観覧車から、もう2週間が過ぎた。相変わらず、夜になるとメールをあいつとするのは日課になっていた。 気がついたら、クリスマスも終わっていた。 イブのころからあたしは、右肺の痛みを覚えていた。仕事にカマ掛けて、病院など、行く気も無かった。 それでも、日に日にまして来る痛みは、限界に達していた。
あたしの異変に最初に気がついたのは、あいつだった。 「おかしくないですか?痛むんですか?」 「大丈夫だよ、すぐ治るよ、筋肉痛みたいなものかね?」 そんな会話を3日ほど前にしていた。
昼時の一番混む時間帯に、とうとう耐え切れなくなり、その場にうずくまってしまった。 そのまま病院へ。 後仕事が7時間残っているのに・・・あたしは痛みで朦朧となる頭の中でも仕事の事を考えていた。 売り上げの計算が残っているのに・・・今日は代行者が私しかいないのに・・・ 痛みは、菌が肋骨に回ってしまったための炎症から来るものだった。 「仕事?もちろん、休まなきゃだめですよ」 ドクターストップがかかったにもかかわらず、仕事場に戻った。
店に戻ると、あいつが休みのはずなのに来ていた。「どうしたの?」 「どうしたじゃないですよ。売り上げ計算の出来る人間と、あなたの変わりになる人を探しました。少しづつみんなが出てくれるそうです。帰って寝てください!!」 「い、いいよ、大丈夫、痛み止めも飲んだから。」 「いい加減に強がるのはやめてください、好きな人が辛い時に頼られないようじゃ、俺も終わりですよ!」
何も言い返せなかった。必死になってあたしを守ろうとしているあいつが苦しいくらいに切なかった。 変わってくれた人たちにお礼を言って、帰ることにした。
夜中、メールが届いていた。 「あなたは、いつも強がっている。男なんかに負けない。負けたくない。私は女だけど、男以上の仕事をしてやる。そんな風な面を表にいつも出しているけど、中身は弱い、すぐに折れちゃうような人なんですよ、本当は。でも誰にも寄りかかりたくないと思っても、俺には甘えていいですよ、受け止めますから」
返事は、しなかった。出来なかった。 肺の痛みと、心の痛みが重なって。 彼の心の痛みは、どれくらいなんだろうかと、考えながら寝た。
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