起因するはおそらくこの、ひとりで部屋にいるということなのでしょう。できれば冬の真夜中、部屋の温度ぐらいひと肌に温めてしまいたいところなのです。しかし温める人間など私以外にいるのでしょうか。いません。孤独というのか何と言うべきなのか。ともかくエアコンをつけるのも癪なので、じっと耐えていますが、しかし寒いです。おかしいです、腹の底はじんわり暖まっているのに。 肩が寒いのです。誰もひしと抱きしめてくれぬこの両肩が。願わくばひしと、強く、私を奪いつくすほど抱きしめて呉れれば好いのに。なぜ誰もそうはしないのか。誰も此処にはいないからです。そんな冷たい空気の夜には、かつてのことを思い浮かべてしまって止まらなくなります。そう、私などという人間を、捨て置くではなく、ひしと抱きしめてくれる人がいたことを・・・私のほうからも、ひしと抱くことが許された間柄であるような人のことを。それはもはや幻なのでしょう。白昼夢より鮮やかに浮かび上がり、そしてそれより儚い夢なのでしょう。ええ。存じております。だからこそ次へと歩みを進めたのです。しかし。 この寒さ。およそ気温、体温だけの問題ではなさそうですね。儚いものです。失って初めて気づくようなものがあろうとは。とりあえず、私を抱いて呉れる誰かを想ってみましょうか。否、それは嫌です。私とて一人の人間。淡い欲望や希望に身を委ねる程はまだ弱ってはいないのです。矛盾したことを言っていますね。強がり? 虚勢? 認識不足? まあどれでも良いのです。 ひしと抱きしめられる・・・ひしと抱いてくれる・・・それが許される人。。。この世に星の数ほど、砂の数ほど、人間たるもの溢れ返ってはおりますが、なかなかそうそういますまい。げに、難しく考えるほど、この世と人のなんとやらは難しくなってしまいます。それでも、私はこの寒さに対して無防備を貫いています。 誰に会おうか。誰と会おうか。そんなことを考えながらまとまらぬ妄想を駆けては、明日というマサカリが時系列に振り下ろされるのを唯諾々と待つのみです。 |
writer*マー | |
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