活字中毒のワタシの日記

2016年09月30日(金) 花森安治『灯をともす言葉』★★★★☆


花森安治『灯をともす言葉]

「暮しの手帖」初代名物編集長の、人生を照らす言葉集。
美、世の中、戦争、おしゃれ、政治などについて、短い言葉でぴりっと、ばしっと語ってくれる言葉に、打たれました。

モノやコトといかにうまく暮らしていくかについて語られた中で心に残った言葉たち。

「ぼくらの暮しを
おびやかすもの
ぼくらの暮しに役立たないものを
それを作ってきた
ぼくらの手で
いま それを
捨てよう」

豊かさを求め、豊かになると信じて選択してきた結果、かえって豊かさから遠ざかっている現実。
それを受け止め、真の豊かさを得られる選択をしていくこと。

選ぶということは、何かを捨てること。
捨てるということは、何かを得ること。

不要なものやことを捨て、必要なものやことを手にする。
そのためには、何が不要で何が必要なのか、見極める目も必要ですね。

そして、必要なものとは、仲良く暮らす。
大切にする。大切に使う。大切に扱う。

「まいにち じぶんの使う道具を
まるで 他人の目で みている
みがいてもやらない
ふきこんでもやらない
つくろってもやらない
こわれたら すぐ捨ててしまう
古くなったら さっさと捨ててしまう
見あきたら 新しいのに買いかえる
掃除機を買ってから なんだか
掃除が おろそかになった
冷蔵庫を買ってから どうやら
食べものを よく捨てるようになった
物を大切にする ということは
やさしいこころがないと できないことだった」(p70-71)

掃除機や冷蔵庫のくだりには、どきっとしました。
確かにそう。先日テレビで見た一週間冷蔵庫を使わないチャレンジをした方が、その後無駄に買いすぎることが減った、と。
「冷蔵庫に入れておけば保つし」「掃除機がきれいにしてくれるはずだし」に甘えない方がいい、とこれまた反省。

価値観について。

「亡びゆくものは、みな美しい。
その美しさを愛惜するあまり、
それを、暮しのなかに、
つなぎとめておきたいと思うのは人情であろう。
しかし、そうした人情におぼれていては、
『暮しの美しさ』の方が、亡びてしまう。」(p73)

「暮しの美しさ」を求めるのなら、美しくなるものを選び、美しくないものを選ばないことが必要。
これもまた、改善できそう。

「『よそゆき』という言葉は、
実に人間生活らしくない、
真実の乏しい、
いやな言葉である。」(p138)

「着こなしは、着るひとのからだと、
こころと、
暮しをはなれて、
美しかろうはずはない。」(p139)

洋服に着られる、という言葉があるけれど、洋服は、自分が、着こなすもの。
からだとこころと暮らしにそって。これまた納得。

「まるでなにかの発作につかれたように、
むやみヤタラに『おしゃれ』をしたがるのは、
その気持を、いじらしいとは思っても、
やがてそれは『あわれ』と見え、
度がすぎると『あさはか』
『あさましい』とさえ
思わせられるのである。」(p142)

「なにか、アクセサリを一つくっつけるごとに、
それだけずつ、美しくなるようにでも
考え違いしているのではないのだろうか。
宝くじを一枚買うごとに、
百万ずつ当たったつもりでいるほどに、
ごく無邪気で、アホらしいことである。」(p143)

身も蓋もないというか、ほんとうに潔い文章に、清々しい気持ちになりました。
その裏にある、暖かいまなざし。日本の女性に、美しく豊かな生活をしてほしい、という願い。それを感じて、活かしていきたい、と思いました。

書くこと、表現することについて。

「どのように書くか、というよりも、
なにを書くかだ。
書かなくてはならないことが、なになのか、
書くほうにそれがわかっていなかったら、
読むひとにはつたわらない。
小手先でことばをもてあそんでも、読むひとのこころには、
なにもとどかない。」(p154)

ブログを書く上で、これ忘れないように!メモしました。
届けたいものが届くよう、自分にできることをする。

自分の中にともされた灯。
つないでいきたいと思います。

花森安治『灯をともす言葉]



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2016年09月26日(月) 辰巳渚『片づけなくてもいい技術』★★★☆☆


辰巳渚『「片づけなくてもいい!」技術]

「片づけ」(使ったら戻す)は生きている限り続くことだという前提で、「片づけなくても快適に暮らせる」ことを指南した本ではなく、「片づけが負担にならないで続けられるような仕組みを作ろう」その方法を指南した本。

なんだ、ライフオーガナイズじゃん。
と思いつつ読み進めました。

「時間がたっても同じままの家は、誰も住む人がいない、からっぽの家だけだ。作り物の、演出された家だけなのだ。」(p14)

生きているから、動物だから、うごく。

「一時的に完璧に整えた家の完全性よりも、つねに循環しながら、つねに入れ替わりながら、同じ『私の暮らし』として保たれているバランスの方が、私にはすばらしく豊かに見える。
 暮らしが『すっきりと片づいているなあ』『うまく整っていて気持ちがいいなあ』と感じられるのは、この循環がうまくいっているときなのではないだろうか。」(p20-21)

呼吸と同じ。
いかに、循環をよいものにするかが大事。

「自分の手でうまくまわしている感じ、使うモノが使われ、いらないモノが出ていき、あると幸せなモノが買われながら、どこにも淀みができずにさらさらとまわっている感じが、『すっきりして気持ちがいい』『これは他の誰でもない、私の暮らし』という充実感につながるのだ。」(p21)

自分で自分の環境をコントロールできている、という快感。
できてない時期が長かったので、できるようになっていく過程も含め、心が満たされるようになりました。

「『片づけなければ』から逃れ、『自然に片づけている』状態を作ろう、というのが『片付けなくてもいい技術』である。」(p40)

ライフオーガナイズってそういうこと。
その仕組みを作ろう、ってこと。
憂鬱なことではなく、自然に、無意識に、(それほど)苦もなくできるように、仕組み化する。

「片づけや掃除がもともと苦手、という本質は変えようがないが、それでも、『さあ、片づけなくちゃ』と思わなくても、だいたいうまくモノはまわっているといえる。人が来るとなったら、片づけに10分、掃除に30分でなんとかなる。楽である。」(p41)

わたしも以前はそうでした。
いまも上手でも得意でもないけれど、嫌いではないし、掃除にいたってはむしろ好きに。
意味を見いだすことができるようになったからだと思います。

「分けるときには、誰かの分け方ではしっくりこない。自分が世界に向けるまなざしが、そのまま世界の分け方となる。」(p93)

片づけの極意は、「分けること」。
ということは、自分や家族にとって分けやすいことが大事。

「自分が世界に向けるまなざし」っていい言葉ですね。
わたし自身、まなざしが少しずつ変化していっているのを感じます。

これからも、できるだけ、やさしさやあたたかさを含んだまなざしを身につけていきたい。

「人が、世界のなかに自分なりの秩序を見出して分類し、それぞれに名前をつけて、それぞれに属するモノを分け終わるとき、きっと世界を手にするような満足が得られるのではないだろうか。」(p93)

秩序を作る。
仕組みを作るというのは、自分なりの秩序ののっとって統治することですね。
自分ワンダーランドを作ると思えば、なんだか楽しくできそう。

以前二世帯住宅で嫁のサポート依頼を「片づけなんか人に頼むもんか?自分でできないのか」とおっしゃってたおじいさま。
「ただの片づけ」じゃなくて「子世帯ワンダーランド」をクリエイトしてたんです(^_^)。と言えたらよかったな、と今更思いました。

「けれど、自分自身と向き合うことだけは、怠けてはいけないのだ。いや、怠けたってかまわないけれど、自分を見つめるつもりがない人には幸せはこない。『これでいいんだ』『私はうまくやっているんだ』と納得し、安心できる日々の暮らしは、訪れない。」(p172)

わたしは、こうだ。
わたしはこれを選び、これを選ばない。
わたしはこれでいい。
いまはこれでいい。

結局は、そう思えるかどうか。
そう思いたいかどうか。
そのために、行動を起こすかどうか。

「『できない自分』を受け入れ、そういうことはなるべくしないようにし、どうにかこうにかつづけていける方法を暮らしに組み込んでいく。他の人はどうであっても、私にとっては楽しい、気持ちいい、これでいいと思うことを増やし、つらいな、だめだなと思うことはなるべく排除していく。
そういう積み重ねから、はじめて『すっきりと片づいた暮らし』が見えてくる。
そうだ。片づけは人生と同じ。」(p173)

自分の弱さを認めることは、自分を強くする。
自分を幸せにすることができるのは、結局自分だけ。
片づけって、深いなー!

「『片づいて嬉しい』ではなく『楽になった』。
これが、家事セラピーの目指すところなのだ。」(p184-185)

ライフオーガナイズが目指すのも、「正しい方法」ではなく「最適な方法」。
最適な方法は、そこに住まう人が「もっと楽に、もっと楽しく」暮らせる方法。
思いがけず共通点がたくさん見つかり、「よりよく暮らす」「よりよく生きる」ことはそれほど奇異なものではなく、暮らしの芯なんだろうなと感じました。

辰巳渚『「片づけなくてもいい!」技術]



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