あたしの、結婚生活は。
感情を殺しながらの、毎日だった。
だんな様は。
あたしが泣くこと。
怒る事。
悲しむ事。
笑う事でさえ。
みっともないと言ってきた。
だから。
あたしは、感情を殺す事になれた。
なれてた。
けど。
あいつは、あたしに思う存分、そう言う感情を出してくれていいよっていう。
そして、少しづつ、感情を取り戻したあたしは。
こうやって、思ったままに悲しんだり、笑ったりする事が、凄く楽で、幸せな事だって気づいたんだ。
今日は、お父さんが来て、荷物を実家に運んだ。
後は簡単な掃除だけ残ってて、それやったら終わりだって。
でも、夜になって、荷物がなくなって、布団もない部屋で一夜を過ごすのは寒いからって、友達の家に行くって言ってた。
そんな話を電話でしてた。
「明日の新年会、りりか泣く?」
「泣かなーい」
「嘘つけ、泣くよ」
「泣かないって」
こんな会話の繰り返しをした。
あたしだって、泣いちゃうかもしれないって、自信がなかった。
けど、泣くよーって言われると、天邪鬼なあたしは「泣かない」を連発する。
そのうち。
「いや、泣くね。泣かせてみせるね」
とか言いだすあいつに、あたしはふと疑問。
「ねぇ・・・。何、泣いて欲しいわけ?」
「そりゃ、自分の事で泣いてくれたら嬉しいでしょ」
あたしは、何だかため息が出ちゃって。
「そか。なら、泣くかもね」
と言った。
こう言った瞬間。
何だか、一気に疲れが出てきちゃって。
泣くのは、恥ずかしいことじゃない。
それも、自分の感情の一部何だから。
でも、強要されてまで、泣きたくない。
それは、自分の感情じゃないから。
あたしは、「ここで泣くんだ!」って演技させられている、女優じゃなければ、「ここで泣いたほうが効果的かも」と思う演出家でもない。
自分のために、泣いてくれるのは嬉しい。
それは素直な感情だね。
誰だって、自分がいなくなるって言う理由で、泣かれたら嬉しいだろうと思う。
しかも、好きな人に。
「行かないで!」って泣かれたら、嬉しいだろうね。
けど。
わざわざ、「泣かせてみせる」とまで言わないでも。
泣かれるのが嬉しいから、泣かせてみせる。何て言わないでも。
と、あいつの子供っぽさを、客観的に分析しちゃったりして。
妙に、落ち着いちゃったりして。
元々、明日お別れ。
って言う実感がなかったのに、拍車を掛けて、感情が一気に消えて行き。
全然、悲しくも、寂しくも、なくなった。
そう。
感情がなくなったんじゃなく。
悲しいとか。
寂しいとか。
そういう気持ちじゃなくなった。と言うほうが適切。
今は、悲しくないし、寂しくない、落ち着いた感情。
と言ったほうが、適当。
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