2016年10月31日(月) |
花森安治『花森安治灯をともす言葉』★★★★☆ |
花森安治『花森安治灯をともす言葉』
がつん!と喝を入れてもらった一冊。 折に触れて読み返したいフレーズがそこかしこに。
「ぼくらの暮しを おびやかすもの ぼくらの暮しに役立たないものを それを作ってきた ぼくらの手で いま それを 捨てよう」
「まいにち じぶんの使う道具を まるで 他人の目で みている みがいてもやらない ふきこんでもやらない つくろってもやらない こわれたら すぐ捨ててしまう 古くなったら さっさと捨ててしまう 見あきたら 新しいのに買いかえる 掃除機を買ってから なんだか 掃除が おろそかになった 冷蔵庫を買ってから どうやら 食べものを よく捨てるようになった 物を大切にする ということは やさしいこころがないと できないことだった」(p70-71)
「亡びゆくものは、みな美しい。 その美しさを愛惜するあまり、 それを、暮しのなかに、 つなぎとめておきたいと思うのは人情であろう。 しかし、そうした人情におぼれていては、 『暮しの美しさ』の方が、亡びてしまう。」(p73)
「『よそゆき』という言葉は、 実に人間生活らしくない、 真実の乏しい、 いやな言葉である。」(p138)
「着こなしは、着るひとのからだと、 こころと、 暮しをはなれて、 美しかろうはずはない。」(p139)
「まるでなにかの発作につかれたように、 むやみヤタラに『おしゃれ』をしたがるのは、 その気持を、いじらしいとは思っても、 やがてそれは『あわれ』と見え、 度がすぎると『あさはか』 『あさましい』とさえ 思わせられるのである。」(p142)
「なにか、アクセサリを一つくっつけるごとに、 それだけずつ、美しくなるようにでも 考え違いしているのではないのだろうか。 宝くじを一枚買うごとに、 百万ずつ当たったつもりでいるほどに、 ごく無邪気で、アホらしいことである。」(p143)
「どのように書くか、というよりも、 なにを書くかだ。 書かなくてはならないことが、なになのか、 書くほうにそれがわかっていなかったら、 読むひとにはつたわらない。 小手先でことばをもてあそんでも、読むひとのこころには、 なにもとどかない。」(p154)
うそのない暮らしを。 恥ずかしくない暮らしを。 まっすぐな暮らしを。
ちゃんと生きなくちゃなあ。
そんな思いにさせてくれた一冊でした。
花森安治『花森安治灯をともす言葉』
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