march forward.
りりかの独り言。

2002年11月16日(土) もったいない夜

あたしは、朝から張り切って、お弁当を作って。


昼前。

あいつが迎えに来てくれる。





ライラは覚えてたんだ。

「あー。あのお兄ちゃん!」

って、言ったんだ。

あいつは、覚えててもらった事に、喜んで。



あいにく、寒くて。

曇っているし。

だから、室内型の遊園地に行く事になった。



ライラはここに来るの、初めてで。

あたしは、上の子たちがまだ小さいころ、来た事あったんだけど。

大して面白くない割りに、高いから、ずっと来なかった。

でも、ライラは凄く喜んでくれて。




「Hくん、Hくん。これ可愛いねー」

あいつを、ライラが呼んで。

「ライラ、こっち見てみなよ」

あいつも、楽しそうに、話しかけて。

「ママのお弁当、おいしいよね」

2人であたしに言ってくれる。




こんなに、幸せな事が、あってもいいの?と思うくらいに。



あたしがずっと笑顔で。

ライラも、あいつも、ずっと笑顔で。



ショーを見るとき、あいつがライラを肩車して。

あいつは背が高いから、ライラも大喜びだった。

「ママってちびー」

ライラが、あいつの肩車の上から、言う。

「ねー、ママチビだよねー」

あいつも、笑いながら言う。




たくさん遊んだ。

あたしは途中で疲れて。

「座っていたいよー。休憩しようよー」

って言ったりする。

ライラは「いや」って言う。

あいつにしがみついて、「Hくん、ママなんかおいて、あっち行こうよ!」って、誘って。

あいつも、嬉しそうに。

「じゃー、行って来るわ」

って、あたしに手を振る。




「これ買ってもらっちゃったの」

ライラがおもちゃを手に戻ってくる。

「欲しいって言ったんでしょ?」

あたしが聞くと「ううん。一個だけいいよって言ったんだもん」て、ライラが反論。

結構高そうだし。

「あたし払うよ」

って言っても、「俺が買ってあげたいんだから、いいの」と言われる。

「だって、ライラ、9月に誕生日だったんだもんねー」

「誰に聞いたの?」

「ライラが教えてくれたんだよ」





帰り道、「明日はどこ行く?」と、あいつが聞いて来た。

あたしは、びっくりして。

「いいよ、明日は」

って言った。

あいつは、今夜24時から朝の5時までバイトだったから。

明日はさすがに、無理だろうと。



でも。

「じゃ、昼過ぎから行けるとこ、探すから。それまでは、バイトから帰ったらちゃんと寝るから」

とか、逆にお願いされる。

「なら、あたしが運転するから」

ていうことで、納得させる。







家について、お風呂に一緒に入って。

そのとき、ライラに言われた。

「ママ、H君と一緒にいつもいるの?」

ドキッとした。

「いつもはいないけど・・・よく一緒にいるかな」

「H君、優しいね。ライラ、好きだなぁ」

「そか、うん、優しいね」

「ママも、好き?」

「・・・うん」



何気ない風に聞いたんだろうけど。

凄く意味深に聞こえて。

あたしはドキドキしっぱなしで。




お風呂から出て、ライラは疲れて、すぐ寝てしまった。

あいつは、24時からバイトだから、23時前には電話お願いって言ってたから。

あたしはパソコンして過ごして。




電話して起こす。

「おはよう、起きた?」

「ああ・・・はい、ありがとうございます・・・」

「今日は疲れたでしょ?ありがとう。バイトなのに、ホント、ごめんね」

「いえいえ。こちらこそ。凄く楽しかったから、いいですよー。ライラは?」

「寝ちゃったよ。ライラも疲れたんだねぇ。・・・明日、無理しないでいいからね」

「無理なんかするはずないし。そうそう、考えたんだけど、明日も天気悪そうだから、水族館に行きません?」

「うん、いいけど・・・本当に平気?」

「行きたいの!」

「ん・・・分かったよ」






今夜も、ライラと一緒に眠れる。

当たり前だった時期もあったのに。

すごく、もったいなく感じる。

今日が最後。

明日には、帰ってしまうから。




ライラの髪をなでながら、あたしの髪質にそっくりなんだよねーって、あいつに言った事を思い出す。

あたしは、ちょっとだけ、泣いてしまった。




このまま、ライラの寝顔を見て、起きていたい。

眠るのが、もったいないから。

ライラと過ごしている時間を。

寝てしまうのが、もったいないから。




そんな風に、考えてしまう。


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