今日は、彼が17時からバイトなので、それまでの数時間、お茶をすることにした。 約束の時間にあたしはついたんだけど、やつはなかなか来ない。 だからメールで何度も脅してやってた。「早く来ないと帰ります」とか。 いや、もちろん冗談で。 やっと来た彼は、学校で就職活動の登録をしてたらしい。 なんか手間取っちゃって・・・とか言って、笑いながら 「あせって原付走らせてきたら、カーブで曲がりきれなくて転んじゃいましたよ」って、あたしに思い切りすりむいた腕を見せた。 自分の体の中の血が、下に下がって行くのが分かった。 「ごめん、あたしがあせらせたから・・・」 それしか言えなかった。彼は笑って大丈夫ですみたいな事を言ってたけど、あたしの耳には聞こえなかった。 聞こえてくるのは、急ブレーキの音と車がぶつかる音。 あの事故以来、あたしはまともに眠れない。あの事故現場にいたわけじゃないのに、なぜか耳に急ブレーキの音とぶつかる音がこだまする。 もし、また事故が起きたら、事故では無くても、何か起きたときに、 あたしは今度こそあいつの傍に駆けつけたいと思って、携帯を枕元に起き、 もしかしたらセンターで止まっているかも!!と、夜中に何度も起きて メールチェックして。 そんな繰り返しで、ほとんど寝ていない状態だった。そこへきて、今回の転んだこと。 しかも、あたしがあせらすから・・・ ぼーっとなりながら、あたしは帰宅した。 夜になって、やっぱり眠れなかった。 ボーっとしながらパソコンに向かっていたとき、彼から電話が来た。 あたしの様子がおかしいこと、とっくに気づいて、バイトが終わって即行で電話を掛けてきたらしい。 「大丈夫ですよ、ほんと、時間に遅刻したくないって言うより、早く会いたいって言う気持ちで飛ばしてきたんですから。俺の責任です。ね」 あたしは、泣いてしまった。泣いているのがばれないように、眠いから声が変なんだ、なんて嘘までついて。 多分、何でもあたしの事を見透かしちゃうあいつには、ばれただろうな。
でも、眠れなかった。この不安な気持ちは、いったいいつ無くなるんだろう。
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