今日は珍しく、朝から夕方までの勤務だった。
帰宅後、だんな様と子供たちと五人で夕飯を取った。
洗濯物をたたんでいると、だんなさまが横に来て、一緒に手伝ってくれた。
2人で洗濯物をたたんでた。
何か言われるかなぁって思ったけど、何も口に出さない、だんな様。
無言で、洗濯物をたたんでいる。
今まで12年間、一緒に洗濯物をたたんだ事があったんだろうか?
こんな些細な事で、あたしはきっと、前なら飛び上がるほど、嬉しかった。
嬉しくて、この人でよかったーなんて、心から思えたんだと思う。
今は。
今のあたしは、嬉しいって言う気持ちより、「なんで?」って思いの方が先。
なんで、あたしと一緒に洗濯物なんかたたんでいるの?
「あたし、考える時間とか、作ったらだめかな」
「考える時間?」
「うん・・・あたし、やっぱり別れられないんだ。今まで、たった半年ちょっとだけどね。あたしの中では、本当に支えてくれてた人なんだよ。あたしが辛いときとか、悲しいときとか、本当に一番に考えてくれてた人なんだ。だから、ばれました、はい別れます、なんていう風に考えられない。ごめん・・・捨てていいよ、こんな女」
「捨てないよ・・・」
「ごめんなさい・・・」
「それって、俺と絶対に別れる、別れたいって考えているって事じゃないって事でしょ?」
「ん・・・そうなのかな。今は、子供の事、考えちゃうと、あたしの気持ちばかり、突っ走れない」
「それでもいいよ」
子供たちは、パパが好き。
ライラなんか特に、パパ大好き。
パパの背中にまとわりついて、「あつっくるしいー」とか言われて、くすぐられて、きゃっきゃ言ってる。
そう言う光景見ちゃうと、あたしだめ・・・
あたしは何しているんだ!!って、自分に怒りがわいてくる。
なのに。
なのに、あたしは、だんな様にあいつと別れられない。なんていう。
だんな様は、納得はしていない。もちろん。
でも、妥協してくれている。
「それでもいいよ」
奥さんが他の男と付き合っている。
しかも、その男の事、支えてくれる人だから、別れたくない。
なんていわれても、こんな事言える。
言わせているのかもしれない。
あたしは心のどっかで、だんな様が妥協する事、分かっていたのかもしれない。
「でもね、りりか」
だんな様が言葉を続ける。
「俺だって、プライドが無いわけじゃない。相手の男にあわせろ」
あたしは固まった。
そんな事言うと思わなかったから。
「会って・・・どうするの?」
「会って。話がしたい。りりかが、そこまで考える人間なんでしょ。どんなのか、会って見たい」
「・・・うん」
さっき、メールしました。
今度は嘘じゃない。
本当に。
「だんな様が君に会いたいって」
笑って、「嘘だよーごめん」って、今回は言えない。
「分かりました。いつでも、だんなさんの都合のいい日に」
あいつ、今どう思っているんだろう。
やばい事に巻き込まれちゃったなぁって思っているのかなぁ。
めちゃめちゃ、怖いんだろうなぁ。
出来る事なら、避けて通りたいもんね。
こんなはずじゃ無かったって、思っているのかなぁ。
ごめんね。
あたしが、君の手を掴んだばかりに。
あたしは、君が差し出した手を、見て見ぬ振りしなきゃいけなかったのに。
でも。
もしかしたら、君が手を差し伸べるように仕向けたのかもしれない。
あたしが。
知らぬ間に。
ごめんね。
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