2002年11月09日(土) |
GIVE AND TAKE |
あいつは、ずっと待ってた。
携帯は電池がなくなってしまったらしい。
それで、電池を買いに、コンビニに行っている間に、あたしが来たからすれ違った。
「ごめんなさい」
車に乗ってからも、乗る前も、あたしは謝り続けた。
あいつは黙ってた。
「ごめんね、本当に・・・」
やっと、口を開いた、あいつの言葉は。
「何に対して、ごめんね、なの?」
遅刻した事。
飲んでしまった事。
と、あたしは言った。
「俺が怒ってるのは。これが普通の飲み会ならいいわけ。けど、違うでしょ。Kがいるんじゃん?でも、社員同士の飲み会って聞いちゃ、仕方ないかなって思うし。りりかさんから、22時に終わるから迎えに来てって言ったんだし。その上、酔わないって約束したのもりりかさんだし」
「酔ってない、酔ってない」
「顔、赤いよ?」
「そりゃ、ちょっとは飲んだから」
「隙が出来てたよ?」
「は?」
「さっきの電話のとき」
「隙なんか、出来て無いよ・・・」
「ケラケラ笑って、楽しそうに?俺行かなかったら、Kとどっか行っちゃったんじゃないの?」
「行くはず無いでしょー・・・」
あたしの家につく。
あたしが降りても、あいつは降りない。
「帰るの?」
「うん」
「そか・・・分かった」
あいつは、帰って行った。
あたしは部屋に入って、相当怒ってたなぁと思う。
そりゃ、そうだ・・
シャワー浴びて出てきたら、あいつから着信あり。
すぐに電話する。
「どうしたの?ついた?」
「とっくに」
「ごめん、シャワー入ってて・・・」
「うん」
「Kってさ、りりかさんが離婚したって分かって、ものすごく嬉しいだろうね」
「なんでよ?」
「だって、チャンス到来!とか思ってるんじゃない?」
「はー?」
「Kは、お気に入りじゃん。りりかさんが」
「いやいや、そんなことないって・・・」
「そう思ってるのは、たぶんりりかさんだけだよ」
この人のこう言う話が始まると、とにかく長い。
延々と責められる。
「たとえ、そうだとして。でも、あたしは、ありえないよ、安心して。あたしはHだけだよ」
「あのさ。あり得ないから、ならOKとか、あり得るから、ならだめとか、そう言う話じゃ無くないか?」
「?」
「りりかさん、逆の立場になってみな。俺の事すきって言っている女がいたとして。それで、りりかさんはその女と俺が飲みに行ったりするの、いやじゃないの?その女と飲みに行っているのに、遅刻されたりして、いやじゃないの?気持ちの問題でしょ。それで、りりかさんが早く帰って来る、または絶対に飲まない、とか。そう言うのみて、俺は安心するんでしょ」
言ってる事、よく分かるけど・・・
「りりかさんに、与えてばかりだよね、俺。りりかさんは、俺からいろいろなもの、与えられすぎて、もう麻痺しちゃってるんだよね。たぶん、俺は自分から離れて行かないって安心しすぎちゃって、俺には何もくれないんだよね?」
与えて無い・・?
そうかな・・・あたしは、あなたがすきって言う気持ち、いつも出しているつもりでいたけど・・・
「俺があげてる安心と同じ位の量の安心を、俺にもちょうだい」
あたしが、黙ったままでいたら。
「いくらりりかさんが離婚したって。いつだって、俺は不安なんだよ」
その不安な事は。
あたしが飲みに行って記憶をなくすとか。
そういう事だけではなく。
あたしがいつか。
また。
・・・・。
そんな事は、無いよ。
あたしは、君だけを見てるよ。
でも、あたしの行動は、君にとって不安だらけになってしまうんだね。
ごめんね・・・。
もっともっと。
君が好きだと、行動で。気持ちで。
示せるようにしたい。
ふらふらしないように。
揺れないように。
ちゃんと、真っ直ぐ、君だけを、見ている。
そして、安心させたい。
君があたしをすきだって気持ちを。
いつもあたしにくれているみたいに。
それであたしが安心しているみたいに。
本当に、ごめんなさい。
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