march forward.
りりかの独り言。

2002年10月05日(土) 退職金

朝から、今度住むアパートの下見に行った。

それなりに綺麗だし、一人で住んで行くには充分な広さだった。

ただ、あたしの持って行く家電製品は、5人で生活しているときに買ったものばかりだから、全部大きい。

冷蔵庫も5ドアだったり、洗濯機も8キロとかで。

衣類乾燥機に食器洗浄乾燥機・・・

一人じゃ必要ないなぁと思う家電たち。

でも、買い換えるほどお金に余裕はないし。

捨てるのももったいない。

使う事にしたんだけど、場所取るなぁとか思ったり。




新しい家の窓は大きくて。

空がいっぱい見えて、太陽の光もいっぱい入ってきた。



あたしは、一人暮らしをした事がない。

怖がりのあたしは、一人暮らしなんか出来ないと思っていた。

それに、一人暮らしなんかする事は一生ないと思っていた。

でも、あたしは一人暮らしする事になった。



あたしとあたしの親や兄弟との空間だったり。

あたしとだんな様の空間だったり。

あたしとだんな様と子供たちの空間だったり。


そうやって、一緒に誰かと空間を共有して生きてきた。


今、あたしは、あたしだけ、あたし一人の。

空間で生活していく。



あたしの今の気持ちは。


当分、あいつと一緒に生活するとか。

そう言うのはない。

前までの、子供たちと一緒にいると思ってたころのあたしは。

半年たったら、あいつと一緒に暮らしたいとか思ってた。

でも、今はない。

そういう気持ちがない。

一人でやって行きたい。


別に、あいつに対する思いが冷めたとかじゃなくて。

嫌いになったとかでもなくて。


一人でやって行きたい。


そう思うから。






夜、だんな様が来た。

子供たちに近いうちに会いたいと話した。

だんな様は余りよく思ってないみたいだった。

でも、会いたいってお願いした。

時間の都合が合ったら、と言われた。



そして、お金をくれた。

何で?って聞いたら、いろいろ必要だろ?と言われた。

あたしは貰えないって言った。

だんな様は「退職金だよ。12年間妻としてやってくれた。気持ちだから、気にするな。そんなに入ってない」と言った。



「子供に余りあわせないためのお金?」

「そんなんじゃないよ」

「だって、あまりいい顔しないじゃん。子供とあわせるの」

「りりかがいなくても大丈夫なように、慣れる期間見たいのが欲しいの。子供たちにとっても、俺にとっても。だから、今はあわせたくない」

「でも・・・」

「だから、携帯買い与えたんだろ」



あわせないけど、声だけならって事か。

そう言う意味だったのか。




「退職金」はかなり入ってて。

それ見たとき、悲しくなった。


あたしはきっと、値してない。

12年間妻として母として暮らしてきたその退職金の額がこれだったとしたら。

あたしは、そんなにもらえるほどの事をしてない。




時間は夜の10時過ぎてて。

あたしは家で一人、ボーっとしてた。

電話がなって。

相手はあいつで。



あたしは、子供と別れてから、始めてあいつの前で(電話口で)大泣きした。

「どうした???」

「苦しいよ・・・」

「何で???なんかあったの???どっか痛いの???」

「違う・・・」



あたしは泣きながら、「わかんないけど、苦しいの」と言った。

あいつはいろいろどうしたの?とか、いっぱい聞いて来てた。


「下見てみ」

家のドアを開けると、あいつが車の中にいた。

電話しながら、向かってくれてたらしい。




あたしは、泣いてるまま、あいつの所に行った。




あいつは最初は頭をよしよししてくれて。

背中をぽんぽん叩いてくれて。

あたしの手を引いて車に乗せてくれて。



「どうした?」

「なんか、悲しくなっちゃって」

「なんで?」

「子供たちに、会いたいなぁって」

「そか・・・」



あいつも、きっと、苦しんでいる。

自分のせいであたしと子供たちを引き離したと思っている。

だから、苦しんでいる。



ただ、好きだったらいいと言う時期は終わった。





「りりかさん、一緒に悩んで、考えさせて。一人で何でも抱えこまないで。関係ないとかいわないで。関係なくないんだから」


寄りかかっていいんだろうか。

今までどおり、この人に寄りかかっていいの?



そんな風に考えた。


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