学芸会。
あいつに送ってもらって、来た。
「平気?ふらふらしてない?」
「うん、ありがと。平気だよ」
「じゃー、俺、その辺のファミレスかなんかで待つから。終わったら連絡ちょうだい」
あたしが知らない学校。
ここで、子供たちは勉強したり、友達と話したりしているんだなぁと。
あたしが知らない生活をしているんだなぁと。
門をくぐる時、思った。
あたしは、会場の一番後ろの席に座った。
だんな様は・・・と見回すと、見つからなかった。
そうだよね、こんな人ごみの中。
次女の劇が始まって。
あたしは、食い入るように見てた。
そのとき、「あ、○○(次女の名前)ちゃんだ!」と言う声がすぐ近くでした。
え?と思って、声の方を見ると、ライラがだんな様に抱っこされて見てた。
こんな近くにいたんだ・・・
あたしは、すぐ近くだし、声を掛けようか悩んだけど、約束だし、やめておいた。
見つからないように、場所を移動した。
向こうからは見えそうもない場所から、次女とライラを見てた。
長女の劇は次女のすぐ後だった。
だんだん飽きてきたライラを、だんな様がなだめたりしてた。
ああ、そんなときは、ライラの好きなタオルを持って来てれば、おとなしくなるのにぃ・・・とか、あたしは、はらはらしてみてる。
劇も終わって、全校生徒で合唱をした。
大きな古時計。
この曲、流行っているもんね・・・
終わりの言葉を代表の子が言って、父兄たちも出て行く。
あたしは、ボーっとしたまま。
立ってた。
1ヶ月ぶりに会った(見た)、子供たちは。
たった1ヶ月なのに、凄く成長したように見えた。
声を掛けられなかった事は、残念だけど。
会えただけ、写真じゃなく、実物にあえただけ、感謝しよう。
あたしは、車に乗り込むだんな様に、遠くから「ありがとう」って、心の中で言った。
家に帰る途中、だんな様から電話が来た。
「見れた?」
「うん」
「ライラも、見れたでしょ?」
「うん・・・知ってたんだ?」
「わざと、りりかの傍に行ったんだよ。でも、ライラには気づかれない程度の距離に」
「・・・そうだったんだ、ありがと」
「まだ、やっぱり会わせられないよ。整理がつかない」
「うん、分かってる」
「悪いな」
「ううん・・・」
悪いのは、あたしだもん。
謝らないで、ください。
あなたは、当然の事をしたんだから。
あたしが逆でも、同じだよ。
むしろ。
そんな、優しい言葉、掛けられない。
わざと、近くに来るなんて、そんな優しさ、あたしにはない。
電話を切った後、不思議な、気持ちになった。
あたしは、充分。
幸せなんだって。
なんとなく、そう思った。
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