仕事が終わってから、あいつに会いに行った。
飲みたい気分なんだーって、あたしがお酒を買いこんで。
がん飲みしても、酔えなくて。
頭ばかり痛くなって。
「飲みすぎてません?もうりりかさんはウーロン茶ね」
頭をよしよしする。
熱さまシートをおでこに貼ってくれる。
ものすごく、優しい。
あたしは、この人が好き。
凄く好き。
だけど、子供たちを好きって言う思いとは、次元が違って。
どんなに優しくされても。
どんなに大切にされても。
子供たちを好きな気持ちより、勝ったりしない。
「りりかさん、なんかあるでしょ。悩んでいる事」
突然言われる。
「なんで?」
「なんか、おかしいから。自分から飲みたがったり」
そうだよねぇ・・・
おかしいよね。
「ま、いろいろ」
あたしは昨日帰宅後からずっと考えてて。
子供たちの事、いろいろ考えてて。
一番いい事は、なんなのかとか。
いろいろ、考えてて。
たぶん、子供たちにとって、あたしといるほうがいいのか、だんな様といるほうがいいのか、どっちがいいのかって言われたら、ほとんどの人が、だんな様のほうだと言うだろう。
あたしは、収入だってだんな様より当たり前だけど、少ないし、援助してくれる実家もない。
お金の事だけじゃなく。
いろいろ、精神的な面で。
子供たちは、順応するのかもしれない。
あたしがそうだったように。
父親がいない事。
または、母親がいない事。
「いろいろって、話してくれないの?」
「あまり君には関係ない話だから」
「でも、りりかさんが今悩んでいること、聞きたい」
「大丈夫、自分で考えるから」
「一緒に考えて行くんじゃないの?たとえ、相手に関係ない事でも」
そうだったね。
一緒に何でも話して行こうって決めたのにね。
なんでも自分で考えて、一緒に考えてくれないだんな様に疲れたのにね。
「子供たち、だんな様のところにいるんだ」
「だんなさんの実家?」
「うん、そう」
「実家にいるって、旦那さんの実家だったんだ・・・」
「そう」
「で、何悩んでいるの?」
「子供たち、だんな様側が引き取りたいんだって」
あいつは、びっくりして。
黙ってた。
「いつ、そんな話になったの?」
あたしは、この間だんな様に言われた事から、昨日実家に行った事まで、話した。
「何で、今まで言わなかったの?」
「なんか、言えなかったよ」
「俺に関係なくないじゃん。りりかさんの子供だよ?一緒に住もうって話してた、子供たちだよ?」
「うん、そうだね」
怖かったんだ。
ホッとされたり、うまく行ったと思われる事が。
りりかさんは、子供が出来ない体になった事で、もしかしたら、一生このまま出来ないかもしれないと思ってて。
だから、子供も産めない女なんかと一緒になる事を考えちゃだめだって言ってたよね。
でも、俺はいいって言った。
たとえ、出来なくてもいいって。
それは、ライラたちがいるから。
ライラたちがいるから、いいって言ったんだよ。
俺は、甘く考えすぎているのかもしれないし。
だから、簡単にライラたちを自分の子供だと思うからいいなんて言えるのかもしれない。
それでも、いいと思ってた。
楽しみだったし。
不安もあったけど。
本当に、幸せに出来たらいいって、思っていたし。
なのに、りりかさんは信用してくれてなかったんだね。
俺が言ったこととか、行動とか、信用してくれてないから、話せなかったんだね。
「負担だと思ってた。君にいきなり3人の子供たちと一緒に暮らさせるなんて、負担だと思ってたんだ。だから、だんな様が引き取ったら、負担が減るから、よかったなぁって思われたら、いやだなって。だからなかなか話せなかった」
「んなこと、あるはずないじゃん」
あたしは、謝って。
でも、怒ったままで、許してはくれなくて。
「一人になりたいから」って言われて。
あたしは、強制的に車に乗せられて、送っていかれた。
あたしの車で送ってきたから、帰りは歩きで帰って行った。
夜中で、電車もなかったし。
歩いている途中メールをしてきた。
「信用できない男と、一緒に暮らそうって思ってたの?」
そうじゃない。
そうじゃないけど。
でも、確かに疑ってた。
あいつの言葉全部を信じる事が出来なかった。
無理している部分とか、そういうのを隠しているんだと思ってた。
悪いなって思ってた。
「自分の子供を産んでくれない女と、自分の子供じゃない他人の子供たちと、一緒に暮らす事を、心から喜んでくれる人間はいないって思った」
あいつは、違ったんだろうか?
本気で、それでもいいと思ってくれてたのだろうか?
「りりかさんの子供は、りりかさんの子供。俺が愛している人の子供なんだから、他人の子供とかそう言う感覚はなかったんだよ」
「だから、言って欲しかった。一緒に考えたかった。りりかさん、人をちゃんと信用しなきゃ、だめだよ。しかも、自分が愛していると思っている人間の事、信用出来なきゃ、だめだよ」
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