明日は、あたしもよく知ってる、元バイトの子が、あいつの実家に遊びに行く。
と言うのも、その子の実家が、あいつの住んでいる県と隣同士で、帰るついでに・・・と言う感じみたい。
あいつは、それはそれは喜んでて。
「新幹線で、わざわざ降りなきゃならないのに、来てくれるなんて嬉しいよねー」
って、あたしに何度も言ってた。
けど。
夜、あいつから暗い声で、着信。
「どうした?」
「明日・・・残業になっちゃってさ・・・」
「あらら。明日はYくんが行くはずだったのにね。どうするの?」
「何時に帰って来れるか分からないから、断ったよ・・・。てか。前々から13日は友達が東京から来るから、早く帰りたいって言ってたのに、前日に、しかもさっきそう言われたんだよ・・・」
「そか・・・残念ね・・・」
「残念とか言う言葉で、終わりたくなくて。さっきまで親とけんかだよ・・・。そんなに言うなら、休めばいいだろ!!って言われたけど、そんな気持ちで飲めるはずないだろ!!っていい返したりしてさ・・・」
「仕方ないよねぇ・・・仕事だし・・・」
「なんだか・・・いろいろな事我慢してばっかりでさー・・・疲れちゃったよ」
あたしと会う事もままならない上に。
一度残業で、会う事が潰れてたりして。
友達と飲める、なんて言うのも、楽しみにしてたあいつは、相当凹んでて。
「17日に、Yくんとは飲めるじゃない?それでいいじゃない」
「うん・・・さっきYさんには、17日に。って言ったよ・・・」
「凹まないのー。仕事なら、仕方ないよ。あたしだって、仕事が遅くなったりして、約束とか潰れちゃったことあるけど、それは仕方ないよー」
「はぁぁぁぁ・・・」
ため息ばっかりつくあいつ。
確かに、1ヵ月半働いて、休みが2回って言うのも、少なすぎるしね・・・。
その2回が、2回とも用事があって(お姉さんの結婚式と学校の用事)、一日フリーな休みってないしね・・・。
「辞めたくなっちゃった?」
「一瞬考えたけど、今は思ってない」
「そか、ならよかったよ」
「親と喧嘩しているときに、親に言われたんだよ」
「何て?」
お父さんに。
「お前が将来、りりかさんと幸せになるためにも、経済的にも安定したいし、頑張るって言ったんだろ。それを、そんな飲み位で弱音吐いてどうするんだよ?お前の頑張るは、その程度か?」
って言われたらしい。
「そう言われたとき、ああ、そうだ。俺はりりかを幸せにするために、頑張ってるんだ。どんな事があっても、りりかを幸せにするために、頑張るんだって決めたんだって思い出したよ」
「そんな大事な事、忘れないでよー」
「うん、ごめん(笑)けど、だから辞めてやるかなーって一瞬考えちゃったけど、こんな始まったばかりの頃から、そんな風に考えちゃだめだって思った」
「うん、そうだね。Hは、頑張ってるなぁって凄く思うよ。だから、偉いなぁって思う」
「もしも、俺が仕事仕事で、こうやって会える時間が余りなかったり、会えなかったりしても、りりかは嫌にならないで、ずっと俺の味方でいてくれる?」
「もちろん!」
「そっか、なら安心した。うん、ありがとね」
弱っているなぁって、思った。
すごく、弱弱しい声で、不安を口に出している。
今までが、お気楽な学生で、遊んで暮らしてて。
しかも5年間も。
親も離れてて、うるさい事も言われないで、好き勝手してて。
こうやって、今は好きな事どころか、前前から立ててた予定さえも、だめになる。
実際、辛いんだろうなぁって思う。
けど。
今まで甘やかし放題にしてきたあいつに対して、お父さんが。
ものすごく厳しくなったのも。
あたしの事とかが、あるからなんだろうなぁって思った。
幸せにするために。
あいつは、よくそう言うけど。
そのためだけに頑張っているあいつが。
なんだか、可哀想になる事も、ある。
もしも。
あたしが、「やっぱり君とはだめだ、一緒になれない」とか言い出したら。
あいつって、どうなるんだろう?
仕事は、辞めちゃうのかな・・・。
だらだら、親に食わしてもらう生活に、逆戻りかな・・・。
そんな事ないかな。
そこそこ、頑張って今のまま、仕事も続けるのかな・・・。
よく分からないや・・・。
あいつの気持ちは。
素直に。
嬉しい、けど。
たまに、重く感じる事も、あったりする。
そう言う風に感じちゃうのって。
いけない事なのかな。
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