この自分だって、この世のどこかにそうやって紛れ込んで、どこかの誰かにとって重要な世界線の1本や2本を敷いてやりたいのだと痛切に思っていた。片想いに近いぐらいの熱心さで。しかし実物の人間に、具体的に必要とされるのは結構しんどいことだった。 福祉などで窓口をしているとそれが痛切だ。本当に「仕事でよかった、」と思う。これが生涯切っても離せないことだったなら私は亡霊や怨霊のように追いかけてくる「人々の求め」に怯えを感じただろう。 誰かのために、と思っているのは実はすごく限定された、身に覚えのある誰か、のために、言葉だの声だの色だの音だのを届けたいと思っているに過ぎないのではないか。決して不特定多数の誰か、なんていうもうのじゃない。もっと具体的に的は絞られていて、だから言いたいこと、表したいこと、敷きたい世界の線の種類は、いつもだいたい一緒なのだ。 この内に秘めたベクトルの向きも属性も色合いも温度も・・・ずっと何年も変わっていない気がする。 ならばそれは誰にとっての必要度を反映したものだろうか、と言うと今まで出会ってはすれ違ってきた数々の(しかしごく少数の)記憶に残っている人達にとっての、心のコアを射抜くものなのだ。 相変わらず暑くて湿っぽくて、ぎすぎす、じめじめした毎日が展開され、厭になるぐらい平日も休日もどろどろとマッド・ゴーレムのようにずりずりとこちらに向かってくるけれど、呑まれたら呑まれたでそれは風の精霊が沸かした突風だったのかというぐらい速くて、全てが一瞬で終わってゆく。そんな毎日の夥しい累積の中、お元気してますでしょうか。私は相変わらずです。あなたは――恐らくはお互いに身に覚えのあるあなたは、お元気でしょうか。私にとってあなたは必要度がすごいようです。今も囚われているのは間違いない。しかし。 |
writer*マー | |
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