march forward.
りりかの独り言。

2002年09月01日(日) 初対面

朝、だんな様が帰って来ました。

道が混む前にって言って。

明日から、上の子供たちの学校も始まる。

だから、夜中に帰ってきて、睡眠不足で登校するより、朝帰ってきて、ゆっくり支度をした方がいいって。



「お母さん(お姑さん)、なんだって?」

「なんも」

「何も言わないわけないじゃん」

「んー。とにかく、もう大人なんだし、自分たちで決めたのなら、仕方ないけど、子供たちをたまには連れてきてとか言ってたかなぁ」

「かなぁ・・・って・・・。はっきりしないんだね」

「いいじゃん、とにかく、そう言うことだから」




そのあと。

お昼にソーメンを茹でた。

あたしも、ちょっと食べた。



「食べれるように、なったんだね」

って、だんな様が言った。



心の中で、あいつと会った事で、食べれるようになったんだ・・・って思っていると思う。

「ちょっとだけなら・・・」

あたしが答える。



子供たちは、夏休み最後の最後まで、宿題を片付けてた。




夕方。

ちょっと涼しくなったし、ライラと買い物に行こうか?とだんな様が言ってた。

あたしも買いたいものがあるしって、三人で行く事になった。



離婚したら、こうして一緒に買い物にちょっと行こうか?なんて事はなくなるんだなぁって、不思議な感覚で考えてた。

当たり前の。

当たり前だった事。


そう言う事が、当たり前じゃなくなる。




家族だったものが。

夫婦だったものが。



他人になる。


離婚て。

そう言うことなんだな、と、感じてた。





買い物が終わり、帰りの車の中で。

だんな様の携帯がなった。

「あれ?ひなちゃん(妹)だ」

着信者を見ただんな様が言う。


え?ひな?

なんで、あたしにじゃなく、だんな様に?





「うん・・・うん・・・いいよ。わかった。今、ライラとりりかも一緒・・・うん・・・」


なんだか、ざわざわした。

なんだろ?

あたしじゃなく、だんな様に電話?

なんだろ・・・?




電話を切っただんな様があたしに言った。







(↑投票ボタン。よかったら押してください。)



あたしは、意味が分からなかった。

ひなちゃんと、誰?

誰の事?


もしかして・・?


「ひなと・・・誰?」


「ひなちゃんと、彼だよ」


「ひなと、ひなの・・・彼?」



だんな様は、無言で運転をする。

この、無言が、答えだ。

来るのは、妹と、あいつだ。


あたしは、心臓がバクバク言うのが分かる。

何もしてないのに、息切れもする。



「何しに行くの?」

「向こうが会いたいって言うんだから、行くんだよ」


だんな様の口調は、至って穏やかだった。

あたしの声は、震えている。



あたしは、あわてて妹に電話した。


「ね・・・。なんで?どういうこと?」

「Hちゃんが、会いたいって。謝りたいって。私に言ってきたから」

「ちょ、ちょっと待とうよ。あたし、何にも知らないし」

「もう、これは、りりかちゃんの事とかじゃなく。Hちゃんとパパのことだから」




そして、ファミレスについた。

あたしは、車から降りられずにいた。

怖くて。

不安で。



「平気?歩ける?具合悪い?」

だんな様が、あたしの腕を持とうとした。

あたしは、思わず振り払ってしまった。

「平気だから・・・」


降りたとたん、膝ががくっとなった。

「平気じゃないじゃん」

だんな様が、また、あたしの腕を取ろうとする。



こんなとこ、見られたくない。



あたしは、もう一度「平気だから」と言って、自分で歩いた。




店内に入って、すぐ、妹が目に入った。

妹の前には、あいつの後姿。

ライラが、妹を見つけて、走り出す。


「ひなちゃーん」



そのとき、あたしははっとした。

ライラとあいつは、一度会ってる。

だんな様は、それを知ったら、どう思うだろう。

きっと、怒る。

妹が知ってた事でさえ、ショックなはずなんだから。



あたしの、そんな気持ちを知ってか知らずか、ライラはあいつに普通に「こんにちは」と挨拶してた。



あいつが、妹の隣に移る。

あたしは、ライラを真ん中にして、だんな様と座る。

あいつの顔を、チラッと見た。

あいつは、だんな様を見てた。

だんな様の顔は・・・

怖くて、見れなかった。




妹が、あいつに、言う。

「姉の、だんなさん」

あいつは、立ち上がり、頭を下げた。

「Hです。本当に・・・本当に、申し訳ありませんでした」




頭を下げたまま。

顔をあげない。

だんな様も、何も言わない。

あたしも、何も言えない。




沈黙の時間が流れる。






妹が、「座ってもらっていい?」と、だんな様に聞いた。

「どうぞ」だんな様が答えた。






「なんで、りりかがよかったの?」

「どうしても、りりかじゃなきゃ、だめなの?」


とか言う、質問を、だんな様があいつにした。



あいつは、しばらく黙ってた。



そして、やっと口を開いた。



「どうしても、りりかさんじゃなきゃ、だめでした。りりかさんじゃなきゃ、だめです」



今度は、だんな様が、黙ってた。


あたしの、瞬きの回数が、異様に増えてるのが、自分でも分かった。

あたしは、緊張すると、いつもそうだ。

瞬きが、止まらなくなる。



「りりかも、同じ?」

不意にだんな様に聞かれる。

あたしは、「同じ」と即答した。



もう。


分からない。

とか。

考えられない。

とか。


あやふやな答えは言わないって決めた。



「あたしも、同じ。一緒にいなきゃ、だめなの。ごめんね・・・ごめんね、パパ」




だんな様は、大きなため息をついて。



「分かったよ」



って言った。







この12年間、一緒に暮らして来て。



楽しいこととか。

悲しいこととか。

いろいろな事を、共有して来た。

喧嘩もいっぱいした。

子供がたまに言う、子供ならではの言葉に、2人で感心したり。笑ったり。

子供が夜中に具合悪くなったら、一緒に救急外来に飛び込んで。



そんな風に、今まで一緒に暮らして来た家族の、夫婦の、あなたに。


あたしは、最低な、ものすごく傷つける言葉を、言っています。




でも。


このまま、彼を思いながら、あなたと暮らして行く事も。

やはり、傷つけることだと、あたしは思いました。



自分が幸せになりたいがための。

勝手な言い分です。

分かってる。




だから、今。

心から思う事は。



あなたがこの先。



幸せになりますように。


 < back  INDEX  next>


りりか [MAIL]

My追加
エンピツ