朝起きて携帯を見る。
あいつからバイトの休憩中にメール来てた。
受信時間はAM1時。
「こんなところで初雪見たくなかったよー」
え?
あわててカーテンを開ける。
真っ白。
まだまだ降り続いている。
とにかく支度をしなきゃ、と用意を始めているとき、あいつからの着信音。
「もしもし?」
「今さっき終わって、駅まで来たら、電車止まってるし、凄い人だし・・・歩いて帰るよー」
「大丈夫???」
「平気平気。りりか、銀行俺が運転して連れて行くから、待ってて」
「いいよー、平気だよ」
「だめだめ。俺の車スタットレスだから、俺の運転で行く。何かあってからじゃ遅いの!」
「だって、寝て無いじゃん、しかも歩いて帰って来てるんだよね?」
「タクシーでもどっかでつかまえるから。とにかく待ってて」
「うんー・・・」
仕事中、メールが来た。
「銀行に行く時間に間に合うかなぁ。タクシーが全然いないんだよー」
「だから、あたし行くって。行けるって。大丈夫だよ」
店頭の雪かきをして。
銀行に行く時間になって、やっぱり間に合わないよね、と思って自分の運転で行こうと思ったら、電話。
「今家を出たから。待ってて、あと15分くらいかな」
「えー、いいよー、今行こうと思ってたの」
「もう出ちゃったんだし。待ってて!」
あいつはこの雪の中を飛ばしたんだろうなぁって速さで来て。
「間に合ったー」
と笑顔で言った。
「ありがとね・・・寒かったね」
「いやいや、寒さより、時間との戦いだったね!やべー、間に合わない!って」
あたしがあいつの顔を見ると、鼻が赤くなってて。
目が合って、いきなりキスされた。
昼間っから!
「!!!何!?」
「お礼としてもらいたくなったの」
「はー?」
「さー、りりかを送ったらりりかのところで飯食って、学校行くぞー!今のですげー元気出たし」
「安上がりー・・・」
雪はどんどん降って来て。
前が見えないくらい。
「今日は出かけられないね・・・」
「うん、ならあたしが君の家に行こうか?」
「バカ!なんで夜の凍っている道をわざわざ来させるんだよ。俺が行く」
「どこに?」
「りりかの家」
「え?で?」
「一緒に過ごすんでしょ、1年目」
「うんー・・・」
「何で?嫌?」
「嫌じゃないけど・・・」
そしたら、うちに泊まるんだよね?
って言う言葉は殺して。
いいんだけど・・・ね。
なんだか、泊まらせるのって、なんだか・・・と思ってしまう。
それを察したらしくて。
あいつは。
「なら、今日は運転も危ないし、二人とも家でゆっくりメル友になろうか?で、明日天気がよかったら、明日でかけようか?」
「うん、そうだね。明日にしようか」
ちょっとホッとする、あたしがいた。
ごめん、なんとなく、泊まらせるって事に軽い抵抗があって。
具合が悪いときとか、そう言うときに結果的に泊まった事はあったけど。
あたしが泊まりに行く分には抵抗ないのになぁ・・・
夜は、いっぱいメールした。
眠くないの?
って聞いたら、学校で寝たからねーって返事。
何しに行っているんだか・・・。
雪は夕方でやんで。
夜には雨になったせいもあって、ほとんど溶けちゃってた。
あたしは、1年前の事を、いろいろ思い出してた。
今と、あの時と。
どっちが幸せか?って聞かれたら。
比べようも無い。
と、思った。
ただ。
ここまで誰かに愛される。
こんなに他人を愛せる。
そんな感覚は、きっと、あいつと出会ってなかったら、知りようが無かったから。
知る事が出来た分。
幸せだと思おう。
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