march forward.
りりかの独り言。

2003年03月18日(火) 盛りだくさんな一日

「やばっっっ!!!」

って、あいつの声であたしも目覚める。

意味が分からない。何がやばいの?


時計見て、気付く。

午前9時近く。

「・・・。卒業式って何時から?」

「9時・・・から」

「嘘・・・どうしよう・・・」



昨日は・・・て言うか、今朝、友達の家から帰ってきて、すぐ寝たけど。

寝たのが5時半だった。

目覚ましを一応7時半に掛けたのに、止めた形跡もないって事は、鳴り続けてたんだね・・・。




「送っていく?」

「電車の方が早い」




慌てて着替えて出て行く。

こんな日なのに、遅刻なんて・・・。



けど。

10時半近くに電話が来て。

「遅刻して入れない人がいっぱいー。式が終わるまでは卒業証書を貰えないらしいから、待ってるとこ」

「あ、一応貰えるんだ?」

「そりゃそうだろ(笑)」





友達と昼ごはん食べてから、戻ってくると言うので。

あたしは部屋の片付けして、パソコンいじって。

午後2時半、あいつが戻ってきた。


卒業証書を手に。

あたしに、広げて見せて。

そして、大きい袋を持って。




「おめでとう。よかったねー、本当によかったね」

「うん!で、これ。ホワイトデー!」

「え?手紙じゃなかったの?」

「いやいや。帰りに買って来た。今(笑)」

「よかったのにー」


中身は、キティちゃんのクッション。

「かわいいー」

「車において。どうでもいいけど、俺、サンリオのポイント凄い貯まってるんだけど(笑)」

「もう、最初の頃の恥ずかしさとかないでしょ?」

「ないない。すんなり入って、これください、とか言ってる(笑)」




出かけようかって事になって。


夜景が綺麗な公園に。

ま、昼間だし、夜景はないけど。

バトミントンを、ここで何度かやった。

久しぶりに、バトミントンをやりたくて。

前前から、「卒業式の後はバトミントンしようよ」ってあたしが言ってた。



最初は寒い、って言ってたあたしたちも。

「暑いねー」

って上着も脱いで。

風もなくて、バトミントンには最適。




疲れて、コンビニに行こうか?って話しになり。

車を出した。

けど、あたしが道に迷ってしまって。

「どこだ?ナビで探すか」

って言ったら。

「俺が案内するよ。この辺は、5年間遊んでいた場所だし」

って言うから。

あいつの言われた通りに、「ここ右、次左。正面を右」って走った。



・・・ら。



行き止まり。

に。

ラブホ・・・って。



「さすが、この辺で五年間遊んでいただけあるね!これがコンビニかぁ。へぇ・・・あたしが知っているコンビニとは、ちょっと違うみたい。さぁ、戻らなきゃ」

あたしは車をバックさせて、戻る。

「マジで入りたいんだけど」

「何でよ?」


そのとき、あたしの頭の中は、また卒業の約束で、いっぱい。

確かに、卒業証書を貰って来たらね!とは言った。

けど、貰ってきたその日じゃなくても・・・よくない?



「いちゃいちゃしようよー」

「何で?何でよ?やだよ!!!」

「昨日も、いちゃいちゃ出来なかったのに?」



あたしは無言で、走り出す。

コンビニをナビで見つけて、そこで止まって、お茶を買った。

あいつは、しきりに「行きたかったなぁ」と言う。

あたしは、ちょっとムッとして。

「あのさ。卒業の約束の事なんだけど。別に、今日卒業式だったからって、慌ててやらないでもよくない?」

「は?あぁ、あの約束ね。てか、踏み倒すつもりでしょ?」

「やるって言ってるじゃん!!!今日は嫌なだけ!!!」

「・・・。もう何でもいいよ。ひなちゃん(妹)の所に行くんでしょ?」


今日は、夜ご飯はあたしの妹の働いている店に行って食べる事になってた。

だけど、時間はまだ5時前。

お腹は・・・空いてない。




けど、行くところもないし。

妹の店に向かう。

運転してるあたしに、あいつが言う。



「りりかさー。俺ははっきり言って、あんな約束どうでもいいんだよ。やるよーって恥ずかしがっているりりかを、見て楽しみたいって感じで、言ってたけど。別に、本気で嫌がってるんだなって事くらい分かってたよ。本気で嫌がる事、りりかにすると思うの?」

あたしは、無言。


「昨日はYさんの家に泊まっちゃったしさ。みんなもいたし。ゆっくり、一緒にお風呂に入って、いちゃいちゃしたかったの。それもだめなの?」

「じゃぁ、行く?」

かなり、投げやりな言い方になっちゃって。

あいつもカチンと来たらしい。

「じゃー行く?はい、行ってくれますか?何て言うと思うの?ばかじゃん。もう今日はいいよ、行かないよ」

ため息混じりに言われる。



で、あたしの家に。

「ひなちゃんの所に行くんじゃないの?」

「いちゃいちゃしたいなら、うちでも出来るし」

「りりかんちに行っても何もしないよ?今更いいよ。ひなちゃんの所に行かないなら、俺は帰るわ」

って、マジで車に乗ろうとした。

あたしは、あいつの腕を慌てて掴んで家の中に入れた。



あいつは、ボーっと座ってて、明らかに表情は怒ってて。

「俺は普通にりりかとくっついていたかっただけなんだけど」

って、小さい声で言った。

「だって、最近、卒業の約束の話しばっかりだったから・・・。一時期、ノイローゼになるかと思うくらいに、考えちゃって。だから、なんだか・・・そう言う雰囲気になるのを避けたくて・・・」

けど、あいつは怒ってるまま。




「ごめん。あたしも、くっついていたいよ・・・」

って言ったけど。

無言。だった。



「いちゃいちゃしよっか。卒業の約束は今日は出来ないけど」

「いいよ、やらない」

「あたしがしたいって言っても?」

「無理しないでいいよ・・・りりかは、分かってないじゃん。今まで、絶対に嫌だってりりかが言ってる事、俺やった?」

「してない・・・」

「でしょ?でも、信用ないんだよね、俺って」

「そんなことないよ・・・」

「いいよー、マジで今日は。次会うまでには機嫌も直ってるよー。今は凹んでるだけだから、気にしないで」



気にするに決まってるじゃん・・・。



本当に、凹んでいる表情で。

暗いし、どこかボーっとしてるし。

なんだか・・・凄く、悪い事したなぁって。

何で、あたしはこの人の今までを信用しなかったのかなぁ。

嫌だって言ったら、させないって、そう言う人だって、知ってたじゃん。




「ねー。あたしが、本当にしたいの。だから、エッチしようよ」

嘘じゃない。

本当に、そう思った。

凹んでいるままの、この人見てるくらいなら。

あたしは、したいって思ったし。




「今、こんな凹んでいる状態で、気持ち何か入らないよ」

「入らないでもいいよ」

「は?」

「気にしないから。いいよ?」

「・・・。ふーん。分かった、気持ちが入らないままでいいんだ?」

「うん」

「俺の好きなようにやっていいんだ?」

「うん、平気。気持ちが入ってなくても、平気」



気持ちが入ってないセックスなんて。

今まで何度もして来たよ。

だから、平気。

慣れてるから。

気持ち何か入ってなくても。

性欲のためだけに使われる、なんて。

日常茶飯事だったんだから。



日常茶飯事、だったのに。

なのに。

心臓が、キューっとしてきた。




あいつの手が、あたしの胸に来た時。

凄く、怖くなって。

あいつの首に、思わずしがみついちゃって。



日常茶飯事、だったくせに。


慣れって、怖いね。

愛されてるって、自分本位じゃなくあたしのためにって。

そういうセックスしか、してなかったら。

怖くなっちゃった。



あいつは、そのまま。

手を、あたしの背中に回して、抱きしめてきた。

そして、頭を撫でてきて。

「ごめんね・・・。ふてくされて、ごめん」

って言って。

「出来るはずないじゃん。気持ち入れないで、なんて出来るはずないじゃん」

出来るはずないじゃん。

って、何度も何度も繰り返して。




その言葉を繰り返されるたびに。

あたしの恐怖で縮んでいた気持ちが、溶けて行くようで。



あたしは、泣きだした。




「泣かないでよー・・・ごめんねってー・・・」

何度も何度も、謝って、あたしを抱きしめる。

あたしも、頷いて。でも泣いて。





そのまま、腕枕されたまま。

たくさん、話した。

卒業式の後の、友達との会話とか。

昨日の、飲んでいるときの話とか。

話している途中。

あいつのお腹が鳴って。



「ひなちゃんのとこに、いこっか?」

って、あいつが言ってきた。





雨が降っていたから、あいつが傘を持って歩いて行った。

傘を持っている、あいつの腕にあたしがしがみついて。

「重いよー。ぶら下がらない!」

なんて。

笑いながら。

話しながら。

寒かったけど、平気だった。

楽しかったよ。





妹の所について。

妹が「遅かったねー」って。

あたしとあいつに、手紙を書いたんだって。

渡してきた。

あいつへの手紙に。

「りりかちゃんは、まだまだたまに寂しい病に掛かっているようです。
 早く、一日でも早く、りりかちゃんを迎えに来てあげてください」

なんて、書いてあった。




あいつは、明日からまた、朝早く仕事。

だから、10時過ぎに出発した。

「ついたら電話するわ」

って、窓越しに手を振って。

あたしは、見えなくなるまで、見送って。




いろいろな事が、会った一日。

余り会えなくなった分。

濃くなったのかなぁ、密度が。



喧嘩っぽくもなったけど。

本当に、楽しかった一日。



そんな一日を思い出して。

また、涙が出てきちゃった。



「無事についたよ」

って電話が来たとき、あたしはまだ泣いてて。

「何で泣いてるの!?無事だってー。どうしたー?」

って。



会えなかったら、それはそれで、寂しいけど。

会った後は、会っていた間の事を思い出して。



もっともっと、寂しくなっちゃうんだよ。



って言ったら。




「悲しまないように、ひなちゃんからの手紙にも書いてあったけど。一日でも早く、おいで。俺のとこに」



泣いてたからかな?

声が、でなかったよ。

「うん」

って、言いたかったのに。


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