高校を辞めた姉はバイトをしながら、大検(大学入学資格検定)を受ける為に勉強をし始めていた。 その為の予備校にも通いだした。 たぶん、この頃が姉が一番安定していた時期。 この頃の姉は、家ではやっぱり女王様のようだったけれど、以前のような威圧的な感じはなくなっていた。…我侭なお姫様、といった方が近い感じ。 人にやっぱり命令するけれど、その時は取ってつけたように敬語を使ったりしていた。 ちょっと、面白かった。 私の姉への感情は、大分緩和された。 嫌悪感は、ほとんどなくなっていた。 苦手意識だけはどうしても取り除く事はできなかったけれど。
大検を受けて合格した姉は、予備校でもっとたくさん勉強し、そして大学を2つ受けて2つともに合格した。 やっぱり、頭のいい学校。 やっぱり、姉はすごい。
大学に通い始めた姉は、暫くすると一人暮らしを始めた。 姉は、順調だった。すごく、順調だった。
姉が大学に入学した年に、私は高校2年生になっていた。 この高校は私の好きな学校。私の好きな空気。 往復2時間の通学も、全く苦じゃなかった。 私は高校が大好きだ。今も、あの学校の卒業生である事を誇りに思う。
高校2年生の冬までの間、私は幸せだった。 苦手な姉がいない家。 大好きな学校。 私は幸せだった。
…冬までは。
私が高校2年生の冬。
姉は、躁病になった。
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