腫れはほとんどなくなって。
あざは薄い青に変わってて。
でも、化粧してもやっぱり目立つ。
今日もあたしは、厨房のお仕事。
こんな顔じゃ、接客は無理だからね・・・
普通に仕事こなしてて。
休憩に入ったとき、仲よしのMさんが入ってきた。
ちょっと、あわて気味に。
「どうした???なんかあった???」
「りりか、H君、来てるよ!」
あたしは、呆然とする。
別にあいつが店に来る事は、何度かあったし、そんなに珍しいことじゃないけど。
でも、今回は会えないよ・・・
「あたし、いないって事にしてよ・・・」
「もう、他の子が休憩中って言っちゃったよ・・・どうする??」
「どうしよう・・・」
のろのろしてたら、メールが来た。
「ゆっくり食ってますから、休憩終わったら顔出してくださいね。もー、しばらく会ってないから、会いたくなっちゃって・・・」
笑顔の絵文字と一緒に。
あたしは、うろたえて。
携帯片手に、歩き回って。
「ねー、どうしよう・・・」
弱弱しく、彼女に聞く。
「・・・仕方ない。もう、行くしかない。話すしかないよ」
彼女はあたしの顔を見て頷く。
「大丈夫、今は仕事中って言えば切り抜けられるでしょ。帰りに話す事にしよう。帰りは、私も付き合うから」
とにかく、休憩を終えて、店にいるあいつを確認。
ばっちり、厨房が見える位置に座ってて。
あたしは、厨房の中から手を振る。
遠目になら、ばれないと思って。
笑顔で小さく手を振り返してくれて。
でも、手招きされる。
あたしは、仕事が忙しい、とジェスチャーして、首を振る。
気付いちゃったかな、気づいたのかな・・・
ドキドキした。
気付いてないよね・・・平気だよね・・・
手が震えた。
Mさんが、あいつの所に行って、なんか話してた。
「大丈夫、気付いて無いよ。りりかのシフトを聞かれただけ」
ものすごくホッとした。
・・・けど。
「あさって休みだって知ってたよ?」
そうだ、言ってあったんだ。
「会う約束とかしてたの?」
「まだ・・・」
「なら、日曜だし、私と会おう!たまには買い物でも付き合って」
本当に心から感謝した。
もうちょっとあいつと普通に会ったりするのは。
先かな・・・
あいつは帰り際、目が合ったあたしに、また小さく手を振った。
あたしも手を振り返した。
ドキドキしたまま。
帰るとき、あいつからのメールを読む。
「お疲れ!話は出来なかったけど。顔を見れただけ、よかったです。電話待ってます」
ごめん・・・ね。
なんだか、苦しくなっちゃったよ。
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