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2002年04月10日(水)
つづいてる


この映画の「2」がでちゃってがっかりだよ。
あそこで終わってちょうどよかったのに。
あれで終わったからよかったのに。

はい。ここでおしまい、っていうふうに
出来たらいいのに。
このお話はこれでおしまい、って。
視界が暗くなって。
音楽なんか流れちゃって。

時々そんなふうに思うのんさ。

でも、つづいちゃうんだよな。
つづいてなかったら、それはとても困るけど。
だから毎日
かっこわりーこと、わりーこと。



2002年04月12日(金)
「縁側」


「扇風機の ぬるい風
 うすい カルピスの味
 理科の問題を 解いてる 田舎の夏休み

 妹が隣りの 部屋で
 やたらと 騒いでる
 誰かがホームランか 二塁打を打ったのかな」
 

          こなかりゆ「縁側」 アルバム「riyu's album」収録 から
 


父の実家が山形にある。
町の中だが、少し歩けばすぐ
草むらで木造の駅で山道で川がジャージャーだ。

田舎の夏休み、といえば想像されるものを
どれぐらいの子ども達が体験するんだろう。

虫取り網や西瓜
底の見えないトイレ
だたっぴろい畳の部屋の、むかしばなしの匂い。
あっちこっちが少し怖くて、楽しいけれど
孤独だった夏休み

冬には
一階ぶんの高さまで雪が積もって
子ども達は2回の窓から雪の地面にとびこんだ。
近所の子たちは「はやく、はやく」と呼びつつも
「都会の子にはできないだろう」と
思ってただろうけど

僕は目をつぶって飛んだんだ。





こなかりゆ・・・テレビなど表立ったメディアに現れることは少ないが
現代のきら星のごとし異才をはなつシンガー。
詞にしても曲にしても、ふにゃふにゃしてかわいいものばかりだが
なにか飛びこえたような作品を書くひと。
インディーズ時代のデビューアルバム「HICCUPS」は
知る人ぞ知るメデスキ・マーチン&ウッドがバックを固めた。
個人的選択代表曲に
「BULLSHIT」「赤ちゃん火星に行く」「犬の気持ち」
「私の傑作」「エバンストンの夏」などなど。





2002年04月14日(日)
人ではない


4月でした。
わたしは遅刻すれすれの時間に焦りながら
定期券を買う列の後ろから3番目にいました。

そこで突然
前にいた女のひとが倒れました。

最初は、頭がおかしいんだ、と思った。
なんでわたしを振り返って見るんだ、と思った。
目は虫でも追ってるみたいで
右から左へぐるっと視線を送って、そのまま
後ろに倒れてしまった。

足をおおきくひらいて
ごぼごぼ言って泡をふいて。

わたしはからだが動かなかった。
ただ、そのひとのからだの震えが止まってきたから
死んでしまった、としか思わなかった。
動かない。

離れたところでおばさんが気づいてくれて
駅員さんが走って来て、口のなかに
タオルをつめこんでくれたけど。

動かなくなったそのひとの横で
わたしはひとり分はやく定期券を買って
電車に間に合い

そのときに、なんでもいいから
人ではない何かになりたい、なんて
考えていたんです。







2002年04月16日(火)
ぼんやり


今日は雨かな、なんて心配したけど
いい天気だったね。

何か悔しくってもいいぐらい
いい天気。

「昔のことなんかよ、忘れちまえ
 いまのおまえはいいやつだ」

前にみたドラマのセリフを思い出してました。



2002年04月17日(水)
すがりつく

昔からの友人に電話したら
下北沢のバーでひとりで飲んでるらしかった。

ビールをコップ半分飲むと顔が真っ赤になるやつだったから
少々、驚いた。

いっしょに飲むかー、と言うと
夜中にタクシー乗って来やがった。ち、金持ちめ。

ちいさなグラス2杯目で
「妥協だよ」と言う。

(恋)をしたり、なんて「妥協でできてる」と言う。顔真っ赤にして。

あー、やっぱりこいつ、いいな。と思った。
おまえみたいに前向きにはなれんかったよ。

「ちがうよーだ。」


その日はパタっとおんなじ布団で寝てもーた。
なんとも気恥ずかしい夜でしたな。

こんなところに書いたなんて知ったら、おこるかい?




2002年04月18日(木)
「自衛隊に入ろう」

有事法制関連3法案とかゆうのが
とりだた・・・いや
とりさだ・・もとい、とりざば・・・

とにかく騒がれとるわけでして。

「みなさ〜んが〜たのな〜かに〜
 自衛隊にはいりたいひとは いーませーんかあ
 ひとはーたあげたいひとは いーませーんかあ
 自衛隊じゃ人材もっとめってます
 
 スポーツやりたい ひっといったら
 いーつでーも 自衛隊におこしください
 槍でーも鉄砲でーも なんでもありますよ
 とにか〜く からだが資本っです

 日本の平和を 守るためにゃー
 鉄砲やロケットが いりますよ
 アメリカさんにも 手伝ってもらい〜 
 悪ーいソ連や 中国をやっつけましょう

 自衛隊じゃ人材 求めてます
 年令学歴は 問いません
 祖国ーのた〜めなら どこまでも〜
 素直〜な人を 求めます

 じえっ じえ
 自衛隊に はいろー はいろー はいろー
 自衛隊にはいれーば この世は 天国
 おっとこの なかの おっとこ は みーんな
 自衛隊にはいって 花っと散る」
   
               高田渡「自衛隊に入ろう」 から 歌口調で

そんなニュースを見たので
こんな歌を思い出し、アタマからはなれず
コンビニでドリンク補充しながら歌ってましたとさ。

そだ。この歌。放送禁止歌なんだった。
ま、いっさ。だからどーした。




高田渡・・・フォークシンガー。
「三億円強奪事件の唄」がレコードデビュー。
劇団カクスコいわく「カビも逃げ出す高田渡」たー彼のこと。
69年のデビューだが、いまなおローカルシーンでのバリバリな現役である。
個人選択的代表曲に「コーヒーブルース」「おなじみの短い手紙」などなど。
その楽曲、滲みこむような声は圧倒的な存在感を見せつけ
「フォーク」「アコースティック」と呼ばれる音楽が再び注目されてしばらくの
現代の日本のミュージックシーンのなかで
改めて問い直したい歌い手のひとりである。





2002年04月21日(日)
三級


昔、お世話になったひとに会った。
「ほんにまあ、ちいさくなっちゃってー」
と、冗談で言うと
そのひとは「あなたが大きくなったんでしょう!」と
僕を見上げた。

子どもの頃に見たものと
いま見るものでは大きさが違う。
なにが違うって大きさがいちばん違う。

あの耳の後ろにまっすぐ腕をそろえて
飛び込み台に立っていた頃より
バイトに行く途中に見える小学校のプールは
ずっと狭くなってしまった。

三級は25メートル。
プールの端から端まで。

ずっと泳ぎきれない距離だった。