「りりか、りりか」
肩を揺すられて、それでも起きなかったら。
布団をはがされて、目が覚めた。
「眠い・・・」
「もう7時過ぎちゃったよ・・・」
「んー、まだ7時か。・・・初日の出は?」
「出ちゃってる・・・」
去年は雪が降るような天気で、初日の出は見れず。
今年はいいお天気だったのに、寝過ごして見れず。
「あーあ。まぁ、仕方ないかー」
とか言って、布団をかけなおしている私に。
「もう寝ない!起きるの!」
って、布団をはがすあいつ。
結局、寝起きで旅館のお風呂に入り。
目を覚ますことになった。
お昼前に、旅館を一時出て、近くの日帰り温泉へ。
そこで長湯をし過ぎてしまい。
少し、貧血を起こしてしまった。
あいつには。
「長すぎだよ!」
って怒られて。
旅館に戻るとき、夕日が見えた。
「初日の出は見れなかったけど、今年最初の夕日だね」
と、あいつが言った。
夕飯の後、旅館の貸し切り風呂に入って。
「あまり長く湯船に入らないように」
と釘を刺された。
貸し切りだから、もちろん一緒に入るんだけど。
真っ暗にしてもらったけど、露天風呂だから外の明かりで完全な闇にはならず。
私は、恥ずかしくて、なかなか服を脱げなかった。
違う方向を向いてもらって、湯船に入って、入った後はずっと体育座り。
そんな私を見て、面白がって、あいつも体育座りしてた。
「新年って言う事で、お互いに直して欲しい所を言い合わない?」
って、あいつが言ってきた。
「いきなり言われても、考えつかないよ」
って、私が答えると。
「なら俺から」
私に対して直して欲しい所ってどこだろう?
聞くのが、少し怖くなって。
何度も。
「ちょっと待って」
とか。
「でも、言われても直せない所かもしれないし」
とか、制してしまった。
「もっと俺を信用して欲しい」
「え?」
「俺を、信用して欲しい」
「してないかな?」
「してないよ、全然してない。最近は特にしてない」
「そか、してないか・・・」
確かに。
信用してないかもしれない。
疑ってばかりいるかもしれない。
キャバクラに行った事に対して嘘ついてた事が、11月に発覚して。
私の中で、あなたは嘘を吐かない人間だと信じ切ってた。
いつだって、嘘は言わない。
だから、安心しきっていた。
けど、本当は嘘だったこと。
そのあと、約束した事も、破ってその上嘘をつこうとした事。
そう言う事があってから、少しずつ私の中で疑うようになって行った。
本当に、友達とサシ飲みなの?
本当に、仕事なの?
本当に、寝ちゃっているの?
なんて、前なら考えられない位に、疑って。
そういう疑う事に疲れちゃって。
考えたくなくなって。
少しずつ、考えないようにしていたら。
具合が悪かった事も、拍車をかけて。
楽になった分、気持ちは冷たくなって行った。
だから、一緒にいると。
素直に嬉しい、幸せだと、思えなくなって。
どこかで変に気を使ってしまって。
「うん、気付いてた」
「そか」
「何か、おかしいって。何かあるなぁって。たぶん、それ(キャバクラ)だろうなぁって」
あいつは、私の背中の方に回って来て。
後ろから抱きしめるみたいに、してきた。
私の頭の上にあごを乗せて来て。
「本当に、ごめん。今までもこれからも、りりかしか、愛せないし。これ以上ない位に、想っているし。言葉じゃ伝わらないかもしれないけど。信じて欲しい」
私が、泣きそうになって、慌ててタオルで顔を隠していたら。
首の辺りに後ろからキスをして来て。
「信じて欲しい」
って、もう一度言った。
私は、うなずくことが出来ず。
ずっと、タオルで顔を押さえたまま、泣いた。
「りりかは?直して欲しい所、ないの?」
また、頭の上にあごを乗せて来て。
私は。
「考えて置く」
って、泣き声のまま答えた。
あいつは、やっぱり。
「ごめんね」
を、繰り返した。
|