6月1日 日曜日
落ち着け。
電話を切った後。
何度も自分に言い聞かせたけど。
あたしは、落ち着く事なんか出来なかった。
当たり前だと思っていた事が。
当たり前じゃなくなったと言う事で。
何かが壊れかけていた。
子供は自分の分身じゃない。
子供は自分の所有物じゃない。
そう、思って子育てして来た。
つもり、だったのかな。
あたしは、子供たちがかなり小さい頃から、小学校上がるちょっと前位から、自分の事は自分で決めさせて。
自分で決めた事は、きちんと守らせて。
それがたとえ、あたしの意と反していても。
「あなたたちが決めた事なんだから、失敗してもママは何も言わない」
なんて、よく言ってたな。
それは、あたしの祖母の子育ての仕方、だった。
あたしの祖母は、若くして旦那さん(あたしの祖父)に死なれて、再婚も、恋もせず、女でひとつで子供たち5人を育ててきた人だった。(一人は16の時に亡くなってしまったけど)
祖父が亡くなった時、一番下のあたしの叔母にあたる人は、まだ2歳だったと言うから。
長い間一人で頑張ってきた人だった。
「自分の事は自分で決めなさい。その結果が悪くても良くても、自分で決めた事なんだから、誰のせいにもしない」
と、あたしの母たちはよく言われたらしい。
母は、そんな祖母にきっと不満があったんだろう。
「産んだからには、あんたたちは私の物」
と言う考えの人だった。
普段は放ったらかしにして、勝手な事しているくせに、何かあると「あんたは私の物」と平気で言う人間で。
でも、あたしもあたしで、母にそう言われながら生きて行くのが当たり前だった。
窮屈だと、思ったりしたけど。
小さいころから当たり前に感じていたりして。
当たり前だけどおかしい。
そんな風に思ってた。
あたしは、母のようにはなるまい、と。
子供たちはそれぞれ個々の意思がある人間なんだから。
あたしが何かを左右してはいけない。
そんな、えらそうな事、考えてた。
くせに。
やっぱり子供たちはあたしの物、と言う考えがあったんだろうと思う。
だから。
あたしの子供なのに、あたしじゃないの?あたしとじゃないの?
父親なんて気持ちいい思いだけして、出産にも関与せず、子育てだってろくにしてないくせに。
なんで、そんな方がいいの?
そんな風に思ったりして。
自分がして来た事は、棚に上げて。
あたしはやっぱり、あの人の娘だ、と思う。
気がついたら、部屋の中はすごい荒れ方だった。
あたしは、部屋の隅で泣いてた。
バカみたいに、震えてた。
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