(昨日の続きです)
学校を後にしたあたしたちは。
それはそれは浮かれて。
何度も何度も、「卒業合格」の文字を読んで、二人で笑って。
あいつは、実家やお父さんに電話をして。
あたしも、ここまで全部をしってる友達(Mさん)や妹にメールして。
みんなが「よかったね」と言ってくれた。
車で、ブラブラ走って。
ちょっと遠いけど、車を走らせてあいつの行きたがっていた場所に行く。
ある施設の見学なんだけど。
あたし、笑ってばかりいた気がする。
嬉しくて嬉しくて。
見学コースの説明とか、全く聞いてなかった気がする。
それでも、楽しくて。
何でも、楽しくて。
繋いでいる手を、まじまじ見つめちゃったり。
説明を熱心に聞く、あいつをじっと見ちゃったり。
今日はいい事ばっかりだ。
なんて思ったりして。
夕方、妹と合流して、夕食。
あいつは、9時くらいには出るって言うから。
6時に待ち合わせして、2時間くらい、3人で夕飯しながらおしゃべりする。
この3人で集まるのも、久しぶり。
1ヶ月ぶりくらいかな。
妹にも「おめでと、よかったね」って言われて。
あいつも「ありがとうございます」って満面の笑み。
何か、妹が携帯をいじってて。
その間、あたしはあいつと話してたんだけど、あいつにもメールが届いたようで。
2人とも携帯をいじっているから、つまらなくて。
あたしは、「つまんなーい。あたしも誰かにメールしようかな」とかいって携帯を出したりして。
そしたら、あいつが携帯を見せてきた。
「ほら」
って、見せるから「なによー」ってちょっとふてくされた振りとかしてみた。
受信は全部妹。
「は?」
「だって、ひなちゃんからりりかの写真が送られてきたんだもん♪」
いつ撮ったやつよ??って見たら、たった今。
全く撮られてるの気づかなかった・・・。
「何で写真なんか撮るのよ・・・」
「だって、りりかちゃん、ニヤニヤしてばっかりいるんだもん♪」
あたしが、つまらないって言うから、面白がって二人でメールをしてたらしい・・・。
遊ばれてるなぁ。五歳下の二人に。
「私は、そろそろ帰るから、後は残った時間を二人でゆっくり使ってね♪」
妹が気を利かせる。
あたしは、恥ずかしさの余り。
「昼間ずっと一緒にいたんだし、いいよぉ」
って言ってるんだけど、あいつは普通にニヤニヤしてるだけだし・・・。
妹はさっさと帰って行ってしまった。
「俺たちも出るか」
「んー。だねー」
お会計の時。
「今日は卒業祝いって事で、あたしが出すね」
って言った。
あいつは。
「いいよー、卒業祝いはさー・・・」
とかなんとか、言ってたけど(詳しい話しは、明日の分で書きます)、押し切ってあたしが払った。
払った時「これでチャラになったと思わないでね」とあいつに言われたけど・・・。
あたしの車に乗る。
「ホントに、よかったね」
あたしが言う。
「うん、よかったよー。高卒になるか大卒になるかの違いは大きいからねぇ」
確かに。
しかも、彼の場合は5年も通っているんだし、出来なきゃ・・・ねぇ。
あたしたちが外で会うときは、雨って言う日がなくて。
今日も曇りだったんだけど、雨が降り始めてた。
今日は、ものすごく寒くて。
「もうすぐ、行かなきゃ?」
「うん、向こうは雪が降ってるかもしれないしね」
「そか・・・。次は、卒業式の日だね・・・」
「ん。そうだなー」
「あたしも、来週は休み無しで忙しいから、ちょうどよかったよ、気が紛れるよ」
「うん。がんばろうね。お互いにね」
あいつは、いつもこうやって。
「頑張ろう」
って言ってくれて。
あたしは、その言葉が、凄く安心出来て。
「一緒に、頑張ろう」
何度も何度も、いつも言ってくれてるよね。
そう、頑張るのは、あたしだけじゃない。
あなたも、一緒に頑張ってくれてる。
そう思えるから、あたしは、その言葉が好きで。
いつの間にかね。
仕事場でも「ほら、頑張ろうよ!」って言えるようになったよ、自然に。
初めて、頑張ろうって言ってくれたのは、あたしの生理が来なくなって、病院に通っているときかな。
頑張ろうって、言ってくれたんだよね。
俺は、楽しい事を提案したり、話を聞いたり、愚痴を聞いたりしか出来ないけど、少しでも力になれるように頑張る。
だから、りりかさんも頑張ろう。
どれだけ、あたしが救われたか。
一人で、頑張らないでいいって。
どれだけ、楽になれたか、分からないよ。
「雨、強くなってきたね」
「うん、俺もそろそろ行くよ」
「うん・・・」
あたし、寂しい顔しちゃったかな。
分からないけど。
珍しく、あいつが口じゃなくて、おでこにキスをして来た。
「りりか、大丈夫だよ」
頭を撫でられる。
何が、大丈夫なの?
聞こうと思ったけど、やめた。
寂しいかもしれないけど、俺はりりかだけだから、大丈夫だよ。
そんな意味あいだと思うから。
だから、頷いてみる。
帰り際、寂しくなるのは仕方ないけど。
今日は一日とっても楽しかったし、嬉しかったから。
よしと、しよっか。
「気を付けてね」
笑顔で頷いて、あいつは走って自分の車に乗った。
それから2時間半後。
「今ついたよ。雪が降ってるよー」
ってメールが来た。
こっちは雨のまま。
やっぱり、たった二時間半の距離でも、違うんだなぁって。
しんみり思ったよ。
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