夕方、部屋のカギをもらった。
新しく住む、自分の部屋のカギ。
不思議な感覚だった。
これが、あたしの部屋のカギになるんだ・・・
夜、荷物をちょっとだけ運んだ。
と言っても、服とかなんだけど。
部屋に入ってから気づいた。
・・・そうだ、電気がないんじゃん・・・
トイレには電球が入っていたから、とりあえずトイレのドアを開けて、明かりをとった。
昼間来た時と違って、何だかがらーんとして、寂しかった。
ここで、夜、一人で寝たりするのかぁって思うと、不安になったりした。
でも、慣れるよね・・・
家に帰ってきてから、ビーズでキーホルダーを作ってた。
カギに付けるための。
そしたら、次女から電話が来て、「今何してるの?」って言うから、「ビーズ作ってたよ」って話した。
「私の携帯とお姉ちゃんの携帯のストラップも作って欲しい」
あたしは、こうやって頼まれた事が、凄く嬉しくて、「うん、すぐ作るよ!」って張り切って答えた。
「ライラは何がいいかなぁ」
って、あたしが聞くと、「ライラの新しい幼稚園、カバンにキーホルダー一個だけつけていいんだって。目印になるから。だから、それにしたら?」と言われた。
新しい幼稚園は制服があるんだよ。
カバンは緑色のリュックなの。
制服も可愛いよ。
次女が、一生懸命詳細に語ってくれる。
あたしの知らない、見えない場所で、子供たちの生活はどんどん進んでいる。
それは、今まではあり得なかった事で。
あたしが知らない生活を子供たちが送るなんて事は、考えられなかった事で。
でも、どんどん始まっている。
あたしが知らない幼稚園、学校、お友達に囲まれている子供たち。
笑いを交えて、たくさんいろいろな事を教えてくれる。
あたしが見た事のないライラの制服も。
あたしが知らない長女と次女のお友達も。
目に見えるように、語ってくれる。
でも、それはやっぱりあたしの想像の中だけのことだから、実物はまた違うんだろうなぁと思ってみたり。
「写真、おじいちゃんがいっぱい撮ってくれたの。手紙と一緒に送るね」
そう約束して、電話を切った。
さっき、一人で暮らす部屋に行ったばかりのせいか。
ものすごく悲しくなった。
あたしは独りぼっちになったような感覚になった。
写真でしかあえなくなるなんて、思わなかった。
次女は今の電話で一度も「会いたい」とか言わなかった。
なんでかは分からない。
でも、言わなかった。
早く、慣れよう。
この生活に。
こういう状況に。
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