今日、水族館に行こう!って言われて。
でも、ライラが来てるってしったら、妹も母も、会いたいってもちろん言って。
あたしは、あいつに謝った。
「ごめん」
「いいよ、仕方ないよ。そうだよね、俺ばっかり、ライラを独り占めしたら、だめだよね!」
明らかに残念がってたけど。
あたしは、実家にライラと帰った。
母も妹も、大喜びで。
ライラは、上がお姉ちゃんのせいか。
男の子にしては、おとなしいってよく言われる。
でも。
1ヵ月半会わないうちに、幼稚園の影響かな?戦いごっことかするようになってて。
あたしの弟と一緒に暴れてた。
夜。
だんな様が迎えに来るって言うから。
あたしは家に戻る。
だんな様は、家のまでライラを乗せて、すぐ帰るって言った。
だんな様が迎えに来て。
ライラに「楽しかった?」って聞いた。
ライラは「うん!ママのばーばの家に行ったよ。遊園地も行ったよ」って。
それで、ライラが持って来たカバンには入らなかった、あいつに買ってもらったおもちゃを、大事そうに抱えてた。
「どうしたの?ばーばに買ってもらったの?」
「ううん、H君に買ってもらったの」
そのとき。
だんな様がいきなり、取り上げて。
アスファルトの上に、叩き付けた。
プラスチックで出来ているおもちゃは。
粉々になった。
一瞬だった。
あたしも、ライラも、何が起こったのか分からなくて。
ぽかーんとした。
間をおいて、ライラの泣き声で。
あたしは我にかえった。
「何・・・。何するの!!?」
だんな様はライラの手を引っ張る。
ライラは泣き叫んで、だんな様の手をほどこうと必死になる。
そして、あたしに手を延ばしてくる。
あたしは、ライラを抱きしめた。
そして、だんな様の手から離した。
ライラはあたしにしがみついて大泣きで。
あたしは、もう一度言った。
大声で。
「何してんの!!!??」
目の前に光が走ったような感じがして。
殴られたんだ、と分かったのは、一瞬後。
あたしは、呆然として。
痛いとか、そんなのより、びっくりして。
「お前は・・・!」
また振り上げられた手は。
今度はあたしは顔をかばったから、腕にあたって。
その腕が反動で、抱えてたライラの頭にあたって。
あたしはライラにあたらないように、抱きしめた。
何度か殴られて。
あたしは、ライラを抱き上げて、部屋に逃げようと走った。
すぐに髪の毛を摑まれて。
あたしはそのまま、道路に仰向けに転んだ。
ライラを抱いているから、手とか付けなくて。
後頭部を思い切り打って。
そのまま、頭をボールのように蹴られ。
めまいがした。
ライラだけは離さないようにって、抱きしめて。
ライラもあたしにしがみついて。
でも。
力が入らなくて。
だんな様が、ライラを抱き上げた。
ライラは最後まで、あたしの服を掴んで、「やだやだ!!」と泣き叫んで。
結局、ライラはだんな様に取り上げられて。
あたしは、立ち上がった。
口の中が、血の味がした。
硬いものが口の中にあって。
手のひらに出して見たら、歯が欠けてて。
「まさか、本当に会わせるとは思わなかったよ。どこまで、俺をバカにしたら気が済むの?お前はもうちょっと、頭がいいと思ってたよ。普通は出来ないだろ」
ライラは泣きながら、「ママがいい、ママがいい!」といい続けてた。
だんな様は無理矢理車に乗せて。
「暴れたら、外に投げるぞ!」とライラに怒鳴って。
最後に、こういった。
「子供の事は、もう忘れろ。もう、会うな、連絡もするな。お前はお前で、好きにしろ。俺もしない。もう、これで、お前とは一生会うつもりもない」
あたしはその場に座りこんで。
粉々になったおもちゃを拾った。
アパートの住人が窓から覗いてて。
「大丈夫ですか・・・?」と恐る恐るあたしに声を掛けた。
あたしは、返事する元気も無く。
部屋に戻った。
鏡を見たら。
髪の毛はぼさぼさで。
片目は切れたらしく、真っ赤になってて。
口も腫れてて。
頬が熱かった。
涙は出てなかった。
粉々になったおもちゃを見ながら。
あたしは、試されたんだと。
やっと、分かった。
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