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出産!!(41w0d)〜無痛分娩体験記〜 2003年10月29日(水)
**陣痛中にとっていたメモを元に、出産体験記**

<前夜>
午前0時20分、なんとなく目が覚め、トイレに行ったら刺しっぱなしの点滴の針から血が漏れていた。ナースステーションに行き、固定しているテープを貼り替えてもらう。

それにしても陣痛はどこへ行ってしまったのだろう?昨日の午前中の方がはるかに定期的で痛かった。K先生は夜が勝負といっていたが、これでは勝負どころかお話にならない。陣痛の激痛への恐怖はあるけど、痛みが無いというのも困る。まさか自分が微弱陣痛になるとは思ってもみなかった。こりゃ朝まで進展は無いな・・・促進剤に頼るしかないのね・・・。まごたん(仮名)、二人で頑張ろう〜!

眠れなくて、持ってきたウォークマンでベートーヴェンの第九やフジ子・ヘミングの憂愁のノクターンを聴いて、気を紛らわした。2時すぎに寝付いたが、また4時半ごろ目が覚めてしまった。緊張のせいだろう。またすぐに寝付いた。

<陣痛室へ>
午前5時50分ごろ、助産婦さんに起こされた。結局、本当に夜の間は産気づくことはなかった。病院から渡されていたお産セットに、持ってきたウォークマンや『白い巨塔』の文庫本やメモ帳、筆記用具など入れて陣痛をしのぐための万全の体制?を整えて、いざ、陣痛室へ!

陣痛室ではラッキーなことに窓際。今日は雲ひとつ無い、目が覚めるような青空。海も見えて、さわやかな景色が緊張感を癒してくれる。そのあまりの快晴っぷりが、私の出産を応援してくれているかのように感じた。

6時、機械をお腹につけて、胎児の心拍とお腹の張りを計測し始める。点滴も開始。でもこれは水分補給の点滴で、別に陣痛には影響が無い。暇なので『白い巨塔』を読み始める。

<促進剤投与>
7時、促進剤1錠を渡され、飲む。7分おきくらいの陣痛。だんだん痛みの質が変わっている気がする。深呼吸で痛みに耐えている。生理痛よりひどいかも。

8時3分、促進剤1錠を渡され、飲む。痛みはお腹がキューッと絞られるようなものに加えて、腰が熱くなるような感じが強くなってきた。5〜7分おき。さすがにもう本を読む気にならなくなってきた。

8時10分、助手っぽい人が来た(実際に助手かどうかは不明だが彼については以下「助手」とする)。様子を尋ねられ、9時になったら子宮を収縮させる薬を点滴すると言われた。今までの促進剤より強いってこと?こ、怖いよーーー!

8時15分、陣痛が5分おきくらいになってきた。痛みも増している。痛いことは痛いけど、何の進展も無いよりはいいかも。

9時、子宮を収縮させる点滴が始まった。フーッと長く息を吐くようにして痛みに耐えるが、だんだん汗ばんできた。しかも深呼吸に疲れたのか、眠くなってきた。

<破水>
9時20分、K先生の内診。死ぬほど痛い!!!!!声を上げるほど痛い。昨日の助産婦さんの内診より痛い。K先生の内診が痛かったことがないので、余程のことをしているに違いない。しかも冷たい水のようなものが体の中から流れてきた。聞いてみたら、人工破膜(胎胞(=頭と子宮口の間にはさまれた羊水で、胎児の枕のようなもの)を破る)をしたとのこと。つまり、破水させたのだ。これをすると、枕が取れてその分胎児の頭が下がってくるのでお産が進むとのこと。

K先生には「破水させたので、もう後戻りはできません。僕も後戻りをする気はないし、あなたも後戻りする気は無いでしょうから」と、なんだか劇的な台詞で覚悟を決めさせられた。子宮口は3cm。今までびくともしなかった私の子宮口も、少しは開いてきたようだ。陣痛も、生理痛の100倍くらいになってきた。これで3cmじゃ、一体、全開のときはどうなるの!?

<陣痛>
9時40分、お腹の痛みはとんでもなくキツイ。もうフーッという深呼吸で痛みを逃すにはどうにもならず声が出てしまう。しかし、痛くないときはなぜか眠い。腰に何かあったかいものを当てられた。陣痛を逃すのにカイロを腰に当てると良いと聞いたことがあるから、きっとその効果を狙っているのだろうけど、全然痛みは変わらない。

(ちなみにここから午後2時半までの間、メモは途切れている。痛みが強まった上に間隔が狭まり、メモを取る余裕がなくなった。)

生理痛の1000倍くらいの痛みなんじゃないかというような痛みが断続的に襲ってくる。痛みが遠のくのは一瞬で、引いたと思ったらまたくる。深呼吸で何とか耐えられるタイプの陣痛と、声を上げないと耐えられないような痛みが交互にやってくる。ベッドの柵やマットレスを掴み、握りこぶしに力を込めることで痛みに耐える。もう地獄。

しかも、そんな激痛に「あ゛ーーーっ゛」とか叫んでいるときに、容赦なく内診される。これがまた最悪。火に油を注ぐというか傷口に塩を塗るというか。痛いところに痛いことをされるのだからたまったものではない。「ああああっ痛いっ!痛いっっ!!!」と、私も容赦なく叫ぶ。ここで痛みに耐えたって何も得なことはない。痛さをアピールした方がどうにかしてくれるのではないかと、頭の片隅でちょっと計算したりする。

<無痛分娩開始>
11時半ごろ、あまりにも私が叫ぶせいか、助産婦さんに「この痛みにもう耐えられない?これ以上耐えられない?」と聞かれる。死ぬ気になれば、耐えようと思えば耐えられないこともない気がしないでもないが、死ぬ気になる必要があるのかと言えば、無い!!と断言できる。「今だけならまだしも、この痛みがこれからも続くのは耐えられない」と答えてみた。すると「まだ子宮口は4cmしか開いていないからちょっと早いんだけど、無痛分娩の麻酔入れますか?」と聞かれた。けいゆう病院の無痛分娩は基本的に子宮口が5cmになったところで麻酔を入れるのだ。昨日、K先生に「扁平骨盤だから強い陣痛が必要」「場合によっては無痛分娩は諦めてもらう事になるかもしれない」と言われた事が頭をよぎった。が、とにかくこの痛みをこれ以上我慢するほうが後悔しそうだったので、「お願いします」と無痛分娩への切り替えをお願いした。

助産婦さんに「赤ちゃんも苦しい思いをして頑張っていることを忘れないでね」と言われ、なんだか無痛分娩することが、情けないことのように言われている気がして悲しくなった。私が意気地なしなのかなぁ・・・と。

11時45分、麻酔科医がやってきて背中に針を入れ、麻酔を入れる。背中から管で繋がっているのは麻酔薬の入った機械。トランシーバーくらいの大きさのこの機械を渡され、10分に1mlずつ麻酔薬が自動的に投入されるが、もし痛みが強くて我慢できなかったら機械のボタンを押せば5ml投入されると説明される。麻酔の所要時間約10分。これで済むなら夜中でも休日でもやってあげればいいのに・・・。

暫くすると、痛みがきても声を上げずに済むようになり、時間が経つにつれて深呼吸で何とかしのげる程度になってきた。最初の痛みを10とすると、最初の30分で9、次の30分で8、という感じで痛みが落ち着いてくる。結果的には2時間半後には半減し、普通の生理痛程度になっていた。

無痛は全く痛くないと思っていたのだが、意外とそうでもない。お腹の張りを感じる程度に軽減されると聞いていたが、張りと言うよりは普通の生理痛くらいの痛みがちゃんと来た。痛みが来るたびに鼻から吸って口から出す深呼吸を繰り返し、お腹の中の赤ちゃんに酸素を送ってあげなくてはならない。麻酔で私はかなり楽になったが、赤ちゃんはこれから狭い扁平骨盤の間を通り抜けるという難関が待ち受けている。まごたん頑張れ・・・と思いながら、私はせっせと酸素を送ってあげることしかできなかった。

<子宮口7cm>
14時半ごろから腰が痛くなってくる。痛いというより、重いと言ったほうが正しい感じだ。腰が痛くなるというのはお産が進んでいる証拠で、子宮口は7cmまで開いてきた。陣痛が来ているときは8cmまで開くらしい。助産婦さんの内診も麻酔のおかげで全然痛くない。これが一番うれしい。しかもなんと助産婦さんが内診すると赤ちゃんの頭に触れるところまで来ているらしい。ひぇ〜・・・。

麻酔で母体がリラックスできたせいか、お産の進みが順調になってきているとのこと。赤ちゃんも降りてきやすくなってきているらしい。陣痛をまともに食らっている間は、私が痛みに耐えて体を緊張状態にしていたため、なかなかお産が進まなかった。なんだ、そんなことならもっと早く麻酔してもらえばよかった。

15時、助手がやってきて内診。「7cmのままですね、胎胞が・・・」とかなんとか言っている。あれ、さっき助産婦さんは7〜8cmと言っていたのに。しかも、胎胞とか言ってるけど、それは朝、K先生が破膜させたはずで、もう無いと思うんだけど。助手が去ったあと、助産婦さん二人が「7cmとか言ってるよ」「胎胞とか言ってるよ」と明らかに助手を信用していない様子。助手は見た目も“この間研修医卒業しました”という感じで、間違ってもベテランには見えない。アヤシイ・・・。そんな助手への不信感とは裏腹に、腰の痛みは増していた。

<子宮口全開>
16時、子宮口はほぼ全開。ただし、赤ちゃんが横を向いているらしい。本当なら背中を向いていてくれないといけないのに。暫く様子を見て、回旋してくれれば問題ないが、ここで横を向いたまま回旋してくれない場合は、扁平骨盤の問題もあるので帝王切開となるらしい。そう、子宮口全開からが本当の勝負で、狭い産道をうまく通れるかどうかが鍵なのだ。お願いまごたん、回って〜!

助産婦さんからは、いきみたければいきんでいいと言われるが、いきみたいと思わない・・・。そこで、陣痛が来たタイミングで試しにいきんでみることになった。ベッドの柵をつかんで、ちょっと上半身を上げて下半身に力を入れる。が、麻酔が腰から下に効いているので力が入らない。「ウンチをするような感じで力を入れて!」と言われても、ウンチをするときどうしていたかなんて、あまりにも日常的過ぎていちいち覚えていない。

適当に肛門のほうに力を込めるようにしてみたら、だんだん正しいいきみに近くなってきたらしく、赤ちゃんもちょっとずつ背中に向かって回り始めたようだ。いきみが回旋を助けるならママは頑張るよ。


<出産!>
16時半ごろ、子宮口が完全に全開になったので、分娩室に移ることになった。そこで助産婦さんに、「家族にもうすぐ産まれるって連絡をしていただけるんですか?」と聞くと、なんと「産まれましたっていう連絡はするけど、もうすぐ産まれますっていう連絡はできないのよ〜」と言われてしまった。なんて融通が利かないんだ。でもこんな局面で何とかとお願いするわけにもいかず、きっとロビーで待っててくれているに違いないと信じて分娩室に移動した。ストレッチャーに移動するのも、分娩台に移動するのも、麻酔のおかげで痛くも痒くもなく、さっさと移動できた。

分娩室はアットホームな部屋をイメージしていたのだが、手術室みたいな深刻な雰囲気の部屋だった。内診台をパワーアップしたような分娩台には両サイドにレバーがあり、これを持っていきむようになっている。「陣痛がきたら、そのタイミングでいきんでください」と助産婦さんに言われた。痛みが来ると、深く息を吸い、息を止めて、これでもかとばかりに肛門に向かって力を込めた。たぶん顔は真っ赤になっていたと思う。

心の中で「私は水泳を習っていたし最近まで泳ぐのを趣味にしていたんだから、人より肺活量があるはずなんだ!だからもっと息を止めて我慢できるはず!」と自分で自分に檄を飛ばし、ひたすら息を止めて力を込めていた。そして「まごたんも頑張っているんだから!!」と自分で自分を励ました。

いきんでいる最中に女医さんがやってきた。この人がきっとこの分娩の責任者なんだろう。K先生は今日はもういないらしい。横では助手が会陰切開の準備をして待っていた。この信用できない助手に会陰切開を任せるのは非常に不安だ・・・。「やりましょうか」と切る気マンマンの助手に、助産婦さんは「まだ伸びきっていないし、厚みもまだあるから待ってください」と冷静に一蹴。やっぱりこの助手は危険だ・・・。

5回くらいいきんだところで、おそらく赤ちゃんの頭が出てきたのだと思う。いきむのをやめるように言われ、短くハッハッハッと吐く呼吸に切り替えた。ここでいきんでしまうと会陰が裂けてしまうのだ。そして助手による会陰切開。麻酔が効いている上に局所麻酔までしてもらったので、もちろん痛くも痒くもない。

17時5分、ついにまごたん誕生!

やっと産まれたーという思いもあったが、何よりも扁平骨盤の間を無事に通り抜け、結果的に回旋もちゃんとしてくれて、頑張って無事に出てきてくれた赤ちゃんに対する感謝の気持ちが一番強かった。最初に胸の上に赤ちゃんを乗せられたとき、「よく頑張ったね」と声をかけた。まだ血がついていて羊水で濡れていた赤ちゃんだったが、ぷっくりしていて意外と人間らしい顔だなーというのが第一印象だった。

そして「3720gです」という体重を聞いてビックリ。何でそんなに大きいの!?一気に脱力した。無痛分娩で本当に良かったと心の底から思った瞬間だった。こんなでっかいベビー、自然分娩で頑張ったら死んじゃう・・・やはり軟弱な私であった。サルとか宇宙人とかではなく、人間らしい顔つきだったのは、まるまる太って産まれたからだったのだ。

会陰切開したところを縫合するのも助手だった。しかしこれがまた信用ならない。助手が私の股の間で縫合するところを、女医が腕組みして厳しい表情で見張っているのだ。状況も怖いが女医も怖い!「ガーゼ入れますね〜」と助手は慣れたような物の言いようだが、女医の冷たく鋭い視線が助手の経験不足を物語っている。案の定、そこからは「縫合勉強会」だった。「違うでしょ!どうして表面だけ縫おうとするの、ここは一番大事なところなんだよ!ちゃんと奥から縫わないと!」「ちゃんと最後にしっかりチェックしますからね」と、女医に叱責される助手。オイオイ、しっかりしてくれよ・・・。「ココとココとココの3点でV字に縫う、そうするときれいでしょ」縫い方も知らないのかコイツは・・・。私は無事出産できた達成感と満足感でいっぱいだったし、なにしろ麻酔が効いていて何をされても痛くも痒くもないので、ここは助手の勉強に役立ててくれたまえってくらい寛大な気持ちになっていた。

そしてようやく、助手の「終わりました」という一言。覆いかぶさるように「何か忘れてない?」という女医の声。「最初にガーゼ入れたでしょ!」「あ・・・」助手は私の体の中にガーゼを入れっぱなしにしたまま終わろうとしていたのだ。貴様私を殺す気か!寛大な気持ちの私も、こうやって医療ミスは起こるのねと、もはや呆れるしかなかった。

途中、突然寒くなってきた。体温を測ってみると39.2度。こんな高熱、小学生以来かもしれない。この高熱は、子宮に細菌感染した可能性があるらしく、ただちに抗生物質の点滴をされた。

最後に背中の麻酔の針を取ってもらって終了。私のお産を何よりも支えてくれたこの麻酔の機械が外されて、妙に寂しかった。

てっきりロビーに家族がいるものだと思っていたのだが、なんと誰もいなかった!ガクッ。18時前くらいに分娩室から電話をしてもらうと、なぜか夫に通じない。母には通じたので、分娩台の上から母と会話。母は電話の向こうで「無事生まれてよかったねぇ〜〜」と、号泣している。そんな泣かなくても・・・。母から夫を捕まえてもらうようにお願いして、病室で到着を待つことにした。

<家族と面会・・・>
18時過ぎくらいに病室に移動。18時半ごろ母と夫が到着。私は、15時〜19時の面会時間内くらい病院で待機してくれれば良かったのに、と「薄情な家族だ〜」といじけて見せたが、実は母も夫も何度も病院にどんな様子か電話をして確認していたらしい。ところが、病院の答えは「まだまだ産まれません」の一点張りだったので、家で待機していたのだと言う。確かに、16時の時点で「早くて18時〜19時、遅くても日替わり前には産まれます」って言われていたから、病院もまさか17時に産まれるとは思っていなかったのだろう。でもせめて分娩室に移るときに「分娩室に移ったからもうすぐです」っていう電話くらい、家族にしてくれたっていいのに。母と夫は病院の対応にすっかりお怒り。やっぱり生まれた瞬間にそばにいたかったようだ。

19時過ぎに歩行を試すが麻酔がまだ効いていて歩けなかったので、車椅子を使って無菌エリアまで行き、夫と私で赤ちゃんを抱っこして写真撮影。新生児の抱っこは母親と父親のみ可能なので、かわいそうにうちの母は抱っこできず。夫はもう赤ちゃんにメロメロ。早速あやしたり話しかけたりしていて、親バカ振りが垣間見える。よっぽど嬉しいんだな〜。

朝から何も食べられなかったが、やっと夕食にありついてがつがつ食べた。窓から見える夜景を眺めながら、ようやく終わったなぁ〜と10ヶ月ぶりにリラックスできたような気がした。

<無痛分娩を終えて>
初産が希望通り無痛分娩になったので、将来二人目を産むとしたら、絶対、絶っ対に無痛分娩しか考えられない。薬で急激に進んだせいかもしれないが、子宮口4cmまで味わった陣痛ですら二度と味わいたくないような痛みだったのだから、全開大のときの陣痛なんて想像もしたくない。けいゆう病院の助産婦さんたちはみんな親切でいい人でとても信頼できた。助手みたいな困った人もいたけれど、まぁ無痛分娩できたことを考えれば、許せる範囲内のアクシデントかもしれない(?)。K先生や、助産婦さんや、硬膜外麻酔のおかげで、あの真っ青に晴れた空を眺めながらリラックスしてお産ができた。私にとっては100点満点である。(ただし、家族にとっては「不親切な病院」だったようだ・・・)

次もけいゆう病院を選ぶかどうかは・・・24時間365日無痛分娩をやってくれるようになっていれば、間違いなく選ぶ、かな?


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