march forward.
りりかの独り言。

2002年10月24日(木) お父さんとご対面・1

ものすごく、そわそわしまくって。

あたしは、あいつの家に行った。

おとうさんは直接そのレストランに来ると言うから、あたしたちも車で向かう。




「格好、変じゃない?」

「変じゃないよ」

車の中で、何度も聞くあたし。

「本当はなんか変?」

「変じゃないってー」

あいつは苦笑い。





時間を止めて欲しい。

とまで、思ってしまう。

心臓が飛び出すんじゃないかって位に、ドキドキしているし、手は汗ばんでいる。

あいつが、運転しながらあたしの手を握る。

「うわ、珍しい、りりかさんが汗かいてる!」

明らかに楽しんでいる。

あたしは、もう言い返す元気も余裕もなく、黙り込む。

あいつの手があたしの頭に来る。

「平気だよ、俺が一緒にいるんだから」

よしよしされる。けど、いつもみたいに安心なんか出来ない。

逆に手を振り払って「髪の毛がぐちゃぐちゃになるからやめて!」とか言う。





レストラン到着。



「いつか、このお店来て見たいね」

とか、前に話してたけど、まさかこんな形で来るとは・・・



「お父さん、来てるかな?」

「まだじゃない?ついたら電話来るはずだから」


ちょっとだけ、ホッとする。

心の準備をする時間がちょっとだけあるって事か。

いきなりテーブルについて、これがお父さんです、とかなったら、やっぱり嫌だなって思っていたし。




あたしは、水をがぶ飲みして、お代わりして、また飲む。

「平気?トイレ行きたくなったりするよ?」

ああ!そうか、そんなの恥ずかしい!!!

「なら今行く」

と言ったと同時に着信。

「ついたって」

ト、トイレは・・・?

トイレから戻ったら、お父さんがいるとか、そんなの嫌なので、我慢しよう。

別に今すぐ行きたいわけでもないし。

けど、出しておくだけで違うかも・・・

なんで、水なんかがぶ飲みしちゃったんだ、あたしは!!!

で、なんで、こいつは水飲む前に「トイレに行きたくなっちゃうよ?」って言わないんだよ!!!

ああ・・・考えてたら、行きたくなったような感じもする・・・


「トイレ行ってくるの?」

「行かない!!!」

「怒鳴らなくてもいいじゃん・・・」

あたしが言い返そうとしたとき、男性が一人、入ってきた。

あ、あの人だ。直感的に分かった。

てか、今ついたって電話あって、今入ってきたんだから、この人だろう。




「父さん」

あいつが声掛けた。

やっぱり、今入ってきた男性がそうだった。


年齢は50代半ばとか聞いてたけど、もっと若く見えた。

そして、想像してたよりも優しそうに見えた。

優しそうに見えただけなのに、あたしはホッとした。




あたしは、立ち上がってあるいて来るお父さんを迎える。

そして、お父さんの足が止まるのを待って、挨拶をした。



「はじめまして。・・・○○りりかです」

危うく、だんな様の苗字を言いそうになってしまった。

まだ職場では手続きが終わってないので、タイムカードや給料明細はだんな様の姓のままなので、職場では名札や呼び名はだんな様の姓のまま。

手続きが終わり次第、あたしの職場での姓を変えようと思っているので。

まだ、旧姓を言うことに慣れていない。




「はじめまして、Hの父です」

あいつの声によく似た。

あいつのお父さんの声だった。



お父さんが席についたのを見て、あたしも座る。



少し、沈黙する。

隣のあいつを、チラッと見る。

あいつはメニューとか見てる・・・。

マジで、つねってやりたい、蹴ってやりたいと思う。



「飲むんでしょ?」

あいつが、お父さんに聞く。

「そうだな。帰りの事もあるし、余り飲まないほうがいいと思うけど」

「泊まって行けばいいじゃん、うちに」

「いや、帰るよ。うん」




あたしは黙っているだけ。

下ばかり見てた。





「りりかさんは?」

あいつがメニューを勧めながら言う。

「あ、あたしは、ほら、運転があるから」


いきなり声を掛けられて、ドキドキする。

飲まなくても、酔っている時と同じ位に、思考回路は回ってないから!

心の中で、切れてみたりする。






注文して、料理が運ばれて来るまでの間、あいつとお父さんは、飲みながら、普通に日常会話。

あたしがここにいる意味あるの?と思うくらいに、普通の会話。

たまにあいつに「ねぇ、どう思う?」とか聞かれて、「うん、そうだね」とか返す程度。



あたしと、お父さんが交わした会話は、最初の挨拶のみ。

・・・だけじゃ、済むはずないよね。


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