march forward.
りりかの独り言。

2003年03月06日(木) 卒業合否

朝七時に起きて。

自然に目が覚めた時に、あいつが横にいる不思議。

あたしが洗面台で顔を洗ってたら、あいつも起きたらしく。

「おはよ」

って言われる。


最近は、「おはよ」は、メールの中だけだったから。

不思議な感覚に、またなる。



一日たっぷり、時間がある。

それは、ものすごく嬉しい。

ただ。

あいつの学校の用事・・・。

それは。


卒業の合否発表。


あいつは。

「大丈夫」

を連発するけど。

数日前にあいつが言った事が頭から離れない。




「卒業できなかったら・・・慰めてね」

「は?」

「卒業だよー、出来なかったら、慰めてねー」

「いやいや。出来ない恐れがあるの?100%平気、とか言ってきたじゃん!?」

「ううーん。テストの状況次第なんだよねぇ」

「ちょ、ちょっと待って!平気って言ってたよね?ぶっちゃけ、確率はどれくらいなの?」

「うーん。五分五分」

「はぁぁぁぁ???んで、もし出来なかったら六年生??」

「いや、やめるよ」

「ばーーーーーーか!!!!!!」



あたしがあまりにも動揺してたら。


「うそうそ、冗談だよ、大丈夫だって」

って言ってきたけど。

それはあたしの動揺を失くすために言ってるって事が、バレバレ。



確かに、後期のテスト、受け損なったのがあったなぁ。

レポートとして出したんだっけ・・・?



あたしと過ごしてしまった、親御さんから頂いたラストチャンスの一年。

これで出来なかったら、明らかにあたしのせいではないでしょうか?




また、朝からそんな事を考え出して、止まらなくなる、あたし。

モーニングを食べながら、聞く。

「ねぇ。学校、何時くらいに行くの?」

「昼くらいまでには」

「大丈夫かなぁ・・・」

「俺を信じろって」

「出来ないよー・・・」

「とりあえず、これ食べたら行こうか?」

「どこに?」

「学校」

「は?あたしも?・・・やだ!行かない、あたしは待ってる。結果だけ連絡して!!!」

「そんな事言わないでさー」




結局連れて行かれる。

ほぼ、一年ぶりのあいつの大学。

去年来た時は、桜を見に来たんだった。

あいつの元住んでいた家の近くのファミレスに車を停める。



今日は、どんより、曇り空。

ものすごく寒いし。

去年と同じ道を歩いているのに。

足が重い。

これは、決してあたしが一つ年を取ったせいじゃなく、結果を見に行くのが嫌だから。



「歩きたくない・・・」

ここは本当に坂道が多くて・・・。

重い足にはこたえる。

「ねぇ、歩きたくない。疲れちゃったよ。ここで待ちたい」

疲れたのは、本当。

でも、歩きたくないだけじゃなく、行きたくない。

結果をリアルタイムで知りたくない。



あたしの中では、もうほぼだめなんだろう、と思って。

あいつは自信家で。

けど、その自信家が五分五分だと言う時点で、かなり自信がないんだろう、と。

だから、怖くて仕方ない。

どんどん歩くスピードが遅くなる。

止まっちゃうんじゃないか、と思うくらいに、のろのろ歩く。



「ほらー」

あいつがあたしの手を握って、あたしを引っ張る。

あたしはわざと、またゆっくり歩く。

手がどんどん、引っ張られる。

あいつが止まって、今度はあたしの後ろに回って、あたしの背中を押す。

「おぶってやろうか?」

ニヤニヤしながら聞いてくる。

「疲れたより、見に行くのが怖いんだよ!」

年寄り扱いするな!とふてくされる。





学校に、ついてしまった。

あいつは、あたしの手を握ったまま、どんどん歩く。

あたしは「寒い」を連発する。

寒い、から、どこか暖かいところで、座って待っていたい。

結果だけ、教えてくれればいいから・・・。

こんなところに来ちゃってまで、まだあたしは駄々をこねる。

「寒い」って言ったあたしの手を、普通に自分のポケットに入れる。

若い大学生の子たちが、たくさんいる中で。

あたしは恥ずかしくなって、手を離す。

また手を繋がれないように、慌てて自分のポケットに入れる。




またのろのろ歩くあたしの腕を、強制的に捕まれて、進んで行くあいつ。

「ね・・・大丈夫だよね・・・」

近づいて来る結果に、怖くなって、何度も聞く。

「大丈夫だよ」



すっごく、優しい声で、あいつが言うから。

あたしは、逆にますます不安になる。

もっと強い口調で、「大丈夫だって言ってるじゃん!」とか言ってくれたら、逆に安心できるのに。

もしかしたら、あいつも、あいつ自身に、言ってたのかもしれないね。





「法学部はこちらです」

と言う看板の前で止まる。

何か、紙が張られてて。



え、え、どれが結果なの??

あたしは、あいつを見る。

あいつは黙って、少し笑って。

その笑顔は何?

と、あたしはパニくる。




「ごめんりりか」




なに・・・?

ごめんて、何?



完全に、訳が分からなく、なる。












「もうちょっと歩かなきゃ、だ」

「は?」

「ここじゃなかった」




看板に書いてあったのは、法学部の発表の部屋、らしい。

なんだよ、もーーーー!!!




通り過ぎる学生たちが、みんな手に紙を持っている。

「あれ、卒業出来る人たちがもらえる紙?」

「え?ああ、違うよ、あの紙に合否が書いてあるんだよ」

「そーなの?張り出されるものじゃないんだ?」

「違うよ」

なんだ・・・。

高校とかの、合格発表みたいなの、想像してたよ。





で、ついた先で。

あたしは、廊下の長椅子に座って待った。


座って。

手を握って。

下を向いて。



もしも、神様がいるのなら。

お願いします。

あたしの大好きな人を。

卒業させてください。



神様も怒るかな。

こんなくだらない事、聞いてられない!って。



でも、真剣に祈ってた。


お願いします。

お願いします。

お願いします・・・。





数分待って。

あいつが、紙を持って来た。

あたしは、ゆっくり顔をあげる。

「ど、どう?」

「はい」

あいつがあたしに紙を渡す。

その紙を見たとき、「あ、この紙、去年あいつの部屋で見た事あった」と思い出したりした。




紙の横の方に。




「卒業 合格」

の、文字。


それを見つけたと同時に、あいつの声。

「合格です」




あたしは、本当は立ち上がって抱きつきたかったけど。

もう、力が抜けちゃって。

馬鹿みたいに、手を叩いて。

「おめでとーーーーー。よかったぁぁぁぁ」

涙目で、あいつを見上げた。



「だからー、大丈夫って言ったでしょ?」

「もぉぉ、だめだと思ってたの・・・。よかったぁぁぁぁ」

「信用ねーなー」



あいつが隣に座って、あたしの頭を撫でて。

一緒に紙を覗きこんでくる。



「ほら、こんなにたくさん単位取ったんだよ。こんなに超えてるじゃん?」

よく分からないけど、14単位多く取ったんだって。




ホントにホントに、よかった・・・。

これで、本当に学生、じゃなくなるんだね。




友達に。

「りりかの彼氏って何してる人?」

「学生・・・」

って言わないで済むように、なるんだね。



なんて、そんな事はどうでもいいんだけど。

本当に、安心しました。



よかったね。

おめでとう!


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