今日、ライラが通っていた保育園から、電話が来た。
ライラがやめる前までに作った作品やお絵かきを、取りに来て欲しいということだった。
もう、3月。
クラスも来月から上がるから、毎年この時期は、1年間作ってきたものとかを配られる。
職場から車で15分のライラが通っていた保育園。
家からはちょっと遠いけど、職場からは近いから、ものすごく送迎が楽だった。
そんな事を思い出しながら。
久しぶりに、保育園の門をくぐる。
ライラがやめたのは、急だったから。
渡せずじまいだった、と先生は謝ってきた。
今回みんなの分の作品を綴るのに、ライラの分も一緒に綴ってくれたと言う。
ライラの名前が書いてある、ピンクの画用紙が表紙。
名前の下には「進級おめでとう」の文字。
本当なら、来年は年長さんとして、この保育園から卒園して小学校に入学するはずだった。
帰宅して、中を開けた。
4月から9月までの。
ライラの作品たちだった。
ライラはおねえちゃん二人の影響か、女の子や動物を書くのが好きだった。
女の子っぽい絵を書く子だった。
たとえば。
「ウサギを書いてごらん」
と、男の子、女の子にそれぞれ言うとすると。
本来理系の男の子は「ウサギは目が赤い。尾は丸くて・・・」と、実写的に書く。
文系の女の子は「ウサギさんがお洋服を着ているの」と、二本足でリボンとかを付けて立っているウサギを書くと言う。
でも、ライラは「お洋服を着ているウサギ」だった。
本当に女の子っぽい子だったから。
心配してた事もあったけど。
「優しい子なんだから、いいじゃん」って思ったりした。
一枚の絵が、目に止まる。
人物5人の絵。
先生が加え書きをしてくれたらしく。
「パパ・ママ・○○(長女)・○○(次女)・ライラ」
とあった。
家族五人の、絵だった。
絵の中のあたしたちは。
それぞれ違う色の風船を持っていて。
本当に、上手に書けていて。
なんだろう。
凄く、悲しくなった。
ライラが書きながら話している様子が、目に浮かんで。
「ママはね、赤が好きなの。だから赤い風船なの。パパは男だから、青。ライラは水色が好き。お姉ちゃんたちはー・・・」
この作品。
あたしが持っててもいいよね。
自分に、聞いてみる。
あたしが、持っていたい。
どうしても・・・。
だから、元だんな様には、内緒にする事にした。
その絵を。
携帯のカメラで撮って、待ち受けにした。
本来なら。
この絵のままの、家族五人の状態でいなければならなかったんだ、という事を。
忘れてしまわないように。
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