あたしは、朝から張り切って、お弁当を作って。
昼前。
あいつが迎えに来てくれる。
ライラは覚えてたんだ。
「あー。あのお兄ちゃん!」
って、言ったんだ。
あいつは、覚えててもらった事に、喜んで。
あいにく、寒くて。
曇っているし。
だから、室内型の遊園地に行く事になった。
ライラはここに来るの、初めてで。
あたしは、上の子たちがまだ小さいころ、来た事あったんだけど。
大して面白くない割りに、高いから、ずっと来なかった。
でも、ライラは凄く喜んでくれて。
「Hくん、Hくん。これ可愛いねー」
あいつを、ライラが呼んで。
「ライラ、こっち見てみなよ」
あいつも、楽しそうに、話しかけて。
「ママのお弁当、おいしいよね」
2人であたしに言ってくれる。
こんなに、幸せな事が、あってもいいの?と思うくらいに。
あたしがずっと笑顔で。
ライラも、あいつも、ずっと笑顔で。
ショーを見るとき、あいつがライラを肩車して。
あいつは背が高いから、ライラも大喜びだった。
「ママってちびー」
ライラが、あいつの肩車の上から、言う。
「ねー、ママチビだよねー」
あいつも、笑いながら言う。
たくさん遊んだ。
あたしは途中で疲れて。
「座っていたいよー。休憩しようよー」
って言ったりする。
ライラは「いや」って言う。
あいつにしがみついて、「Hくん、ママなんかおいて、あっち行こうよ!」って、誘って。
あいつも、嬉しそうに。
「じゃー、行って来るわ」
って、あたしに手を振る。
「これ買ってもらっちゃったの」
ライラがおもちゃを手に戻ってくる。
「欲しいって言ったんでしょ?」
あたしが聞くと「ううん。一個だけいいよって言ったんだもん」て、ライラが反論。
結構高そうだし。
「あたし払うよ」
って言っても、「俺が買ってあげたいんだから、いいの」と言われる。
「だって、ライラ、9月に誕生日だったんだもんねー」
「誰に聞いたの?」
「ライラが教えてくれたんだよ」
帰り道、「明日はどこ行く?」と、あいつが聞いて来た。
あたしは、びっくりして。
「いいよ、明日は」
って言った。
あいつは、今夜24時から朝の5時までバイトだったから。
明日はさすがに、無理だろうと。
でも。
「じゃ、昼過ぎから行けるとこ、探すから。それまでは、バイトから帰ったらちゃんと寝るから」
とか、逆にお願いされる。
「なら、あたしが運転するから」
ていうことで、納得させる。
家について、お風呂に一緒に入って。
そのとき、ライラに言われた。
「ママ、H君と一緒にいつもいるの?」
ドキッとした。
「いつもはいないけど・・・よく一緒にいるかな」
「H君、優しいね。ライラ、好きだなぁ」
「そか、うん、優しいね」
「ママも、好き?」
「・・・うん」
何気ない風に聞いたんだろうけど。
凄く意味深に聞こえて。
あたしはドキドキしっぱなしで。
お風呂から出て、ライラは疲れて、すぐ寝てしまった。
あいつは、24時からバイトだから、23時前には電話お願いって言ってたから。
あたしはパソコンして過ごして。
電話して起こす。
「おはよう、起きた?」
「ああ・・・はい、ありがとうございます・・・」
「今日は疲れたでしょ?ありがとう。バイトなのに、ホント、ごめんね」
「いえいえ。こちらこそ。凄く楽しかったから、いいですよー。ライラは?」
「寝ちゃったよ。ライラも疲れたんだねぇ。・・・明日、無理しないでいいからね」
「無理なんかするはずないし。そうそう、考えたんだけど、明日も天気悪そうだから、水族館に行きません?」
「うん、いいけど・・・本当に平気?」
「行きたいの!」
「ん・・・分かったよ」
今夜も、ライラと一緒に眠れる。
当たり前だった時期もあったのに。
すごく、もったいなく感じる。
今日が最後。
明日には、帰ってしまうから。
ライラの髪をなでながら、あたしの髪質にそっくりなんだよねーって、あいつに言った事を思い出す。
あたしは、ちょっとだけ、泣いてしまった。
このまま、ライラの寝顔を見て、起きていたい。
眠るのが、もったいないから。
ライラと過ごしている時間を。
寝てしまうのが、もったいないから。
そんな風に、考えてしまう。
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