だんな様と、土曜の夜中(今日の日付に変わって)もずっといろいろ話してた。
だんな様は飲んでいたので、ちょっと酔ってた。
話しながら、何度かあいつから携帯にメールが来てて、それを返した事があった。
でも、4時間くらいの間に3回。
本当はもっと返したかったけど、だんな様と話しているときとかにメールするのも悪いかな、と思って、だんな様がトイレに行った時とか、会話が途切れたときを見計らって、返事してたんだけど。
で、3回目の返事をして、すぐまた返事が戻ってきたとき。
だんな様が言った。
「お前はいいよなぁ」
って、最初は静かな口調だった。
「何が?」
最初は、あたしも訳が分からなかったから、笑顔で聞いた。
「楽しそうで」
「楽しそう?」
やっぱりあたしは、意味が分かってなかった。
「楽しそうだよ」
「え?え?なにが?」
「何がって・・・離婚するって言う状態って、普通じゃないわけじゃん?でも、りりかは楽しそうだよなぁって思ったんだよ」
「そんなことないよ」
「俺はさ、一人になるわけじゃん?でも、りりかは違うんだもんなー。楽しい毎日が待ってるわけじゃん?」
もしかして、メールのやり取りしてる事で、腹立て始めてる?
って、ようやく、あたしが今、怒らせちゃっていると言う事に気づく。
「あ・・・いろいろと、問題とか悩みもあるよ?」
「そりゃーまったく悩んでもなかったら、おかしいだろ、頭」
最後の「頭」って所で、ちょっとカチンと来た。
でも、あたしは低姿勢。
あたしのわがままから、始まった事なんだから、あたしが我慢しなきゃ・・・とか思って。
「ごめん」
って、謝った。
「何に対して、謝ってるの?」
「こうして話している最中に、メールとかした事・・・」
「まー、それもなんだかなぁって思ったけど。そんな小さい事言ってるんじゃなくてさ。りりかは、楽しそうだって事。離婚万歳!見たいな?」
「そんなことないよ!!!」
「じゃー離婚したくないんだ?」
「・・・。」
言葉に詰まる。
離婚したくないの?したいの?って言われたら、したい。
それは、もう決めた事。
あたしが、自分勝手に幸せになる道を、選んじゃったから。
選びたかったから。
「よそうよ・・・」
「いや、はっきり言いたい。りりかは、追い詰めたよね、俺を、結局」
「・・・」
「食べられないとか言う、甘えた事言って、騒いで、離婚しなきゃ死んじゃうって言うプレッシャーを与えたんだよ」
「・・・ごめん」
「ほんとは、食べられたんじゃないの?なのに、食べなかったんじゃないの?」
あたしは、悲しくなった。
本当に、本当に、食べられなかったんだ。
あいつと別れるって決めて、別れて。
何もする気力もなくて。
食べるって言う意識がなくなったんだ。
苦しかったよ。
食べられるなら、食べたいって、思ったよ。
仕事にも支障が出るし、いつもだるいし、子供たちの相手さえ辛いくらいになって。
でも、そんな風に、狂言みたいに言われて。
あたしは、悲しくなった。
悲しくて、悲しくて。
でも、泣くのは嫌だって思って。
なんか、負ける気がして、泣くのはいやだって思って。
唇をきゅっと、かみ締める。
だんな様は、攻撃する手をまだ緩めない。
「俺だって、りりかの事好きで、愛してて。それで、別れるって決めて、苦しかったし、辛いけど、食べられるよ?確かに食欲は余りわかなくて、酒とつまみ、見たいな感じばっかりだったけど。でも、食べられるよ?」
そんなの・・・
あたしとあなたの、精神の強さの違いなんじゃないの?
または・・・
「あたしのこと、そんなに好きじゃないからじゃないの?」
つい、口に出してしまった。
悔しくて。
でも、口を開いたとき、一緒に涙もこぼれた。
「ばっかじゃねーの???」
だんな様が怒鳴る。
「なんで、そんなに好きじゃないんじゃない?なんていえるの?お前、狂ってるよ。俺がどんだけ、お前の事を考えて、苦しんでいるか、分からないの?あ、そりゃ、分からないかー!だって、りりかには、あの大学生がいるんだしね!!!」
「あいつに、お前は狂わされたんだよ。きっと、頭だけじゃなく、人生も狂うよ、お前の!!!」
あたしは、言い返せないで、嗚咽を漏らして泣き続ける。
さっきまで、一緒に買い物に出かけた、だんな様じゃないみたい。
あたしが傷つくだろうと思う事を、どんどん言う。
でも、あたしが付けた傷は、きっとこんなものじゃないんだろうと、冷静に考えるあたしもいる。
「りりかは、冷静になれてない!普通に考えて見ろ。20歳そこそこの大学生に何が出来るんだ?たとえ卒業したって、この不景気、どうやって食っていくんだ?お前と子供たちを養うとか言ってたな?どうやって?フリーターでか?そんな生活に疲れて、あの彼はお前と子供たちを捨てるんじゃない?で、それでまた、食べられないーとか、お前はバカみたいになんの?で、彼は助けてはくれないと。でもね、そう言う男だと思うよ?人のもの欲しがるような、子供だからね、あの男は。手に入ったら、もうどうでもよくなるんだよ」
言い返さないで、全部聞いていようって決めたけど。
何だか、我慢出来なくなった。
泣いて、興奮しているあたしがいる。
「あたしは、一緒になるつもりはないもん!」
「あぁ?」
「あたしは、再婚するつもりはない!!!」
「再婚しなくても、付き合って行くんでしょ?それでさ、彼に捨てられたら、お前はどうすんの?って言ってんの」
「どうもしない!」
「どうもしないー?んなわけないじゃん。お前は、きっと、俺が今味わっている苦しみを味わうんだよ。愛する人が自分から去っていく悲しみとか?自分がした事は戻ってくるんだ。覚えておくんだな」
頭ががんがんした。
なんで、こんな事いっぱい言われなきゃいけないの?
なんで、最後の最後まで、こんな風に言われなきゃならないの????
あたしは、冷静さなんか失ってた。
とっくに。
「あんたが、そんなんだから。そんな風に、嫌な言い方しかしない人間だから、あたしはあんたなんかに愛情なんかなくなったんだよ!!あんたこそ、自分が今まであたしにして来た事、全部精算されるくらいの勢いで戻ってきたんじゃないの???だから、こんな風になったんじゃないの!?」
今考えると、ものすごくひどい事を、あたしはいってる。
でも、全然考える余裕なんかなかった。
もう、だんな様なんか大嫌い、顔も見たくない、絶対に別れて正解!!!位に考えてた。
だんな様は、黙ってた。
きっと、ものすごく凹んだんだと思う。
あたしは、泣きながら寝室に行って、そのまんま寝た。
朝起きると、だんな様はリビングのソファーで寝てた。
お酒も、かなり減ってた。
あたしは、なんだか、だんな様と顔を合わせるのが嫌で。
子供たちを連れて、そのまんま実家に行った。
これが、最後の夫婦喧嘩になるのかな・・・
って、実家に行く途中の車の中で、考えた。
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