仕事を終えて、夕方6時。
あいつから着信。
「今から行くね」
え?今から???
だって、明日仕事が終わってから来てくれるんじゃなかったの?
「うん、前々から明日休ませてって言ってあったんだよ。だから、今夜から行くね」
「ホントにー?嬉しい!でも、大丈夫なの?」
「うん、もしも急遽仕事になったりしたら、明日の明け方帰るから。やっぱりりりかの誕生日になった瞬間に一緒にいたいじゃん」
あたしは、慌てて部屋をかたして。
急すぎるよーなんて思いながらも。
嬉しい気持ちでいっぱいだった。
高速に乗っている途中のあいつからまた電話が来た。
「明日は完璧休みになりましたー。だから、明日はディズニーへ行こう!俺が連れて行くから」
ディズニーシーは去年行ったから。
今回はディズニーランドへ行こうって、あたしが言って。
あいつも、小学生の時に行ったきりだからって。
でも、今月の半ばか終わりだと思っていたから。
こんなに早く行く事が出来るなんて。
あいつは10時前に到着した。
「今外にいるから、出てきて」
って電話が来て。
外に出たら。
「乗って。夜桜見に行こうよ」
って言われた。
去年の3月の終わりに。
一緒に歩いた、あの並木道。
あたしは、あの時。
どんな事を考えていたのかなぁって思った。
まだ付き合って二ヶ月くらいのあたしたち。
確か、あいつがあたしの手をずっとつないでいてくれた気がする。
そんな、つながっている手を、あたしは見ながら歩いてたんだ。
「この手は、いつかは離れてしまうんだろう」
そんな事ばかり、考えながら、歩いていたんだ。
今日も、あいつはあたしの手を握る。
その握ったあたしの手を、自分のポケットに入れる。
あたしは、ポケットの中で、あいつの手を握り返して。
「絶対に、離さないで。離れたくない」
って、思う。
いろいろな事を乗り越えて、二人で話しながら、笑いながら、泣きながら。
また同じ道を1年たっても歩いている不思議。
1年前と同じ景色の中。
でも、あたしが思う事は、1年前とは違う。
繋いだ手が、離れちゃっても仕方ない。
って言う、諦めじゃなくて。
繋いだ手は、絶対に離れない。
って、確信しているから。
長かったような、短かったような。
そんな一年間。
そして、29歳に明日なり、20代最後の一年間は。
どんな年になるんだろう。
「来年も、またこの道を2人で歩いているかな」
「去年も同じ事聞いてたよ、りりかは(笑)」
「そうだっけ?」
「そうだよ。大丈夫だよ、ずっと毎年一緒に歩いているよ」
「約束ね!」
あいつは、笑いながら、あたしの頭を撫でる。
宴会している人とかいるのに、あたしはお構い無しにキスをする。
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