
無理矢理、元気な声で返す。
妹から電話が来て。
一緒に昼ご飯を食べることに。
あいつと三人で、妹のご主人がやっている店に食事へ行った。
「食べた後、行くんでしょ?」
妹が聞いて来て。
「今日じゃなくても、いいかもしれない」
と、私が答えた。
「でも、やっぱり早く会っておかなきゃだめだよ」
あいつは言う。
食べた後、あいつの運転する車に乗り込んで、実家へ向かう。
途中、妹が、母にメールをしてくれて。
「今から、りりかちゃんたちと行きます」
でも、母からの返事は、妹じゃなく、私に返って来た。
「会わない、とは言わないけど。あんたたちの様子をしばらく見せてください(子供たちを含めて)それから会ってもいいと思います。だから、今日は無理だとHくんにも伝えてください。今会っても何もコメントも出来ません。」
母からのメールを、二人に見せた。
あいつは。
「俺、ちょっと焦り過ぎちゃったかな(笑)そうだよね、お母さんの言う通り、もう少ししてからだって、いいよね(笑)」
なんて、笑って言ってたけど。
今日のために、美容院に行ったり、服も軽く見えないもの!(物凄く、見た目だけは、軽く遊び人に見えちゃう人なので)とか着て来たりしていたあいつに。
ものすごく、申し訳ないと思った。
妹が気を利かせて。
「この間(GW)行った、下町めぐりのビデオがあるの。それ見に、うちに行こうよ」
なんて言ってくれて。
二人でお邪魔する事にした。
あいつは、普段よりよく笑って。
ビデオを見ては「ライラ大きくなったなぁ」とか言い。
妹と二人で、はしゃいでた。
ねぇ。H、無理してるよ。
何度、そう言いそうになったか、分からない。
妹の家からの帰り道。
少しドライブしながら、家まで送ってもらった。
ドライブ中に。
「俺、焦ってたのかもね。りりかが子供を引き取る事になって、上のお姉ちゃんたちに会う前に、りりかのお母さんに挨拶しなきゃって、まずそこをしなきゃって、思ったかも。でも、りりかのお母さんの言っている事は、筋が通っているよ。ちゃんとやっているところを見てもらってから、会う事だって遅くはないんだからね」
私は、何度か「ごめんね」と言った。
「りりかが謝るところじゃないし」
あいつは、笑って頭を撫でて来て。
「頑張るぞー」
とか、気合を入れなおしていた。
私も、焦っていたかもしれない。
何を?って聞かれたら、分からないんだけど。
なんだか、最近焦ってた。
色々な事に。
別にね。
あいつが急いで、私たちの生活の中に入ってこなきゃいけないわけじゃなく。
私だって、親に認めてもらわなきゃいけないと言うのが、全てではない。
まず、出来る事から、始めてみよう。
あいつは、そんな事を帰り際に、言っていた。
私たちが、まず出来る事は。
子供たちが笑って暮らせる環境を、少しでも作る事。
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