七夕。
星を見よう。
あいつから、誘われて。
夕飯を食べてから、公園へ出かけた。
昨日の事。
お互いに口に出さなかった。出せなかったのかもしれない。
恥ずかしいって言う気持ちのあいつと。
重い空気になりたくないって言う気持ちのあたしと。
口に出せない理由は、ずれているんだけど。
「りりかさん、明日から仕事休み無しだね」
「うん、あ、でも火曜日は病院の日だから休みだよ」
「そか、明日も会える?じゃあ」
「うーん、病院朝一なの。だから、辛くなるから・・無理かな」
「そうだね。俺は、明日面接です」
「バイト?」
「就職の」
平日はほとんど、面接と説明会。
大変だなぁっておもう。
でも、みんなやる事なんだろうけど。
「あの。友達の話し、聞きたくない?」
「・・・うん、聞くよ」
車の中。逃げ場もない。
あたしは、真っ直ぐ前だけ見てた。
なんとなく、顔見るの、怖かったから。表情から、何言われたか、想像出来そうで。
「びっくりされました。一緒になりたい人がいる、こう言う人なんだって話したら」
「そりゃ、そうでしょ。バカだねーって言われた?」
「そんな事言われなかったけど。でも、お前は責任感あるからなぁって言われました」
「責任感?」
「はい」
責任感?
責任感があるから、何?
あたしは、ついつい声を荒げてしまう。
「あのさー!」
「は?」
いらいらいらいら・・・・
「君は、一体何の事に責任を感じているの?責任感があるから何?関係なくねー?結婚したりして、一緒になってから、責任感が出てくるのはいいけど、責任感で、一緒になりたいなんて言うのは、変じゃない?あたしは、君に責任を取って欲しいなんて、毎回言うけど、思ってないし、そんなんじゃね、万一一緒になったとしても、責任感で一緒になったんだよなーって後後思ったりするわけよ。だからね、責任感からそう思っているのなら、辞めてください。求めてません。そんな事は!」
はー・・・言っちゃった。言っちゃった。
すっきりしたけど、重いなぁ。空気。
「変?どこが?どこ?責任があるから一緒になるって事が変だとは思わない。それに、責任だけで一緒になるなんて一言も言ってないし、それは友達の意見だし、責任より何より、一緒にいたいっていうのが一番なんですけど?」
「でも、責任って言う気持ちもあるわけでしょ?一体なんで?君に何の責任があるの?うちはもうだめだったんだよ、元から。君がどうのこうのじゃないの!」
「ああ、そうじゃないですね。俺が言う責任感は、りりかさんと子供たちを養って行こうって言う責任感ですね。ちゃんと、養っていくぞって言う」
運転しながら、あいつは、あたしの頭を引き寄せる。
よしよしする。
頬をなでて、髪を指ですく。
「だからね。『万一』一緒になったら、なんて言わないでください。万一じゃないですよ。絶対なんだから、俺の中では」
天の川は、残念ながら、雲が多くて見えなかった。
空を見上げてたら。
吸い込まれて行きそうな感覚になった。
ていうか。
このまんま、吸い込まれて行きたいと思った。
怖いけど、なるようになれ、とも思った。
何もない、何も考えない。
真っ暗な空には、安心感がある。
夜の海のように、何もかも、なかったような、存在しないような。
何もかも、受け入れてくれる。そんな安心感がある。
でも、怖い。
凄く怖い。どうなるのか判らないから、怖い。
あたしは、この先、どうなるんだろう。
見えない。
あいつは、受け入れてくれる。
抱きしめて、安心感を与えてくれるだろう。
心配すること無いんだよ?って言ってくれるんだろう。
ただ。
あたしには飛び込む勇気がないだけ。
真っ暗な、空の中へ、海の中へ。
飛び込む勇気がないのと、同じで。
その先が、見えない不安で、分からない事だらけで、進めない。
ただ、分かる事は。
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