2002年10月25日(金) |
お父さんとご対面・2 |
食事が来て、それでもあたしとお父さんの会話は、最初の挨拶のみ。
あいつは、何とかあたしとお父さんが会話できるような感じにもって行こうと言う努力はしているのだけど、なんとなくタイミングがずれたりしている。
料理の味なんか、分かるはずもなく。
口に入れて飲み込む、と言う行為だけを淡々とこなす感じ。
料理が終わって、食後のコーヒーが来た。(あたしはコーヒー飲めないので、紅茶)
このまま、会話はもう無しなのかな、それはそれで・・・どうなんだ?とか、考えてた。
「りりかさん」
いきなり、お父さんに呼ばれたあたしは、「はい!」って、声が裏返りながら返事した。
「いろいろ、ありましたね。大変でしたね」
「あ・・・はい・・・でも、自分でしたことですし・・・」
「うちのHも、関わっていると聞いて、正直胸が痛くなりました」
「・・・すいません」
「いえ、あなたが謝る事ではないと思うのです。あなたが謝るべき人は、他にいますよね?」
「・・・はい」
「うちのバカ息子は、まだまだバカで子供です。善悪も人としての道も、教えてきたつもりでしたが、出来ていないと言う事に気づきました。あなたのお子さんや旦那さんには、本当に申し訳ないと思っています」
あたしは、何だか、胸が苦しくなった。
泣きそうだった。
黙ってたあいつが、言った。
「俺だって、思っているよ。申し訳ないって」
「思っているだけじゃ、だめだろ」
「じゃー、どうすんの?」
あいつの口調が、明らかにむっとしてた。
あたしは、はらはらした。
「もう、引き返せないところまで、あなたは来てしまいました。もっと早く、あなたに会って、止めるべきでした」
離婚を・・・って、言いたいんだなぁって、あたしは黙ったまま、聞いてた。
「あなたに対しての責任は、取らせるつもりです。こうして、あなたの人生をめちゃくちゃにした。そして、ちゃんとお子さんや旦那さんにもなにかしら・・・」
責任?
なにかしら?
何?
「責任で、一緒にいるんじゃないから。それと、子供たちや旦那さんに謝罪して行くのも、俺の役目なんで」
「お前に何が出来るんだよ?」
「今すぐは無理でも、いずれはって事だよ」
「お前は一生、りりかさんとりりかさんのお子さんたちに償って行かなきゃいけないんだよ?」
あたしは、「ちょっと待ってください」と言った。
あたしは、自分の考えを、どんどんどんどん、話しだした。
あたしは、結婚するとか考えていない事。
そして、もしなんかの理由で別れがあたしたちに来たとしても、それはそれで、仕方ないと思うと言う事。
あたしの離婚は、彼だけが理由じゃないと言う事。
子供たちに対しては、今後あたしの出来るだけの事をしていくと言う事。
それに対して、彼にどうにかして欲しいとか、思っていないと言う事。
何より。
「責任」と言う形で、一緒にいて欲しくはないと言う事。
言っちゃってから、生意気だなって思った。自分の事ながら。
でも、全部本音だ。
あたしは、あいつに対して、精神的には頼ろうと思っているけど、金銭面とかでは、全く考えてない。
だんな様や子供たちにも、あたしが出来る事をして行こうと思っている。
だから、責任を取る、とか、何かしらして行く、とか、あたしは嫌。
そして、だんな様や子供たちも、そんなの望んでいないと思う。
「だから、あたしは、今のまま、お付き合いして行きたいと思っているだけなんです。そして、それを理解していただきたいんです」
全部言い終えたと同時に、なぜか勝手に涙が出た。
止まらなくなった。
きっと、全部言い終えて、緊張の糸が切れたんだろうと思う。
あいつが、あたしのカバンから、タオルを出して渡してくれた。
お父さんは、
「理解する事は、難しいです。でも、Hがこんなにも、あなたを思っている事は、見ててよく分かります。分かるからこそ、もっと普通に出会っていたらよかったのに、と、余計に胸が痛みます」
と言った。
そして、
「私が、あなたとHの事を、これからも付き合って行くのを何も言わないのは、さっきも言った通り、男としての責任を取らせたいから、だけです。あなたを幸せにしなきゃいけない責任が、こいつにはある。あなたやHの考えではそうじゃないかもしれない。でも、私は、そう言う考えです。許した、と言うわけではないと言う事を、覚えておいてください」
責任があるから、仕方無しに何も言わないでいる。
責任ってなんだろう。
考え出したら、分からない事ばっかりになった。
でも、あたしは、あたしの考えを変えない。
責任でいるくらいなら、あたしは、一緒にいたくない。
甘いかもしれないけど、そうなんだ。
責任が始まりで、一緒になったあたしとだんな様は。
こうして、終わってしまったんだから。
|